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空軍大戦略   BATTLE OF BRITAIN(1969・イギリス)
■ジャンル: 戦争
■収録時間: 133分

■スタッフ
監督 : ガイ・ハミルトン
製作 : ハリー・サルツマン / ベンジャミン・フィッツ
脚本 : ジェームズ・ケナウェイ / ウィルフレッド・グレートレックス
撮影 : フレディ・ヤング
音楽 : ロン・グッドウィン

■キャスト
ローレンス・オリヴィエ(サー・ヒュー・ダウディング空軍大将)
マイケル・ケイン(キャンフィールド空軍少佐)
ロバート・ショウ(スキッパー)
クリストファー・プラマー(コリン・ハーヴェイ空軍少佐)
スザンナ・ヨーク(マギー・ハーヴェイ)
イアン・マクシェーン(アンディ空軍上等兵曹)
空軍大戦略
いまだに唯一「空の戦争」を本格的に描いた作品として映画史上に名を輝かしている戦争大作。空の戦いは見事に描かれているが、人間の描写はイマイチという評価の高い本作だが、果たしてそうだろうか?確かに人間関係の描写は浅いが、決して人間不在のドラマがそこにあるわけではない。むしろ人間ドラマが感傷的にならなかった分だけ、戦争自体をシビアに捉えているのではないだろうか?妻子を失い、夫が大火傷を負い、空中で双方攻撃し合い爆弾を落としあうその姿に「人間の本質はその愚かさにある」という事を嫌というほど思い知らされる。そして、本作こそ世界で始めて女の軍人を真正面きって描きあげた作品だった。戦争の勝利の本質は、その国にいかに多くの賢明な女性が存在しているかにかかっている。本作においてナチスを敬愛するドイツ女性たちと、男性の中で軍人として戦うイギリス女性たちの対比によって見事にその点が描かれている。

■あらすじ


1940年6月14日、遂にナチス・ドイツ軍がパリ入城を果たし、フランスは占領された。この事により、ドイツはヨーロッパ大陸のほぼ全土において主導権を握る形となり、イギリスの喉もとに刃を突きつける形となった。そして、ヒトラーは7月16日、英国に対して上陸部隊を迅速に展開するために、ドーバー海峡の制空権を押さえる作戦を始動した。ココに16週間にいたる英国本土上空の航空戦バトル・オブ・ブリテン≠ェ始まることになる。


■世界で始めて女性の軍人を克明に描いた作品


空軍大戦略 空軍大戦略
本作は当時の戦闘機、爆撃機を使って描かれた本格的な戦争大作である。そして、そんな戦闘の合間に一人の女性軍人の姿が極めて克明に描きあげられていた。マギーという作戦本部に勤務する少尉である。日本人にとって何よりも驚かされるのが、既にこの時代(1940年)に、
イギリスでは女性が軍服を着て闘う権利が認められていたという事である。一方、日本ではモンペ姿に竹やりでしか戦う権利は認められていなかった。

映画というものは作りものであるにもかかわらず、歴史に対する新たなものの見方を教えてくれる。
第二次世界大戦の敗北国は得てして、女性の権利が低かった国である。一方戦勝国は女性の権利が高かった。イギリスにいたっては1952年に女王陛下が国家元首に、後に女性の首相まで誕生している。

逆に言うと戦勝国の歴史とは、賢明な女性の存在のもとに築かれた歴史でもあった。この作品の素晴らしい点は、何よりもマギーという女性の存在にあった。そう素晴らしいローレンス・オリビエよりもスザンナ・ヨークの存在に・・・


■何かを再現するためには・・・


一般的に言われている本作の魅力は言うまでもなく
「何かを再現した」点にある。それはバトル・オブ・ブリテンにおける戦闘シーンの再現のみならず、その時代の緊張感を見事に再現した点にある。

本作の魅力は、その映像的迫力をバックアップする人間ドラマが、ゴジラにおける人間ドラマのパートと同じように見事にフォローしている点にある。最近の映画の駄目なところは(70年代以降の日本製戦争映画も含む)、
中途半端に感傷的な人間ドラマと戦闘シーンを織り交ぜようとしすぎて、戦争≠感動を生み出すための道具と勘違いしている部分にある。そして、本作にはそういった陳腐さは一切ない。

