HOME
■サイト内検索

■洋画
 □カタカナ順
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 □クラシック
 □ドラマ
 □コメディ
 □サスペンス
 □アクション
 □ポリス
 □スパイ
 □犯罪
 □カー
 □ミュージカル
 □史劇
 □文芸
 □戦争
 □西部劇
 □アドベンチャー
 □パニック
 □ギャング、マフィア
 □SF
 □ホラー
 □スポーツ
 □香港
 □ドキュメント
 □アニメ
 □エロス
 □B級
 □アカデミー賞
 □カンヌ映画祭
 □ヴェネチア映画祭



■邦画
 □ひらがな順
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 □名作
 □ドラマ
 □喜劇
 □サスペンス
 □アクション
 □刑事
 □時代劇
 □戦争
 □文学
 □パニック
 □東映ヤクザ
 □ギャング、ヤクザ
 □特撮
 □怪奇
 □ドキュメント
 □アニメ
 □エロス
 □B級
 □海外映画祭受賞
慕情   LOVE IS A MANY-SPLENDORED THING(1955・アメリカ)
■ジャンル: ドラマ
■収録時間: 102分

■スタッフ
監督 : ヘンリー・キング
製作 : バディ・アドラー
原作 : ハン・スーイン
脚本 : ジョン・パトリック
撮影 : レオン・シャムロイ
音楽 : アルフレッド・ニューマン

■キャスト
ジェニファー・ジョーンズ(ハン・スーイン)
ウィリアム・ホールデン(マーク・エリオット)
マーレイ・マシソン(Dr.ジョン・キース)
ジョージャ・カートライト(スザンヌ)
ヴァージニア・グレッグ(アン・リチャーズ)
慕情
「愛とは、理由なき共犯関係を楽しむ瞬間」。愛し合うことの喜びは、全く赤の他人だった二人が、あるきっかけで結ばれ喜びを共感する奇跡的な瞬間でもある。だからこそ、別れはいつかやってくる。そして、みんな知っている永遠につづく恋愛なぞ存在しないと・・・しかし、また多くの人は知っているのである。愛し合っているこの瞬間が永遠なのだと。だから愛とは永遠に続くのでなく、永遠の瞬間なのである。

■あらすじ


時は1949年、中国人の父とイギリス人の母を持つ女医ハン・スーイン(ジェニファー・ジョーンズ)は、軍人の夫を中国内乱でなくし、今は香港にて医療に従事する。そんな時妻のいるアメリカ人の新聞記者マーク(ウィリアム・ホールデン)と出会う。お互いに愛を感じあう日々の中、マークは勃発した朝鮮戦争の従軍記者として香港を発つことになった。


■映画とは再現ではなく創造である


慕情
「北京の月はどこよりも大きいのよ」

とハン・スーイン(ジェニファー・ジョーンズ)は、マーク(ウィリアム・ホールデン)に言う。そう、1950年代のハリウッドが描くメロドラマは、実寸大にこだわらずに、どこよりも壮大で華やかで悲しみと喜びに満ちていた。いわゆるお伽話の世界観を奏でてくれていた。

プッチーニの『蝶々夫人』の旋律をアレンジしたかのようなサミー・フェインの有名なテーマ曲、美しい香港の風光明媚、ジェニファー・ジョーンズの可憐なるチャイナ・ドレス、ホールデンの豪華なオープン・カー。全てが当時の香港からはかけ離れた、独自の香港的なムードを作り出していた。

この思い切った世界観の創造は、無知や無教養から、もしくは偏見から生み出されたものかもしれないが、現実というものに縛られた映画の世界観ほどつまらないものはないのである。映画とは、再現ではなく創造なのである。一つのローマのイメージを創造したものが『ローマの休日』とするならば、一つの香港のイメージを創造したものが本作なのである。


■麗しのジェニファー・ジョーンズ


慕情 ジェニファー・ジョーンズ
相手役のウィリアム・ホールデン(1918−1981)の存在感を埋没させてしまうほどに、ジェニファー・ジョーンズ(1919− )の魅力が発散されている。
とにかく中年女性の「臆病」「愛情という感覚の排除」「仕事に没頭」という現在においても普遍的な女性像を、約20種類もの美しいチャイナドレスに彩られながら、愛を感じることへのとまどい、恐れ、背徳感、そして、喜びへの転化へと見事に演じあげている。

