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悪名   (1961・大映京都)
■ジャンル: ヤクザ
■収録時間: 94分

■スタッフ
監督 : 田中徳三
原作 : 今東光
脚本 : 依田義賢
撮影 : 宮川一夫
音楽 : 伊福部昭

■キャスト
勝新太郎(八尾の朝吉)
田宮二郎(モートルの貞)
中村玉緒(お絹)
水谷良重(琴糸)
浪花千栄子(麻生イト)
中田康子(お千代)
山茶花究(吉岡)
悪名悪名
「もてる男の生き様」ココから学べ!八尾の朝吉のような男に惚れない女はいない。女は単純で騙しやすそうな男に惚れる。騙しやすい男だからこそその危なっかしさに対して母性愛も生まれてくる。いい男とは、「賢い女に賢く助けられる男」のことを言う。「馬鹿な女からいい気になって金をむしり取ってる男」これは「バカな女を騙せる男」でしかない。

■あらすじ


河内の八尾で悪名を晒す朝吉(勝新太郎)は、ある日色っぽい人妻・お千代の口車に乗せられて有馬に駆け落ちした。やがて浮気性のお千代に愛想をつかし、一人八尾に戻る途中に、地元の仲間と再会し、意気揚々と松島に女郎買いに行く。そして、そこで出会った琴糸(水谷八重)の身の不幸を聞き、彼女を助ける決意をする。ふとしたことから舎弟になったモートルの貞(田宮二郎)と共に。


■雲のように自由で生きたい


悪名 悪名
八尾の朝吉。そして、勝新太郎。オレが歴史上最高にカッコイイと思う男。

人生一回きり、賢く手堅く生きるのもいいが、オレはそういう生き方よりも自由奔放に生きたい。
女にもてたい男は、絶対的にわがままで自分の思うままに生きようとする子供っぽさがなければならない。そういう男はどこまでも危なっかしく、だからこそ周りに元気のいいヤツラが集まってくる。

人生は成功を勝ち取ると同時に、失敗を勝ち取る喜び!これぞ人生謳歌の醍醐味である。隅の隅まで楽しんでやろう!そんな器量と男気がなけりゃ女にとっても男はつまらん生き物だろう。「もしあなたの女が、あなたに安心感を求めてるならば、それはあなたを男としてではなく、父親の代用品として考えている兆しかもしれない」

とにかく物語のしょっぱなの軍鶏博打のシーンから妥協のない完璧な河内弁が連発される。もう関西人とすればこの音の洪水だけで、大満足してしまう。何よりも驚かされるのは江戸っ子育ちの勝新の河内弁の流暢さ。やはり子供の頃から身に染み付いた長唄によって鍛えられた耳の良さからだろう。


■夢を与えることこそ、役者の使命感


朝吉を通して勝新が示す映画スターの基本姿勢。昔のスターがスターだった理由は、そこに社会性よりも個性、倹約よりも豪快が存在したからだろう。今のほとんどの芸能人に全く魅力がないのは、全てがこじんまりと纏まりすぎているからだろう。ほとんどがメディアの飼い犬であり、羊であり、長いものには巻かれ、弱いものには居丈高なヤツラを見ていて、夢を見れるのも、ガキのうちだけの話である。

この作品には、2人の昭和の時代を暴風雨のように駆け抜けていったスターが登場する。一人は勝新太郎。そして、もう一人は田宮二郎である。彼らは自分の進む道を進み、素晴らしい人類に対する遺産を残していった。観客に夢を与え、大風呂敷を広げることに命を賭ける。

役者がバカものになれなくて、理性的で、そんな役者に誰が魅力を感じる?女が夜が妖艶でなくて、昼の淑女をずっと引きずっていたらどこに魅力を感じる?


