HOME
■サイト内検索

■洋画
 □カタカナ順
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 □クラシック
 □ドラマ
 □コメディ
 □サスペンス
 □アクション
 □ポリス
 □スパイ
 □犯罪
 □カー
 □ミュージカル
 □史劇
 □文芸
 □戦争
 □西部劇
 □アドベンチャー
 □パニック
 □ギャング、マフィア
 □SF
 □ホラー
 □スポーツ
 □香港
 □ドキュメント
 □アニメ
 □エロス
 □B級
 □アカデミー賞
 □カンヌ映画祭
 □ヴェネチア映画祭



■邦画
 □ひらがな順
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 □名作
 □ドラマ
 □喜劇
 □サスペンス
 □アクション
 □刑事
 □時代劇
 □戦争
 □文学
 □パニック
 □東映ヤクザ
 □ギャング、ヤクザ
 □特撮
 □怪奇
 □ドキュメント
 □アニメ
 □エロス
 □B級
 □海外映画祭受賞
悪名波止場   (1963・大映京都)
■ジャンル: ヤクザ
■収録時間: 92分

■スタッフ
監督 : 森一生
原作 : 今東光
脚本 : 依田義賢
撮影 : 本多省三
音楽 : 斎藤一郎

■キャスト
勝新太郎(八尾の朝吉)
田宮二郎(清次)
滝瑛子(悦子)
水原弘(仙太郎)
藤田まこと(三郎)
藤原礼子(お照)
紺野ユカ(おとし)
悪名波止場悪名波止場
瑳峨三智子降臨!の余韻も冷めやらぬまま『悪名』はここに完全復活した。滝瑛子のホットパンツも時代を突き抜けているが、それ以上に素晴らしいのが、朝吉―清次コンビの完全復活。やはり清次が出ずっぱりだと『悪名』は盛り上がる!もしココに丸凡太と茶川一郎が出ていたら・・・『悪名』ワールドの総決算的な作品になっていただろう。

■あらすじ


瀬戸内海沿いの港町に降りたった朝吉(勝新太郎)と清次(田宮二郎)とお照(藤原礼子)の三人。フェリーの中で知り合った三郎(藤田まこと)の後を追う朝吉は、その妹のおとしと同居人の悦子(滝瑛子)と知り合う。麻薬中毒のおとしの為に金を盗んでしまった三郎の肩代わりをする為に朝吉と清次は一肌脱ぐのだった。『悪名』シリーズ第七弾。


■『悪名』は旅情モードで生まれ変わった


悪名波止場 悪名波止場
広島の瀬戸内海沿岸を舞台に中国慕情たっぷりに物語が展開するこの作品。フェリーでやって来て、広島バスで去って行くその姿。クラブの青山ミチ、朝吉の河内音頭。白の上下のスーツがゾッとするほどに似合う清次と夏仕様のすけすけの着流し姿が粋な朝吉。そして、アップに上げた髪形がその首の様子のよさと着物を映えさせているお照。

もう新しい『悪名』の世界観はここに出来上がりました。
つまり旅先での朝吉と清次とお照(この人がかなり重要)のスカッとする大活躍。日本全土を河内弁で闊歩する三悪名の誕生です。


■グッと来るいい女・滝瑛子


滝瑛子 滝瑛子
演技力に関しては瑳峨三智子に遥かに及ばないが、弾ける様な日本人離れした色気を発散する滝瑛子。10代のムチムチした禁断の色気。それにしてもベッドで横になりながら雑誌を読む彼女の姿。もし公開当時この作品を観た少年がいたらかなりの衝撃を受けるほどのセクシーさだ。とにかくイタリア女のような小麦色ボディーが素晴らしい。まさに果実そのものの熟れ頃っぷりが匂い立ってくるようなイイ女。

滝瑛子 悪名波止場
シャブ中の女の子おとしを演じる紺野ユカという女優が、完全に野暮ったく見えるほどに野性味と洗練さがいい具合に掛け合わされた女悦子を演じるのは滝瑛子(1944− )。彼女は、ユル・ブリンナー、リチャード・ウィドマーク、ジョージ・チャキリスの日米合作映画『あしやからの飛行』(1964)のヒロインの1人に抜擢され一躍脚光を浴びる。そんな時期に出演したのが、本作だ。

演技力には、大いなる疑問を感じるが、磨けば素晴らしい光を放つ雰囲気の女優だった
。要するにいつ誰に磨かれるか?≠ニいう話なんだが・・・


■もっと見たいと思わせる三人の掛け合い


悪名波止場 悪名波止場
「私の妹が〜」「フルーツジュース!」「好きでんねん!」

「そのボリュームのある身体でやな。ちゅ〜〜っと吸いついたれ!」


藤田まことが演じる喜劇が素晴らしいことは、当然の事なのだが、そんな空気にそつなく入り込む田宮二郎のその芸達者ぶり。もっともっとこの二人の掛け合い。いや、勝新を合わせての三人の掛け合いを見せて欲しい。そんな事を30代前半の若造(オレ)に思わせる凄さ。

今の30代の役者で、そんな思いを持たせてくれる魅力的な掛け合いの出来る役者は存在するか?そういえば日本アカデミー賞授賞式(2008/2/15)っていうのを見たが、なんともヘラヘラ笑ってる奴らばかりの緊張感のない空間だったよな。ハリウッドスターや中華圏のスターのパクリに終始する役者(?)達。あのジョニー・デップに憧れてる薄っぺらな男誰だ?

