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戦争のはらわた   CROSS OF IRON (1975・西ドイツ/イギリス)
■ジャンル: 戦争
■収録時間: 133分

■スタッフ
監督 : サム・ペキンパー
製作 : ウォルフ・C・ハルトウィグ
原作 : ウィリー・ハインリッヒ
脚本 : ジュリアス・J・エプスタイン / ハーバート・アスモディ
撮影 : ジョン・コキロン
音楽 : アーネスト・ゴールド

■キャスト
ジェームズ・コバーン(シュタイナー伍長)
マクシミリアン・シェル(シュトランスキー大尉)
センタ・バーガー(従軍看護婦エヴァ)
ジェームズ・メイソン(ブラント大佐)
デヴィッド・ワーナー(キーゼル大尉)
戦争のはらわた
ジェームズ・コバーンがある日サム・ペキンパーに言った。「あんたが撮る第二次世界大戦というものをぜひ見てみたいもんだな」その一言からこの作品は始まったのである。

■あらすじ


第二次世界大戦の東部戦線のとある部隊の指揮官に着任したプロイセン貴族のシュトランスキー大尉(マクシミリアン・シェル)。彼は自分の家柄の誇りと名誉のために、鉄十字勲章を欲していた。彼の小隊の隊長を務めるシュタイナー伍長は、そんなシュトランスキーを苦々しく思っていた。やがて、シュトランスキーは勲章のためにシュタイナー率いる小隊を見殺しにしようとするのだった。


■賛否両論の邦題が多くの観客を敬遠させた


戦争のはらわた
最初で最後のペキンパーの戦争映画は、ヒトラーユーゲントが登山する実写映像から始まる。原題は『Cross of Iron』(鉄十字勲章)である。鉄十字勲章とはナポレオン支配からの独立戦争時1813年にフリードリッヒ・ヴィルヘルム3世が制定した勲章である。

この作品のユニークな点は、
第二次世界大戦中のアメリカ軍を描いた映画ではなく、ロシア戦線で撤退するドイツ軍を描いたという点にある。一方、この作品の邦題は『戦争のはらわた』となっており、このネーミングのセンスのなさにはあきれ返るばかりであり、作品の品格を下げた下品な題名のセンスだという意見が主流になっている。しかし、私はこの邦題は実は怪我の功名かもしれないと思っている。多分にストレートすぎる嫌いがあるが、「戦争のはらわた」という題名から確かにこの作品の本質が伝わってくるからだ。


■非常に魅力的なシュタイナーという男


1943年のロシア戦線撤退中の中隊に貴族階級出身の新任指揮官シュトランスキー大尉(マクシミリアン・シェル)がやってくる。鉄十字勲章を貰うという野心家の新任指揮官に対して、小隊のシュタイナー伍長(ジェームズ・コバーン)は、ロシア人の少年捕虜の射殺命令をめぐって早くも対立することになる。

シュトランスキーが伍長から曹長に昇進したことを伝えても眉一つ動かさないシュタイナー。「昇進してうれしくないのか?」の問いかけにたいしても「ちっとも」と答えるその逞しさ。それでいて、命を救ってあげた捕虜の少年には、「食料と毛布を渡してやれ」というやさしさ。


シュタイナーは、過酷な状況で生き残るために(そして、部下を生き残らす為には)、冷徹に敵を殺害することを厭わない男なのだが、だからと言って「人間性」を放棄するほどヤワではない逞しさが備わっている。だからこそ、彼には「やさしさ」も同居してうるのだった。



■ペキンパーが語りかける戦争の本質!