だからこそ、一見人間ドラマとしての面白味にかけるのも事実であるが、逆に言うとそれだけ一人の人間に左右されない大局的な視点で、戦争というものを捉えさせてくれる作品だという事でもある。


■若者の特権は、個性的であることと、退屈なヤツでないことにある


私は特に若者であればこそ、古い映画をどんどん見るべきだと思っている。その理由は、こういった作品の中にもあるのだが、昔の人間(皮肉ではあるが、アナログ人間)の方が、自由な発想で生きている人々が多く、そういった人々が作り出すモノに触れ合っている方が、今作り出されているものに触れ合うよりも遥かに刺激的だからである。

例えば、今の人間の生き方の決定的な問題を指摘するならば、それは、
こういう時にはこうした方が有利といった、コンピューターのような生き方が理想だと考え、不毛にも自分の精神と行動に対しての葛藤を繰り返し疲労していく人々が多いという点にある。

今の時代ほど、表向きの言葉が上滑りしている時代も少ない。そして、今の時代ほど「若さに対する攻撃がなされている時代も少ない」。口を開けば「若者が不気味だ」という中高年達。しかし、最も不気味なのは、
「個人でいると、若者に迎合したがるくせに、集団になると若者を攻撃したがるという中高年に見られる習性」である。

若者は、逆にこう言うべきである(私は若者なので言う権利がある)。
今の中高年は驚異的な程、無個性だと。長いものに巻かれろという風見鶏のような人が多く、一対一で会えば温厚だが、彼らが集団になれば排他的になる。結局は、魅力のない人たちが多い。チョイワルなどといった言葉が一時流行ったが、そんなダサイ言葉に踊らされてるオヤジの方がよっぽど不気味すぎると。

今を生きる若者(心が若ければ何歳でも若者である)は、そんな世代を乗り越えていくためにも、古き良きものに触れ合い識別していくことが大切なのである。


■スピットファイヤーの操縦桿の素晴らしい造形


空軍大戦略
最高の見所は間違いなくエアーバトル・シーンにある。スピットファイヤー、ハインケル、スツーカといった戦闘機・爆撃機は、当時スペイン空軍(フランコ独裁制下)が保有していた本物の機体を使用して撮影されている(撮影で使用された軍用機の総兵力は、当時世界において35番目に相当する空軍力だった)。ただし、メッサーシュミットのみラジコンだった。

空中戦は基本的に戦闘機が爆撃機を一方的に攻撃する展開に終始しているが、美しい編隊飛行や空の戦闘(『スター・ウォーズ』に影響を与えた)と英国の田園風景のギャップ、操縦席を中心にした視点など、今見ても非常に魅力的な映像が映し出されている。そして、そんな背景に流れる音楽も又非常に素晴らしい。

特に最後の空中戦における戦闘音を一切排除して音楽のみが流れる数分の展開は、実に交響曲的であり、観ている者に空中戦の本質=儚さが生み出す荘厳さ≠ェストレートに伝わる描写である。そして、この描写が現在に至る戦争映画に与えた影響は計り知れない。



■戦闘のリアリズムを後押ししていた描写


そして、戦闘のリアリズムを支えていたのが、ドイツ軍がしっかりとドイツ語を話すという部分を始めとする英独軍を対等に描いた点である。そして、この作品の隠し味でもあるのだが、ドイツ軍がそれなりに魅力的に描かれている点にある。特に当時間違いなく世界一クールなファッションセンスを誇った軍隊であるドイツ軍の将校の軍装の格好良さ。

冒頭におけるドイツ軍の士気の高さ。やがて、その士気が物語の後半にいたって落ちていく描写の巧みさ(露骨にではなく食卓テーブルのキャンドルが増えていくことによって描写している)と、それに対してイギリス軍の士気が上るのではなく、むしろ戦争に対して倦怠を感じていく様。

戦争の本質が、敗北に対する怖れと、それを乗り越えると勝利に対する期待感よりも、倦怠が起こりがちという本質であることが見事に描かれている。勝利に対する期待感なぞは、政治家や将軍といった安全圏にいるものだけの話なのである。