もう少し、真剣に映画という媒体についてもっと多くの人たちが考える時期に差し掛かっているのではないだろうか?そして、
役者も監督も、もっと勉強しないと。試しに『雷蔵、雷蔵を語る』という本でも読んでみな。昔の役者がいかに芝居について真摯な態度を持っていたかが分かるはずだから。


■青山ミチと水原弘 二人の名歌手


悪名波止場 悪名波止場
クラブで歌う女・青山ミチ(1949− )。当時まだ14歳なので、なんとも野暮ったい雰囲気だが、歌唱力の方は抜群。しかも、清次のイチビリ振りも堪能できる。ギター片手に歌い手の周りをちょこまかするだけで、野暮ったい歌い手が姫様のようにも見えてくるのだから不思議なものだ。

ちなみにこの青山ミチという人は、横浜の在日米軍の黒人兵と日本人女性の間に生まれた人で、60年代に人気歌手として活躍したが、1970年代に交際していたやくざ絡みなどで覚醒剤所持で逮捕(4回。78年以降に一年の実刑を喰らう)、睡眠薬中毒の延長線上の万引きによる現行犯逮捕により芸能界からフェイドアウトしていった。ちなみにこの作品の年の2月から3月にかけても失踪騒ぎを起こしている(美空ひばりの弟小野透絡み)。現在は生活保護を受けて生活しているという。

しかし、復刻版のCDやベスト版の印税なんてものは本人に入らないものなのだろうか?

そして、本作に登場するもうひとりの現役歌手が、1959年に「黒い花びら」で第一回レコード大賞を受賞した水原弘(1935−1978)である。勝新のような豪快な私生活によって多額の借金を背負いながら42歳の若さで肝硬変で死んだ人だ。以下、勝新太郎の「俺勝新太郎」より抜粋

水原弘は「あんちゃん、あんちゃん」って、いつも俺のことを慕ってくれた。映画もずいぶん一緒に撮ったし、歌も本当にうまかった。・・・俺とさえあわなけりゃあ、おみずはあんなに借金しないで済んだろう。まるで、おみずは勝新太郎になったように、どこへ行ってもそばにくるやつを、毎晩、大勢連れて飲み歩くようになった。

ある日、俺の特集を週刊誌が組むっていう時に、田宮二郎がおみずのところへ来て、
「ねえ、おみず。勝新の特集の記事。あれに何かしゃべるの?」って言った。おみずが、
「あっ。お前、今、勝新って言ったな」「いや、俺、勝新って言ってないよ。勝さんって言ったんだよ」
おみず自身が、
「あの田宮は、最初『水原さん』、それから『おみずさん』、最後に『おみず』になりやがったから。あんなやつはいねえ」ってよくこぼしていた。

最後は酒を飲みすぎて倒れた。そのニュースを聞いた日に、金利を払わなくちゃならなくて、ちょうど500万ばかりの借りた金が、俺の手元にあった。その500万を「これでお通夜をやってくれ」って、なな子(水原の妻)のところへ持たせた。・・・それから半年くらいたった。(明治座で『鶴八鶴次郎』をやっていた時に、なな子が500万を持ってきた)「おい、なんだい。そんなものはいらないよ。そんなものここへ置いていったら、俺は二度と付き合わないよ。あれは俺の香典だよ」
鏡の向きをちょっと変えると、玉緒の顔が映っている。玉緒が鏡の中で、もらっておいてください、って言っている・・・。


■朝吉の姿が段々勝新の実態に重なっていく・・・


悪名波止場 悪名波止場
「笑いたいやつには笑わしとけ!」


シャブ中毒でのたうち苦しむ女の子の為に日雇い労働をしてまで肩代わりする朝吉の姿。おとしという女の子の姿を現在に、置き換えてみても全然違和感はない。過去に風俗嬢として働き、中絶をする為に痛み止めとして覚えた覚醒剤の味が忘れられずに中毒になる。そして、身も心もボロボロになっていた時に、優しい声をかけてもらったヤクザ者と所帯を持ち、食い物にされてしまう。