君の隊の損害報告は?ときかれたシュタイナーはこう答える。「戦死2名不明1名」原因は?
「砲弾 臼砲 砲兵隊 一斉砲撃・・・ 不運 末期梅毒 よくある事です」と。

シュトランスキー「君は少々思い上がっているようだね」
シュタイナー「私は無意味な幻想は持っていないだけです」
シュトランスキー「中隊の戦力を過小評価しないことだ。小隊のすべては現在も未来も中隊なくしてはありえない」
シュタイナー「心得ていますが。人それぞれに 自分らしい生き方がありまして」

同じ軍隊服に身を包まされ、同じ目的意識を持たされ、同じ価値観と規律の元に過ごす時を強要させられる戦争というものの「本質的な悪」を見事についているセリフである。戦場で軍人が自分らしさを表現することがいかに異質であるかということをペキンパー監督はものの20分で見事に表現しているのである。

本作についてオーソン・ウェルズが「最も優れた反戦映画」と評価しているポイントがここにあるのである。戦争は、人間本来の個人的な感情を無視した次元に人間の存在を追いやる行為なのである。つまり、人間としてではなく鉄十字勲章を求める国家のマシーンとしてのみ存在する価値があるという観念を強制されているのである。戦争の悲劇とは、殺し合いの前に、まずは個人的感情が無視されることから始まるという部分を本作は見事に表現しているのである


■対極に位置する二人のドイツ軍人


ジェームズ・コバーン
夕陽のギャングたち』(1971)で極めつけの男のダンディズムを体現したジェームズ・コバーン。1970年代においてチャールズ・ブロンソンと並び称されるダンディ≠ネオヤジの代表だった。そして、この作品においてもコバーン節が炸裂している。

一方、シュトランスキーを演じるマクシミリアン・シェルの権威を笠にとって生きる男の憎憎しさ。シュトランスキーが副官とそのお付きの若い兵の同性愛の関係を叱責するシーンがあるが、実にシュトランスキーらしい人格の厭らしさが描かれているシーンである。自分も同性愛には賛成だという素振りを見せて、2人が同性愛であることをカミングアウトさせるのである。こんなシーンにも、この男の目的のためには手段を選ばないこすさが現れている。


■戦場の中で描かれるユーモア


一方、砲撃を受けている塹壕の中で、実にユニークなユーモアを展開される。
「またかよ!黙って屁をこくな」「奴を放り出したら、ロシア軍が毒ガスと間違えるぜ!ジュネーブ協定で禁止されたガスだぜ」と言って、猛撃の中シュタイナー含めみんなで大笑いする。そして、そいつに向かってシュタイナーが言う。「クリューガーお前も同罪だ。そのくさい体臭もジュネーブ協定違反だ」と。

実際の塹壕での兵士の感覚とはこういったものなのだろう。屁もこくし、密室に充満するし、それをネタに大笑いでもしないとやっていけないなっていうものである。
基本的に昔の人間の方が逆境を笑い飛ばせたのである。

「誰かが言っただろ?
戦争は、最高の文化的表現であるとか」シュタイナーの部下
「そう、あのバカは・・・フリードリッヒ・フォン・ベルンハルディ。クライゼヴィッツはこうだ
戦争は国家政策の姿を変えた延長であると・・・・そう姿を変えた延長だ・・・」シュタイナー

ベルンハルディとは、
「戦争がなければ人類は堕落する」「戦争を無くすよう努力することこそ、まさしく非人倫的なことと言わねばならないし、人間の尊厳におとる行為だと烙印を押されねばならない」と主張していた第一次世界大戦期のドイツの将軍である。クラウゼヴィッツは、『戦争論』を書いた有名なプロイセンの軍人である。そういった当時ドイツ軍において神とあがめられていた軍神をバカ呼ばわりしてせせら笑っているのである。

ちなみに本作が製作された1975年という年は、ベトナム戦争終結の年である。つまるところこの映画の反戦主張はそういった厭戦感に基づいているものでもあるのだ。
国家のため人類のため文化のためとか言ってるが、要するに俺達にとってはいい迷惑だよなと。