■女の魅力は、まず言葉から・・・そして、猫なで声を追加


悪名 中田康子
「何してはんの〜ん。う〜〜ん。わかってるくせにィ」

「あんたな。これからちょいちょい会ってくれはる・・・」

「なんで(お酒)飲めへんねやろ?・・・おんなには強いけど・・・な・か・さ・れ・る・・・」


朝吉が翻弄される人妻・お千代の男好きする物腰。男と愛し合うことを心から悦び、男も蜘蛛の糸のように絡めとり虜にしてしまう毒婦のような女。それでいてさっぱりしているところがすごく良い。オレもこんないい女には今のところ一人しか出会った事がない。
嘘つきで、気ままなんだが、愛し合うときは思いっきり愛し合えて、しかも、金回りのいい女。エッチもうまいが、話のネタも豊富。男を怒らせ、愛させ、許せる女。なかなかいないよな・・・器量のある女ってのは。

「あほぬかせ!おんどれのような淫売だれが向いにいくねん」朝吉
「かんに〜ん、明日からもう真面目にしますさかい・・・おねがいやぁ」お千代
「その明日の顔が見とうないんじゃ」朝吉


お千代の浮気性に愛想をつかして、八尾に帰ることにする朝吉。しかし、困った時には、こんな後味の悪い別れ方をしたお千代が、情のあるところを発揮してくれるのである。
オレも同意する。浮気もんの女が得てして情に厚くて、あんがい浮気もんじゃない女の方が、情のない女が多いという事に。

「どんなお金?」お千代
「わけのある男助けたろうとおもうてな」朝吉
「女と言いなはれ。そうだっしゃろ?んなはっきり言うたらわてかて考えんこともないのに」お千代
「お前には負けたワイ」朝吉
「あてにまかしときって、かわいいあんたのためや」お千代


このお千代にお頼みする朝吉のセリフ回しと間が最高にいい。方言を使って芝居する場合、話し方以上に会話の間の取り方が、いかに重要かを良く理解している。しかし、そんなことよりも何よりもこのお千代を演じる中田康子(1933− )の、陽気で妖艶で肉欲的で、それでいてからっとしている所がすごく魅力的だ。


■男として、女の不幸を一度位は肩代わりしてやれ!


悪名 水谷良重
「朝やん、どうやねん?早いことしっぽりやっとるやないかァ」

「しっぽり」って言葉の響きすごく良くない?「セコハン娘」って響き並みに。松島の女郎・琴糸。人生裏街道まっしぐらだったからこそネガティブな女性。こういう女性今も多いよな?それもそこらへんに・・・それだけ最近は不況って事かも。オレも若い頃朝吉のようにその手の女を助けたことがあるが、現在は、女に堪え性がないから、なかなか難しい。

その女性は、覚醒剤常習、借金・・・という女性だったが、ネガティブな人が、ポジティブになるのはなかなか難しい。だから男は振り回される。朝吉を見ていてすごくオレは感情移入できた。

「そんな女に情を示す男はアホやな」という人々の意見はもっともだが、若い頃に男として、そういう女一人を救おうとしたこともない味気のない人生も素昆布のようでつまらんとオレは思う。

「おまえが止めなんだら、わいがいてもうてるとこや。わいはともかく力で脅すやつは気にくわんたちやねん!」


こんなセリフを吐く男に惚れない女はいないだろう。このセリフとそれなりの器量があれば、東大教授の奥さんでもグッとくるはず。それはともかくとして、琴糸を演じる水谷良重(1939− )もそれらしい役柄を見事に演じあげている。しかし、この人はしゃきしゃきとした役柄のほうが魅力的だ。


■男が男に惚れる瞬間


悪名 悪名
「裏いてるさかいどつきにおいでや」

「心配しいな。あんなん屁の河童やで」

「ええ人やなぁ2人とも」「2人ともやなんて無理してわいのこと入れんでええで・・・んなん」


田宮二郎のテレビ版『白い巨塔』(1978、中村玉緒とも共演)の、あの上には媚び、下には居丈高な男のイメージとは全く違う河内弁バリバリの掛け値なしのハンサム兄ちゃんを演じる田宮の魅力的なこと。この魅力が勝新の魅力と見事な相乗効果を生み出し、2人の掛け合いが以降シリーズの醍醐味となっていったのである。

特にあの貞が、子分の盃を求めるシーンなぞは名シーンである。「やめてくれそんな猿芝居みたいなマネ」と朝吉が言い放ち、貞は色めきたち朝吉を睨みつけるが、そんな貞の腕を取り引き寄せ
「仲良しのきょうだいでええやないか・・・な」と言う。この時の2人の表情・・・間違いなく男が男に惚れる瞬間だ。