オレを含めほとんどの人は、もうそんな女は、立ち直る見込みはないと見捨てるだろう。しかし、朝吉はそんな女に、情をかけ、女が立ち直れるかどうかは度外視して、助けようと努力する。う〜〜ん、
イイ男というのは、女からいくら搾り取ったじゃなくて、女の為にいくら助けてやれたなんだよな。やはり。


■癪に障るは、惚れてるの証拠


悪名波止場 悪名波止場
「癪に障ってしゃあないのじゃ」朝吉
「それは惚れてる証拠でんがな」清次


さすが清次兄ィはよく分かってるよな。癪に障るも好きのうち。好きよ好きよは直ぐに嫌いになるもんだが、嫌い嫌いは好きのうちは長く続くもんって事だよな。良い意味でも悪い意味でも・・・


■清次と白人少女の心地良い交流


悪名波止場 悪名波止場
この家のオバハンどこいったのジェスチャーを白人の少女マリの前でする清次。そして、それを後ろで見つめる朝吉。「サッチャレディーやねん」と言いながらジェスチャーする清次にナイスな突っ込みを入れる朝吉。もう面白いを越えて幸せな気分にしてくれるその雰囲気。実は大阪弁を話せる白人の少女と清次の関係が実に微笑ましい。

ところで、この作品の清次のファッション、シリーズの中でも出色の格好良さである。特に白のスーツの上下に、水色のTシャツ、そして、粋な帽子、こんなファッションで愛嬌のあるチンピラを演じれるハンサムな俳優って今時いるか?
もっとも朝吉の存在があればこそ、清次の格好良さが嫌味にならないのだが。


■朝吉ガールズに「傷だらけになって目の先も見えんようになって」放り出されたいゾ


悪名波止場
「わてかて抱いて欲しい・・・」お照
「なんでわいは女に苦労せんならんねや」朝吉


そういってお照を抱こうとして「何しまんねん」とあっさりはねつけられる朝吉。この絶妙な掛け合いはともかくとして、本作において登場する
朝吉ガールズ!その豪華さ。弓恵子、ミス・ワカサ、真城千都世。そして、三原葉子ばりに逞しい毛利郁子達総勢約8名。

そして、最後に清次の
「ピッピがおまんねん」で、えげつない責め苦を味わうことになる伊達三郎と吉田義夫ら。これって本当に酷な撮影だよね(観たら分かるさ)。そして、「シェーン」のように少女が見守る中去っていく朝吉と清次とお照。去っていく広島バスの中から手を振る清次の爽やかな姿と共に本作は終幕を迎える。

海辺の旅情溢れる物語には、やはりからっとした明るい別れが似合う・・・


■娯楽映画とは、人間の魅力で輝くもの


悪名波止場 悪名波止場
前作の舞台(恐らく高松)から広島に舞台を移して題名そのままに波止場で繰り広げられる朝吉・清次コンビの女殺しの珍道中。シリーズ第七作目にしてこの勢い。果たして『悪名』の快進撃はどこまで続くのだろうか?恐るべき早撮りで高水準の娯楽作品が作り上げられた時代。

21世紀の今、人間的な魅力で繁栄している娯楽はどれだけあるのだろうか?ここでいう人間的なというのは、その個の持つ価値であり、誰かが作り出したものではない。勝新、田宮二郎にはそれがあった。娯楽の種類・量は今の方が遥かに多い。しかし、その人間的な魅力で繁栄しているという娯楽の側面は恐ろしい程にお寒いかぎりである。ジャニーズ所属の芸能人もジャニーズだからこそ繁栄しているだけの話。アイドルも歌手も役者もほとんどが作り上げられた代用品のきく道具に過ぎない。

21世紀の娯楽の氾濫が、実は人間的価値の阻害から生み出されているという側面が、多くの現代人をうんざりさせ始めているのではないだろうか?極端に言うとずぶの素人が、日本アカデミー賞のあの壇上に翌年あがれかねない時代なのである。

− 2008年2月15日 −


当サイト内で使用している画像・映像キャプチャー等は、あくまで映画文化の熟成及び芸術復興を標榜する当サイトの意図により、
「映画を文章だけで云々することの不誠実さ」と「目で感じる芸術及び娯楽」である映画に対する敬意の姿勢で使用しております。よって著作権等は、全て各製作者・会社に帰属します。
画像・映像キャプチャー等の使用に関して表記の問題がある場合、又は削除依頼がある場合は迅速に応対させていただきますのでご連絡ください。
このサイトは、100%非営利に、純粋に「映画解釈の究極」を求めて運営されています。取り上げるべき作品・感想等ございましたらどんどんメールください。
当サイトはリンク・フリーです。
Copyright (C) 2007 Geijyutsu Taizen. All Rights Reserved.
Mail:webmaster@summaars.net