その170pものすらりとした長身をチャイナドレスで拘束すればするほど、彼女の美は果てしなく発散されていくのである。
衣装の数々は『イブの総て』(1950)『聖衣』(1953)においてもオスカーを受賞している名デザイナー・チャールズ・ルメイヤによるデザインである。

「愛してると言えば確かに世の中で、きれいに聞こえるわ。正しくも見える。でもそれだけじゃ嫌なの」

この人の表情における表現能力は、まさに醜い表情と美しい表情の垣根に位置する。
それが独特の魅力を生み出しているのだが、この恐るべき程の演技力ゆえに、素直に魅力的だとも言い辛い人なのである。だからこそ、ジェニファー・ジョーンズは観れば観るほどに味わい深い魅力に包まれている女優であり、“オンリー・ワン”の輝きに満ちたハリウッド・スターであるのである。


■もう一人の主役は間違いなく「香港」


そして、何よりもこの作品の「香港」の魅力。オープニングの美しいテーマ曲の調べと共に空撮で映し出される香港の姿を眼下に納め、50年前の魅惑の香港にタイムスリップする瞬間の喜び。1950年代には『ローマの休日』『旅情』をはじめ、こういった世界の美しさを堪能させてくれる作品が多く存在した。

「東洋と西洋はもっと近づくべきだ」

まさしく、国と国の間に凡庸さではなく畏敬が存在する時代でもあった。一つの国に対する興味は確実に過去にさかのぼるほどに高かった。現在は便利化している分、安易に理解を感じ、咀嚼する能力が損なわれている。つまりその国の本質を理解する前に、誤解を理解と勘違いしている人々が世界中に満ち溢れている。

「ヨーロッパ人とアジア人、そのどちらにもいい所があるの。 私がその答えになれたらいいと思ってるの」

この作品の一つの「香港」の姿は、単なる不倫ドラマに、国境を越えた愛が、国境を越えた戦争によって引き離され、人種を超えた愛が、時間を越えた永遠を生み出すという要素を付加して見せた。
この要素が存在しているからこそこの作品は普遍の輝きに満ちているのである。


■考えるよりも感じるのが人じゃないかい?


「魚も人間みたいだ。まわりを変えると生きるために性格も変わる」


やはり人間には愛情という感覚は普遍のものかも知れない。例え他人を不幸にしようとも愛情の虜になるのが人間の本来の姿であり、そういった愛情に埋没できることが生きている喜びに繋がる。
年を取る喜びは、ある意味より熟成した愛情の交換が出来る可能性に対する喜びである。

出会いの欠乏を恐れるのではなく、むしろ愛情の陳腐さを恐れるような女性こそ、最高に魅力的な女性である。
愛情と陳腐さは結構密接に繋がっており、下手をすれば愛は不毛となるのである。しかし、捉え方によっては愛情がこのスーインのように高潔なる使命感を呼び起こしてくれもするのである。

「考えるより感じるのが人じゃないのかい」


全くマークの言うとおりである。
敏感に感じられる自分であるために、常々考えることによって、決定的な瞬間を考えずに済ますべきである。


■世界中の30代の女性のバイブル


慕情
煙草の先の火で煙草の火をつける求愛行為は、実に斬新なラブシーンである。
一つの一瞬を共有する行為がキスであるならば、この行為もキスと同じ役割を果たしているのである。

「人生を細かな時間で計らない人なのね」


だからあなたが大好き。とスーインはマークに言う。このセリフ実に素晴らしい要素に満ちている。
時間=人生とは時計の針の動きではなく、あなたの心の動きなのよね?そう私の心は動いていなかった・・・でもあなたがその止まった私の心を動かしてくれた。時計の針にしたがって生きていく人生ではなく、心の動きにしたがって生きることを教えてくれた・・・

この作品は、ただのラブ・ロマンスではなく女性のライフスタイル。
特に30代の女性の「光り輝かせてくれる瞬間とのふれあい」についても示してくれている『30代の女性のバイブル』でもある。


■心の疼きが、私にも愛の世界を渇望させてくれる


「神は不公平だわ。私たちに与え過ぎてる。きっと今大きな不幸を用意してるの」

「青い虫を覚えているかい?僕達の長い幸せを約束してくれた」


愛を満喫している二人が、丘の上で別れる時に言うマークのこのセリフ。ホールデンの笑顔が実に素晴らしい。そして、丘に一人佇むジョーンズの姿の女性らしい切なさ・・・これこそメロドラマを見ている喜びの瞬間である。
一緒に心の疼きを感じることによって得られる喜び。これも映画の醍醐味。

そして、爆弾の落下の瞬間に、ホールデンの死の結末を示すかのように、子供が赤の絵の具の入ったお碗を落としてしまい。赤がぶちまけられてしまう!この映像の暗喩の見事さ。


■愛とはたくさんの輝きに満ちた瞬間!