■映画史上に残る隠れた名シーン


戦争のはらわた
捕虜にしていた少年を逃がすシュタイナー。その時「シュタイナー」と初めて声を発する少年。そして、彼は大事にしていたハーモニカをシュタイナーに投げ渡すのである。この時の何ともいえなく良い2人の表情。戦争が激化し、どこに行っても死への危険はつきまとうが逃げてみろ!といったシュタイナーの気持ちと言葉は分からないが、そんなシュタイナーに感謝と尊敬の意味で、ハーモニカを投げ渡した少年。

それまで、シュタイナーは少年に対して、人道的な観点はあったが一個人としての感覚は全くなかった。しかし、この瞬間に年齢も国籍も全く違う2人は、理解しあえたのである。だからこそシュタイナーの笑みが苦笑いにも見える。
男と男の別れにはやはり笑顔が似合うのである。それが極限の状況であればあるほど・・・・

このハーモニカを投げ渡すシークエンスは間違いなく映画史上に残る名シーンである。

しかし・・・・シュタイナーの目の前で、ロシア兵によって少年は射殺されるのである。嗚咽をあげながら逃げるシュタイナー。と同時に堰を切ったかのように攻め寄せてくるロシア兵達。そして、大混戦の中、シュタイナーは砲撃にやられ舞台は病院へ。

このロシア少年兵役のスラヴコ・スティマッチは、なんと現在第一線で人気を誇る名優に成長しているのである。『アンダーグラウンド』(1995)『ライフ・イズ・ミラクル』(2004)の主役こそ彼である。


■ウィーンの美女 センタ・バーガー(1941− )


センタ・バーガー センタ・バーガー
『ちょっとご主人貸して』(1964、ジャック・レモン)、『ダンディ少佐』(1965、サム・ペキンパー監督、チャールトン・ヘストン、ジェームズ・コバーン)、『悪魔のようなあなた』(1967、アラン・ドロン)に出演。現在もドイツでは大御所女優として活躍している。最初の看護婦姿のときは何も感じなかったが、束ねていた髪を解き放つと・・・いい女は聖女にも悪女にもセクシーにもなれるとは彼女のことだろう。

「もしペキンパーが演出しないのだったら、私は出演しなかったわ。ペキンパーのためならノー・ギャラでもいいわ」センタ・バーガー


■女性にとって戦争が不幸な理由・・・


病院で看護婦と関係をもつシュタイナー。このシーンはロマンスではなく、ペキンパー監督の持論である女性とは、
「母なる大地であり、安息のひと時を提供してくれる存在」であるという扱いである。戦争という極限状態において最も顕著に見られるのが、男女関係の乱れっぷりである。

いや正確に言うと、人生を凱歌するために、来るべき不安と恐怖を追い払うために連れ添いを求めるという行為である。この映画の中の2人の関係は、恋愛ではなく、同じ境遇の同じくらい見栄えのいい2人が一時の連れ添いになっただけの話である。そして、シュタイナーは部下のいる戦地へ戻り、女性は新たな母性愛の対象を求めて仕事に戻るのである。

基本的にペキンパーは男女の心の微妙さを描くのが下手である。というよりそういう描写に対して全く関心がない。映画の中では、この女性は安定を求めている。つまり結婚を求めているが、シュタイナーは無言で去ってゆく。

ペキンパーは常々「俺はアウトローにシンパシーを感じるんだ」と語っている。戦争中に安定を求めてしまう非現実な女性と、戦争なのだから部下を見殺しに出来ず戦地に戻っていく男。戦争は、愛情よりももっと大切なものを生み出してしまうのである。そして、それは女性にとってすごく不幸なことなのである。男性が友情のために命を犠牲にする時代なのだから。

センタ・バーガーとの別れのシークエンスもとてもシンプルで見事な演出である。


■戦争に名誉欲という火に油が注がれる時


シュトランスキーは鉄十字勲章を貰うために、爆撃の最中、震え上がって壕の中から外に出れなかったにもかかわらず、外に出て前線指揮していたと、偽証してくれとシュタイナーに頼む。

