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悪名幟   (1965・大映京都)
■ジャンル: ヤクザ
■収録時間: 82分

■スタッフ
監督 : 田中徳三
原作 : 今東光
脚本 : 依田義賢
撮影 : 宮川一夫
音楽 : 鏑木創

■キャスト
勝新太郎(八尾の朝吉)
田宮二郎(清次)
水谷良重(お米)
ミヤコ蝶々(お政)
佐藤慶(遠藤)
内田朝雄(正太郎)
千波丈太郎(直治郎)
悪名幟悪名幟
朝吉の「任侠精神」にすがりつき、悪態をつくミヤコ蝶々の都合の良さ。自分で撒いた種を他人に刈り取らせ、その刈り取り方が悪かったと罵るその抜け目のなさ。もっともワルい奴はここにいた。やくざに食い物にされてもしょうがないほどのギャンブル狂を丁寧に助ける朝吉。そんな余裕が生まれた瞬間から朝吉の魅力は半減する事になった。

■あらすじ


大阪に戻ってきた朝吉(勝新太郎)と清次(田宮二郎)は、昔なじみのびっくり鍋屋を訪れ、そこで別れの杯を交わす事にする。しかし、まったく金を持ち合わせていなかった二人は無銭飲食のために、急遽女だらけの賭場で飲食代を稼ごうとする。そして、そんな場所に現れたお政(ミヤコ蝶々)の不渡りの小切手騒動に巻き込まれるのだった。記念すべきシリーズ第10弾。


■隠されたメッセージ・フロム・悪名幟


悪名幟 悪名幟
全ての物事にとって付きまとうものが「倦怠」と「停滞」という二文字。始まりが刺激的であればあるほどその「倦怠」と「停滞」は加速度的にそれ全体を支配し始める。

そんな道理を裏づけするかのように、『悪名』シリーズ第10弾という記念すべき作品にしては、物語は実に淡々に進んでいく。現代やくざと対峙する朝吉・清次コンビだが、やはり二人には高度経済成長期の昭和は似合わない。もはや二人のお決まりの掛け合いを楽しむだけのファンの集いと化していった凡作だが、そんな中にも現代人に共感を呼び起こさせるさまざまなメッセージが隠されている。


■二人よりも三人の面白さ・・・


悪名幟
「ほんまええ男や」というお米の言葉に、勘違いして振り向く清次。
そして、
「あんたやないわ」というおいしくもキツイ一言。

「親分言うたらアカン言うてるやろ」朝吉
「ほな朝ヤン!」清次
「気安ういうたらあかんぞ!」朝吉

「わいら決まった職もないし決まった家もないし、つくづく考えたら恥ずかしいと思わんか?」朝吉
「つくづく考えたりせなんだらよろしいねん」清次

今回のヒロインは第一作目から琴糸を演じてきた水谷良重(1939− )である。本作では琴糸の他力本願なイメージとは正反対の自力本願なチャキチャキ娘を好演している。そんな男勝りで頼り甲斐のある彼女と二人組の掛け合いの面白さ。
『悪名』の魅力が、この作品においては前半20分間に濃縮されている。そして、それ以降は見事に盛り下がっている。


■毛利郁子のにやけっぷり


悪名幟 悪名幟
そして、盛り上がりの前半の20分間に含まれる、女だけの賭場に登場する毛利郁子(1931− 、蝶々の右隣)様。相変わらず端役なのだが、
そのにやけっぷり≠ェオレを妙に刺激してくれる。ああ・・・こんな艶かしい有閑マダムに小ばかにされたいなぁという変な願望がふともたげてくる・・・

にやにやする癖のある女は、必ずといっていいほど男を小ばかにして、挑発して、思いっきりいじめてもらいたいと願望するマゾっけのある女である。そして、男にとって最高に幸せな瞬間は、そういった流れに身を任せる瞬間かもしれない。

この作品のキーパーソンでありマドンナ(?)は水谷良重ではなく、実際はミヤコ蝶々(1920− )なのだが、彼女のギャンブル狂と不渡りの小切手詐欺が生み出した自業自得の境地を朝吉が、必死になってかばい立てするという設定に誰もが不自然さを感じずにはおられない。

この作品のミヤコ蝶々の存在は、(彼女の芸達者な部分もあって)まさに今の日本という国家そのものである。息子をほっぽらかして博打三昧で、カラ手形を乱発し、ブラシ工場の労働者に対しても無責任極まりないのだが、境地に立たされると泣き落としと大義名分を振りかざし、自分だけは助かろうとする狡猾さ。
国民に全ての苦渋を舐めさせる世襲制に支配された日本の国家そのものの無責任な体質。


■まさに現代日本を象徴するつまらなさ


悪名幟 悪名幟
「あ〜久しぶりやな」朝吉

蝶々は蝶々として、お米との刺激的な一夜を想像して、呟く朝吉のかわいらしさ。
「もてる男には可愛らしさ」があるという言葉を地で行く可愛らしさ。

そして、20分間は過ぎ「なんでも損得そろばんずく」のヤクザがのさばり出してからこの作品は分刻みに凡庸に退屈に包まれていく。まさに現在の日本そのもの・・・テレビ、音楽、映画、CM・・・全てが「損得そろばんずく」に包まれた倦怠感。ちょっと有名になればミス・ユニバースでもスポーツ選手でもCMに出演し、
「損得そろばんずく」で「強いやつには一変してペコペコする」という守銭奴ぶり。

この作品のつまらなさは、そのもの現代の日本のつまらなさに共通しているのである。


■失われた朗らかさ・・・


悪名幟
朝吉にせまり思いっきり拒まれる蝶々と朝吉に違う意味で迫り拒まれる内田朝雄の相変わらず名調子ぶりをよそに物語りは淡々と経過していく。そして、最後はお決まりのワンパターンな乱闘の末に終始する。勿論こういったワンパターンぶりはプログラム・ピクチャーの醍醐味なのだが、10作も連続してみるとさすがに厳しい。

当時の観客にとって、ビデオやDVDというメディアなぞ思いもよらなかったのだろう。だからこそお約束は繰り返された。こういった作品はつまるところ、
不自由さが生み出す朗らかさでもあり、多くを過去に葬り去れた昔の人々のゆとりでもあるのだろう。

こういった所にも現在の日本及び世界中の人間の精神的ゆとりのなさが垣間見える。


■贅沢な退屈感


悪名幟 悪名幟
「離れられんようになってんねやなぁわいら」朝吉

「わいらに行く先なんかあるかい」朝吉

そして、男二人でまた去っていく。自由気ままに着たきり雀で去っていく高度経済成長から取り残された二人の姿は、まさに中国、ブラジル、インド、ロシアの高成長から取り残される日本の姿そのものではないか?駄目でどうしようもない国家に所属するならせめて逞しさだけは保持したいものだ。

もはや『悪名』シリーズは完全に惰性の中で生み出される名人芸の領域に達している。それは一つ間違えば退屈に感じるが、もしかしたら実はかなり贅沢な退屈なのかもしれない。

− 2008年4月19日 −


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