「君は苦痛と対面するが癒すことができる。僕はそれを見てるだけだ」

「僕たちは失っていない二人の光り輝くものを」


マークの死を新聞にて知ったスーインが、二人が逢瀬を重ねたヴィクトリア・ピークの丘の上で涙にむせぶその前にひらひらと蝶々が。そして、絶望の淵にいる彼女は思い出す・・・あの瞬間の喜びの数々を・・・そして、音楽・・・美しいエメラルド色のチャイナドレスを着て座り込むスーインの何か決意を秘めた表情の輝くばかりの儚さと美しさ・・・さあ流れよ!愛を讃える賛歌を!

Love is a many splendored thing. It's the April rose that only grows in the early spring,
愛とはたくさんの輝きに満ちた瞬間。 それは早春に咲く4月のバラように・・・

Love is nature's way of giving, a reason to be living, The golden crown that makes a man a king.
愛が、与えることの喜び、生きるための理由、自分に誇りを持たせる心の王冠を与えてくれる。

Once on a high and windy hill,
あの日、風が吹く丘の上で、

In the morning mist two lovers kissed and the world stood still,
朝もやの中、愛する二人は口づけをかわし、世界は二人だけのものになった。

Then your fingers touched my silent heart and taught it how to sing,
あなたが私の静寂の世界の中で、人生を謳歌することを教えてくれた。

Yes, true love's a many-splendored thing.
あなたの真実の愛が、私の心を光り輝かせてくれた。


このテーマ曲。フォー・エイセズのオリジナルも素晴らしいが、アンディ・ウィリアムズやマリオ・ランツァによる熱きカヴァーも素晴らしい。


■実際のハン・スーイン


原作は医者として香港に開業中のハン・スーイン(韓素音 1917− )が、1952年に発表した自伝的小説である。実際のスーインも、中国人の父とベルギー人の母の間に中国の河南省で生まれている。1938年に国民党の将校(後に将軍)と結婚するが、1947年の中国内戦で夫は戦死する。そののち彼女はイギリス人、インド人と2回再婚している。

他にも『長兄―周恩来の生涯』(1994)のような素晴らしい回顧録など30冊以上の著書を記している。


■ジェニファー・ジョーンズとウィリアム・ホールデン


最後にこれは多くのこの作品を愛する人たちの思いを逆なでする現実ではあるが、撮影当時ジェニファー・ジョーンズは、ウィリアム・ホールデンを含めスタッフと口論することが多かったという。そして、いつも「このことを私の夫デヴィッドはどう思うかしら!」と叫ぶのだった。

当時の彼女の夫はハリウッドの大物プロデューサー・デヴィッド・O・セルズニックである。撮影中にジョーンズとホールデンはセット上で全く会話を交わさずにお互い無視し合っていたという。さらにホールデンの悪名高い女ったらしぶりが嫌いなジョーンズは、ラブシーンの前には必ずニンニクを噛んでいたという。

そして、撮影も終盤に差し掛かり、ホールデンが、男として自分の方から和解すべきだなと考え、白い薔薇の花束をジョーンズに渡したという。しかし、彼女はその花束をホールデンの顔に投げ返した。それ以降二人の間柄は『タワーリング・インフェルノ』(1974)で共演した時点においても最悪の状態のままだったという。

本作は1955年アカデミー劇・喜劇映画音楽賞、歌曲賞、衣装デザイン賞(カラー)に輝いた。

− 2007年7月25日 −


当サイト内で使用している画像・映像キャプチャー等は、あくまで映画文化の熟成及び芸術復興を標榜する当サイトの意図により、
「映画を文章だけで云々することの不誠実さ」と「目で感じる芸術及び娯楽」である映画に対する敬意の姿勢で使用しております。よって著作権等は、全て各製作者・会社に帰属します。
画像・映像キャプチャー等の使用に関して表記の問題がある場合、又は削除依頼がある場合は迅速に応対させていただきますのでご連絡ください。
このサイトは、100%非営利に、純粋に「映画解釈の究極」を求めて運営されています。取り上げるべき作品・感想等ございましたらどんどんメールください。
当サイトはリンク・フリーです。
Copyright (C) 2007 Geijyutsu Taizen. All Rights Reserved.
Mail:webmaster@summaars.net