「なぜ欲しがる?ただの鉄クズと同じだ。ほら」シュタイナーはそう言って、自分の持っている鉄十字勲章を投げつける。
「私には価値がある。故郷へ帰っても、鉄十字勲章なしでは、家族に合わせる顔がない」シュトランスキー

戦争とは戦場にいる兵士が行うのではなく、政治家と官僚が行うものである。そして、さらにそこに火に油を注ぐのが、戦争によって名誉欲を満たそうとする人間たちなのである。シュトランスキーは戦争によって名誉を得ようと臨んでいる。そして、そういう人間達の存在がより戦争という悲劇の炎を燃え上がらせていくのである。

シュトランスキーと話している時に爆撃機の爆撃が!そして、シュタイナーの小隊の一部がクリューガーを除いて全滅するのである。茫然自失しているクリューガーにここから逃げ出そうというシュタイナー。

「俺は3時間ずっとここにいた・・・独りで・・・もう独りになりたくない・・・独りになるのは二度といやだ」


■鉄十字勲章に振り回されている点においてはオマエら同じだ!


ブラント大佐(ジェームズ・メイソン)とキーゼル大尉(デビッド・ワーナー)が、シュトランスキーの勲章のための偽証工作を暴こうとする。日ごろからシュトランスキーを快く思っていない二人はここぞとばかりにシュトランスキーの副官を責め立て、シュタイナーを味方につけようとするも、シュタイナーは言う「彼と私の確執は個人的問題です」と。

それに対し、ブラントは言う「いいかね。私はいつも君への理解を示してきたつもりだ。だがその傲慢さには愛想がつきた」と。それに対してシュタイナーは答える「頼んだことなどない」と。そして、キーゼルがつぶやく「恩義を知らんのか?」。シュタイナー「何に恩義を感じればいいというのですか?大尉。寛容さに?あなた方が最も物分りのいい将校だから?やめてくれ。将校は好かん。シュトランスキー、トリービヒ(副官)鉄十字勲章に目の色を変える連中どもは」ブラント「気は確かなのか?」
シュタイナー「俺は、憎悪してるんだ!この制服と制服にまつわる全てを・・・心底から!」

シュタイナーにしてみれば、物分りのいいブラント大佐もキーゼル大尉も、塹壕の中で指揮を執っている点ではシュトランスキーとなんら変わりないのである。そんな大層な身分でシュトランスキーの件を責め立てているのだから彼からすれば笑止千万付き合いきれないのである。
名誉を求める将校と、そんな奴に名誉は与えられんと騒ぐ将校が、シュタイナーにとってはどっちも戦争中に鉄十字勲章という名誉に振り回されている点においては同じだと感じているのである。


■本物の戦争の中にいる気がする ―サム・ペキンパー


戦争のはらわた
そして、司令部より完全撤退の指令が出る。シュトランスキーは、ここぞとばかりにシュタイナー小隊に撤退を知らせず放置する。そして、大戦闘シーンが始まる。さすがにアクションを撮り慣れているペキンパーだけあって、戦場の迫力満点である。

工場の中にロシア軍の戦車T−34が突入してくるシーンで、仲間が戦車に向けて手榴弾を投げたら壁に当たって、シュタイナーの足元に転がり、「ジーザス・クライスト」と叫びながらシュタイナーが、さりげに戦車にその手榴弾を投げ返すシーンがある。こういうさりげないシーンを戦闘シーンに組み込んでいくところにペキンパーのセンスが感じられる。ちなみにこのT−34はユーゴスラビア軍から借用して使用した実物である。そして、撮影は旧ユーゴのポルロトスで行われた。さらにエキストラとしてユーゴスラビア軍600名の兵士が参加した。

ペキンパーは撮影中にこういったという。
「本物の戦争の中にいる気がする」と。


■ペキンパーは自分の映画文法を持っている


戦争のはらわた
それにしてもこの男ほど女性の入浴にこだわり続けた男もいないだろう。そうこの男とはサム・ペキンパーである。ほとんどどの映画でも女性が入浴するシーンが出てきて、どの映画の入浴シーンも独特なムードでいい感じである。