■人間に大切なもの それは愛嬌・・・


「おい!このドスここおいてけ、ワイが預かっといたら」


琴糸を足抜きし、それを捜索する松島一家の組員・須賀不二男が、ドス片手にいきりたおしてる所に、懐に拳銃を潜ませてる振りをしてはったりをかます朝吉。実はそのドスを預かってから、豹変する朝吉なのである。

「ダァ〜テ いにさらせ!そやないと、ワレいてまうど!」

そのドスで逆に脅し返す浅吉。このこすさもまた朝吉の魅力だ。何気に彼は喧嘩よりもハッタリで解決しようという態度なのだ。その姿勢がなんか人間愛に満ちていて多くの人がこの作品からただのヤクザ映画以上の魅力を感じる根本なのではないだろうか?

朝吉にも貞にも、女にも「愛嬌」がある。『悪名』は一言で言うと「愛嬌に満ちた映画」だった。


■当時の大映は女優の宝庫である


中村玉緒 中村玉緒
「一冊いれてほしいわぁ。せやないといや!」

「ほなついでに生駒さんに誓うたるわい」


まさに婚約中の2人ならではの「あなたを一生の妻にします」の誓詞を朝吉が書く情緒溢れるシーン。中村玉緒(1939− )という人は勝新の死後、素の部分の人間的な器の大きさ(バカはそこを笑うのだが)ばかりがピックアップされているが、あの辛口の市川雷蔵をして
「彼女の天性の勘のよさは、役者の血を受け継いだ見本のようなもので、基本的なものは何一つ修練していないはずなのに、それでいてどんな計算された演技よりもすばらしいものをやってのける。不思議な人である・・・彼女のように、どんな作品でも、ごく自然にやりながら、必ず印象に残る芝居をするタイプの女優さんとやる時は、よほど腹をくくってやらないと食われてしまう。一番こわいタイプの女優である」と言わせる位の芸達者な女優なのである。

本作における中村玉緒のその魅力は、まさに一言「かわいらしい」である。それも純度100%のかわいらしさである。もうその目つき、物腰、言葉の粘り、意思の強さの全てがかわいらしい。今の時代の価値観で考えてみてもかわいい。

ちなみに貞に惚れるお照を演じる藤原礼子(1932−2002)は、1963年に勝新の兄・若山富三郎と結婚する。この人元宝塚歌劇団出身だけあり、声の張りの良い女優さんである。

「色気のおつきあいやったら今からお断り!」

因島で朝吉に味方してくれる渡来旅館の女将を演じる阿井美千子(1930− )。この人オレのおばあちゃん位の年だが、すごくオレ好みの美しい女性だ。元々は宝塚歌劇団の男役だった人である。おっとりとした表情でタンカをばしっと決める姿の格好いい事格好いい事。そんなに多くの登場シーンはないが、この人絶対只者ではないはず。かなりの芸達者な女優さんなはず。


■朝吉の示す男意気!男は殴られて、耐えてなんぼじゃ!


悪名 今東光
「わいが死んでも、わいのド根性は死なへんわい!」

「もう琴糸に指一本触れさせんわい!名が売れるか?何ぬかしてんねん。そんなもんどうせ何にもならん悪名やないけ。わいがそんなもんほしいてやった思てけつかんねん。あほんだら!わいは勝ったんや!わいは勝ったんやで!」


もう邦画史上屈指の「男のド根性」が描かれているシーンである。大概のヤクザ映画は殴りこみに行って非現実的な殺傷沙汰を起こすだけなのだが、この一方的に殴られ続けることによって示す男意気の爽快さ!こういう役柄こそ勝新の魅力である。

そんな朝吉をステッキで打ち据える女親分(浪花千栄子)でさえも、そのバカ正直さに、渇を入れてやろうという姿勢から、次第に女としてこの朝吉の男意気に惚れ惚れとしてしまうのである。こんなイイ男にもっと早く会いたかった・・・そして抱かれたかったという思いと共に。

悪名 田宮二郎
本作は当時「週間朝日」に連載中の今東光の同名小説を、映画化した。そして、大映で伸び悩んでいた勝新太郎の初ヒット作となり、シリーズ化された。田宮二郎にとっても出世作となり、1961年から1974年まで全16本が製作された。

− 2007年9月18日 −


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