ヘルマン・ゲーリング
中でもヘルマン・ゲーリング(1893-1946)の描写はなかなか圧巻である。英国に空爆に向う爆撃機の群れを見て悦に浸っている姿が映し出されるのだが、
ドイツ人の貴重な命がこういった男の自尊心を満たすために失われていった現実を考えると実に印象的なシーンである。

そして、終盤にゲーリングがファルケ少佐に「戦いに勝つために必要なものを言ってみろ」と質問した時に、「スピット・ファイヤーの小隊が欲しい」と返答するシーンの可笑しさ。軍上層部と現場の温度差を一言で表現した名シーンである。ちなみにファルケ少佐は
アドルフ・ガーランド(1912-1996)がモデルである。ガーランドは、言うまでもないほど有名なドイツ空軍のエース・パイロットだった(ちなみに弟二人のエース・パイロットだったが、戦死している)。そして、本作のテクニカル・アドバイザーでもあった。(写真:左ゲーリング、右:ガーランド)


■魅力的なポーランド義勇軍の描写


そういったドイツ軍に対する描写と同じように描かれるポーランド義勇兵のエピソードも、物語に広がりを与えている。「英語だけ話せ!ポーランド語を話すな!」と散々罵られながら、全く期待されずに戦場に投入されるや否や、素晴らしい活躍をするのである。

そして、圧巻のエピソードがココにある。撃墜されパラシュートで脱出したポーランド人が、田園地帯に落下し、「グッド・アフタヌーン」と拙い英語で農民にあいさつするが、農民達にドイツ人と間違われ、捕虜扱いされてしまうシーンである。



バトル・オブ・ブリテン


ヒトラーは勝利の概念についてこう考えていた。
勝利は確実な過程によって得られるものではない。全てが整うまで待つことは、恐らく全てが手遅れになるのを待つことになると。

1940年6月10日イタリア=ムッソリーニ政権が英仏に対して宣戦布告した。遡る約10日前、英兵33万8千人がヨーロッパ大陸からの撤退に成功した(ダンケルクの奇跡)。しかし、この英軍の撤退劇によりフランス軍は雪崩式に崩壊していき、6月14日ドイツ軍がパリ入城を果たす。
完全に守勢に立った心の習慣が、フランスを破壊させてしまった

7月16日ヒトラーはイギリス上陸作戦=シー・ライオン作戦準備を命令する。この作戦の成功はドーバー海峡の制空権を獲得するか否かにかかっていた(1946年戦犯として処刑されたドイツ国防軍最高司令部作戦部長アルフレート・ヨーデルは戦後この作戦についてこう答えている「成功の見込みなど最初からなかった」。ヒトラー自身も準備段階でイギリスが降伏すると見ていた)。

7月10日、最初の英独空軍の空戦が行なわれる。以降8月18日まで主に英国沿岸部において戦闘が散発した。そして、のちの一ヶ月間ドイツ軍はロンドンを集中的に猛爆することになる。しかし、ロンドン爆撃を優先にしたことにより、ドーバー海峡の制空権を押さえる事を後回しにさせ、シー・ライオン計画は無期限延長になる。

そのきっかけは8月24日に初めて行なわれた偶発的なロンドン空爆(ヒトラーは当初市街地に対する無差別攻撃は禁止していた)に対する連日に渡る英軍によるベルリン空爆だった。この事により激怒したヒトラーは9月7日よりロンドン空爆を開始させた。

対英国戦に振り分けられたドイツ空軍機は約2700機だった(一方、英国空軍は約600機)。9月7日から11月3日にかけ、700万人のロンドン市民が毎夜平均200機による空爆に悩まされた(爆撃機は護衛戦闘機を伴なわないため、夜間爆撃に限定された。そして、夜間であることが効果的な爆撃を果たすための障害となった)。国王はずっとバッキンガム宮殿に留まっていた。
約一年間に及ぶ空爆により約4万3000人のイギリス国民が死亡した。

バトル・オブ・ブリテンとは、1940年7月10日から10月31日にかけて行なわれた英国空域での英独空軍の戦いである。そして、この戦いの分岐点は、9月7日のロンドン爆撃であった。この爆撃によりドイツ軍はドーバー海峡の制空権を獲得することを放棄し、上陸作戦も頓挫してしまうことになった。そして、爆撃機を護衛する戦闘機メッサーシュミットの航続距離の短さから、ロンドン上空での護衛が10分程度しか出来ないという事実が、爆撃機の被害をより拡大させた。


