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悪名一番   (1963・大映京都)
■ジャンル: ヤクザ
■収録時間: 89分

■スタッフ
監督 : 田中徳三
原作 : 今東光
脚本 : 依田義賢
撮影 : 武田千吉郎
音楽 : 鏑木創

■キャスト
勝新太郎(八尾の朝吉)
田宮二郎(清次)
江波杏子(圭子)
藤原礼子(お照)
雪代敬子(妙子)
茶川一郎(おぎん)
安部徹(郡純太郎)
悪名一番悪名一番
東京初上陸!靖国神社を参拝する悪名コンビ!神社で涙を流し護国の英霊に詫びる朝吉の隣で、ダルそうにぽ〜っと突っ立ってる清次。「何祭ってまんねんココに?」と質問して、朝吉の鉄拳制裁を受けてしまう清次。そして、仲違いして別行動を取った二人が、最後の最後で合流して、清次が朝吉に言う「もし二人とも無事やったらまた二人で靖国神社いきまひょな」の一言。男と男の友情ってやっぱりいいよな。

■あらすじ


正月早々お照(藤原礼子)の下に居候する朝吉(勝新太郎)は、清次(田宮二郎)と花札に励む。そんな折お照の朋輩や町の衆が、金融屋のトラブルに巻き込まれ、取り付け騒ぎが起こる。そんな騒ぎの仲介を買って出た朝吉は、金融屋の一億円を盗み、東京に逃亡した男を追って、清次と共に東京初上陸を果たす。しかし、さすがの朝吉も勝手の違う東京で四苦八苦するのだった。『悪名』シリーズ第8弾。


■いつの間にやら戦後の焼け野原から高度経済成長へ・・・


悪名一番 悪名一番
1958年に完成した東京タワーが徐に映し出され、1964年に開催される東京オリンピックのポスターが張り出されるこの作品。『悪名』何作目からタイムワープしたのかは分からないが、満州事変(1931年)の時に中国大陸に行って14年ぶりに復員した朝吉が、いつのまにか、1963年にワープしている。

もうこの辺のいい加減さは長期シリーズものにありがちなことなので気にすべきではない。(『トラック野郎』で言えば桃さんの年齢の変動、『男はつらいよ』で言えばコロコロ変わるひろしの出生地)しかし、そんな事は置いておいても、オレ的には、
この作品を分岐点として『悪名』シリーズがつまらなくなっていったように感じる。

当初『悪名』の魅力は、自由奔放に生きる朝吉の姿だった。それが戦争から復員して、一気に人間的に落ち着いた朝吉は、戦後の焼け野原で日本人の誇りを体現していくようになった。そして、地方地方で日本人らしさを思い出させてくれる象徴へと転換していった。

そして、本作にて
ココぞとばかりに東京進出を果たすのだが、かの地において凡庸化の波にさらわれてしまった。大都会とは、朝吉という個性までも呑み込んでしまうのである。何か関西の芸人の東京進出後の姿を見ているような感覚。多くのイエスマンに囲まれ麻痺していく才能を見せ付けられているような・・・(多くの現代人は、そんな芸人と共に大切な感性が麻痺してしまった)


■勝新に大都会は似合わない


悪名一番 悪名一番
「親分!空見よう思うても見えしませんな」清次

絶対に勝新のことだからオープニングの花札は金賭けてやってるだろうなぁという新春に相応しい雰囲気から始まるこの作品。河内から始まるが、お照さんは始めと最後に申し訳程度しか出演しない。

更に早々に河内から東京へと舞台は転換していく。音楽の雰囲気も妙にモダンになっており、朝吉が日本の高度経済成長に直面する姿を描こうとしているのだろうが、はっきりいって全く面白くない。それは何故面白くないのか?一言でいうと大都会の東京で着流し姿の朝吉の存在の嘘くささからだ。

この頃から悪名が面白くなくなってきた明確な理由は、その着流し姿が、背景とマッチして昇華していなかったからだろう。着流しは大都会には似合わない。そして、勝新にも大都会は似合わない。


■図々しい奴はあまり図々しくなかった


悪名一番 悪名一番
本作はヒロインの力が徹底的に弱かった。前々作、前作において瑳峨三智子、滝瑛子というドフェロモン女優が登場した後に江波杏子と
雪代敬子(1933− )というさっぱりした雰囲気の二人。この二人の求心力の弱さが東京という舞台を更に退屈なものに転化していく役割を担っていた。

そして、公開当時は絶大なる人気を誇ったという
丸井太郎(1935−1967)。『図々しい奴』(1963年)という平均視聴率30%(最高視聴率はなんと45%)を弾き出したテレビドラマの主役だった人である。1967年にガス自殺した人にこういう事は、言いたくないが、全く華も魅力も感じなかった。

映画とテレビの違いとは、ゼニを払って観るとタダで観るの違いである。そして、その違いが、往々にして、普遍性と一過性の違いを生み出す。テレビでもてはやされた人に対して、10年後に「なんでこんな人に熱狂してたんだ」と思わせる場合が多い。一方、映画においてはそういう事はあまりない。ココに映画が生み出す価値とテレビが生み出す無価値の論理の一端がある。