■魅力的な英国俳優たち


空軍大戦略 空軍大戦略
戦争の大局を描くにおいて、やはり必要であることは、豪華なキャスティングである。人間ドラマ主体の作品ではないからこそ、存在感のある役者がその中に求められる。そして、本作において最も存在感を示していたのは、スザンナ・ヨークを除くとやはり以下の4人だった。

最初にローレンス・オリビエ(1907−1989)。彼は当時ファイター・コマンダーだったヒュー・ダウディング大将を演じている。殆ど二箇所を移動するだけの芝居なのだが、その人物の重みを容易に感じさせる重厚感が漂っていた。

「逆なんです。レーダーではなく、私は神を信頼しレーダーに祈ってます」

「計算では、わが飛行士は1人で敵を4機落とさねばなりません。それで互角です」


そういったセリフ一つ一つに重みが伴なっている。そして、戦闘機乗りに扮する3人の名優。ロバート・ショウ、マイケル・ケイン、クリストファー・プラマー。ちなみに戦争映画でロバート・ショウ(1927−1978)と言えば『バルジ大作戦』(1965)の独軍将校ヘスラー大佐が有名だが、本作はナチ軍服ではなく、白のタートルネックのセーターを着て英軍将校として登場する。

そして、マイケル・ケイン(1933− )の若き日の眼差し。彼の目の透き通るような青さはやはり魅力的である。しかし、何とも不思議なフェイドアウトが残念である。撃墜死するのだが、その死に様は一切描写されていない。


■何よりもスザンナ・ヨーク


空軍大戦略 スザンナ・ヨーク スザンナ・ヨーク
そして、クリストファー・プラマー(1927− )。彼の役柄はスザンナ・ヨーク扮するマギーの夫である空軍少佐コリンである。この二人の軍人夫婦の関係こそが、本作に一種独特な色付けをしている。

軍服を脱いで上はシャツとネクタイだけ、下はパンティとガーターベルトとストッキングというセクシーな姿を披露するスザンナではあるが、ほぼ全編に渡りごく普通の女性が軍人として祖国防衛に望み、戸惑いながらも奮起し、夫の悲劇を受け止めるという役柄を見事に演じている。

コリンは空の戦闘により大火傷を負う。そして、その前にマギーは作戦本部で大火傷して顔面がケロイド状の彼の同僚パイロットと再会してショックを受けていた。バトル・オブ・ブリテンは勝利に終わるのだが、この夫婦にとっては国の勝利の後に、本当の戦いが待ち構えていた。

この作品の素晴らしい部分は、大局を描きつつも最後にさらりと、
「戦争とは、その出来事が終わった時から多くの人の人生に悲劇をもたらすものであり、それは戦勝国にも敗戦国にも対等に降りかかるんだよ」と伝えてくれている点にある。

スザンナ・ヨーク スザンナ・ヨーク
スザンナ・ヨーク(1941− )は、日本においてはほとんど評価されていない女優である。王立演劇学校出身の彼女は、その感情表現の巧みさによって、聡明な女性も賢明ではない女性も容易に演じ分ける事ができる女優である。

特に本作において、爆撃中に将校の命令口調に対して激怒するシーンに見られるように感情を爆発させる時の表情のユニークさは一種独特である。実生活でも虐げられている人々を救おうと盛んに活動しているように、情熱的な彼女のような女優は日本人にはなかなか受けないのだが、私はスザンナの情熱的な雰囲気がとても好きだ。


■勿論ナチスモノと言えばカール=オットー


空軍大戦略
本作は当時007シリーズの製作をアルバート・ブロッコリと共に行なっていたハリー・サルツマンによって製作された。そして、タイトルバックのデザインは007シリーズでお馴染みのモーリス・ビンダーが担当している。

1300万ドルの巨費をかけ製作された本作は、イギリス以外にスペインとフランスでロケーション撮影された。日本においても大ヒットを記録したのだが、ここで最後に忘れてはいけない。
我らがカール=オットー・アルバーディも勿論ナチス将校として出演している。この男の薄ら笑みを見ないとナチスが登場する作品を観た気になれないのは私だけだろうか?

− 2007年12月17日 −


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