タダで手に入るものは、トイレのトイレットペーパーのようなもの。排泄願望の強い時には、渇望されるが、無尽蔵に生産されるトイレットペーパーにほとんどの人は拘りを持たない(勿論例外もあるが・・・)。そして、テレビが全盛だった今から十年前の時代はまさに排泄願望だけで日本中が沸き立っていたような時代だった。


■朝吉と清次の掛け合いの魅力


悪名一番 悪名一番
「おのれなんやこ〜気にいらん気にいらん思う取ったら やっとおのれの気に入らんとこ分かったわい!おのれ日本人とちゃうんじゃ」朝吉
「わて日本人でんがな」清次「日本人とちゃうわい!」「せやけど米の飯食ってる日本人でんがな」「おのれでも米の味がわかるんかい」
「はいな朝昼晩三膳ずつ食べてまんがな」「明日から食うたらアカンど!」

この作品のハイライトは間違いなくこのシーンに尽きる。戦中派と戦後派のギャップを見事に笑いに昇華した掛け合い。そして、この喧嘩別れが最後の清次の名セリフに繋がっていく。


■ヒロインが主人公に惚れなかった珍しい作品


江波杏子 江波杏子 悪名一番
まだまだ芝居に柔軟さがなかった頃の江波杏子(1942− )。そのクールな大きな目で、男たちを見つめながら踊る姿は(ヌーベルバーグのフランス映画に出てきそうなくらい)格好良いのだが、悪名の世界観には、邪魔としか言いようがない。
(クールでモダンな)彼女と(ホットでモダンな)清次が怪しい雲行きになるんだったらかなり面白いものになったろうが・・・朝吉とだと、噛み合っていなかった。

ココで一つ物語の中で納得できないポイントがある。江波扮する圭子とその許婚の設定。どうして聡明な圭子がどう見てもバカな男を許婚にするんだろうか?この男よりも清次や朝吉の方が遥かに魅力的なはずだ。10万ばかしの借金を帳消しにする為に堅気の衆を泣かして自分だけ得しようとしてエライ目にあったこの男のどこに魅力があるのだろうか?

このヒロインは朝吉にも清次にも恋することなく、平行線を彷徨ったままバカな許婚と元の鞘に収まり二人と別れていった。そして、雪代扮する妙子もそうだった。
本作の最大の欠陥は、悪名コンビがヒロイン達から愛されなかった点にあるだろう。


■どんなつまらない出来であってもばっちしカタルシスを生み出せる凄さ


悪名一番
前回『悪名市場』において印象深い役柄を演じたおぎんが登場するのだが、それ程活躍するわけでも、別に粋な計らいをするわけでもなく消えていく。一方、なんとなく良かったのが芦屋雁之助・小雁兄弟。最後の乱闘でもっとも輝いてしまったのが、この二人だった。

悪名一番 悪名一番
「そりゃ親分さんはねぇ筋金入りかしらんけど わてらそりゃ針金も入ってやしませんで」
一郎

そして、まさに最後の大乱闘の寸前に、ボコボコにされた清次が朝吉に言うこの一言。

「せやけどもし二人とも無事やったらまた二人で靖国神社いきまひょな」

グッとくるよなあ。こういったセリフ。昔のスターの力とは、まさに締める時は、強引にでも空気を締め切れる、その観客を一瞬にして持って行ってしまう求心力にある。やはりこの二人の熱い芝居はお約束ながらも、イイよなぁ。このシーンは、何回観てもグッと来てしまう。この心地良いカタルシス。そして、文句なしの敵役名和宏と安部徹。この二人がネクタイ同士で数珠繋ぎになり引き回される爽快感!


■とことんやらな気がすまん反骨精神を取り戻せ!


悪名一番 悪名一番
さすがの『悪名』シリーズにも失速感が垣間見えてきたこの作品。しかし、よく考えてみれば、1963年に公開された『悪名』シリーズは4作品もあった。そう考えると恐るべきスピードで『悪名』『兵隊やくざ』『座頭市』を撮り、尚且つ夜は夜で帝王だった勝新という男は、恐ろしい程にタフな男だった。

「わいはわいでとことんやらな気がすまん性質(たち)でなぁ」う〜〜ん。勝新という役者は、21世紀を生きる30代以下の若者には間違いなく訴えかける何かがあるはずだ。そして、私が言うまでも無く彼の存在は、そんな若き世代の牽引力になっていくだろう。

このサイトで『悪名』シリーズを取り上げる理由は、それだけの価値がそれぞれの作品の中に内包されていると考えているからである。難しい言葉よりも何十倍も心に浸み込む熱気によって・・・

少しでも多くの男も女も勝新を感じて、時代の閉塞感をぶっ飛ばして行こうという反骨精神に目覚めて欲しい!

− 2008年2月17日 −


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