なんとか敵軍から逃れつつ本隊に戻ろうとしているシュタイナー小隊は、女性だけで編成されたロシア軍の後方支援部隊に遭遇する。制圧したが新兵のディーツが色仕掛けで油断している隙にロシア兵の娘に刺し殺されてしまう。

最近はクールに人殺しをする映画が流行っているが、そういう映画を作っている人たちは、涙を流しながらロシア人女性兵士が少年兵を刺し殺す姿を見てどう感じるのだろうか?ディーツは死に際に言うのである。
「あの娘を 責めないでね・・・」と。

そして、ペキンパーの映画によく出てくるシーンがまた出てくるのである。最後の戦いの前に仲間みんなで唄をくちづさむ姿。あの少年が渡してくれたハーモニカを伴奏にして・・・。


■さぁ、カタルシスの扉は開かれた!


戦争のはらわた 戦争のはらわた
ようやく味方の部隊にあと200メートルで合流できるというところで・・・シュトランスキーは副官のトリービヒに、味方だと確認できない振りをして全員殺せ!と言い残し去っていく。そして、味方陣地へと向かうシュタイナー小隊に向かってトリービヒは銃弾を浴びせ掛ける!

「クロス・オブ・アイアン」とは鉄の十字架も意味する。弾丸で形作られた十字架。人間は暴力に魅せられれているのであると豪語するペキンパー哲学がここでも見事に表現されている。シュタイナーが味方に裏切られ仲間がぼろきれのように殺されている姿を見たときから観客のカタルシスのスイッチは入る。そして、シュタイナーが殺された仲間の仇をサブマシンガンの閃光を十字に煌かせてとるシーンによって観客の感情の浄化(カタルシス)は達成されるのである。

ギリシア神話が暴力で彩られていたように人間は自分の中に暴力に対する矛盾を抱えて生きているものである。


■炸裂する十字を描く銃口


戦争のはらわた
なんとか味方陣まで生き残ったシュタイナーは、逃げようとするトリービヒを静止し、怒りの銃弾をこれでもかというほど浴びせ掛けるのである。そして、撤退しようとしていたシュトランスキーを追い詰める。

シュトランスキー「小隊はどうしたんだ!!」
しばらくの間を置いてシュタイナーは答える。「あんただ。シュトランスキー大尉。あんたが俺の小隊だ。」
そう言って機関銃を持たせる。シュトランスキー「よろしい。見せてやろうプロシアの魂を」
シュタイナー
「俺も見せてやる。鉄十字勲章の取り方を!」


■再装てんの仕方はぁぁ〜!


戦争のはらわた
銃弾の中を機関銃を撃ちながら走り抜けていくシュタイナー軍曹とシュトランスキー大尉。それに重ねあわせて流れる「ドイツ民謡小さなハンス=v(日本では蝶々〜の唱歌で歌われている)「立て!シュトランスキー!立て!」「再装てんの仕方は!」と玉が切れて叫ぶシュトランスキー。そして、シュタイナーの大笑いによって映画は幕を閉じる。

最後にテロップが流れる「諸君 あの男の敗北を喜ぶな 世界は立ち上がり奴を阻止した だが奴を生んだメス犬が また発情している」ベルトルト・ブレヒト


■極めてユニークなポイント その一


・世界最狂の大虐殺が行われた東部戦線を描く

第二次世界大戦中の1941年6月22日のドイツ軍進撃から始まるドイツとロシアの戦いを東部戦線と呼ぶ。この戦線が世界史上壮絶な地獄絵図であったことは数字だけでも伺える。

ドイツ兵戦死者数 約100万人  行方不明者数 約130万人  ドイツ市民死者数 約150万人
ソ連(ロシア)兵戦死者数 約175万人  行方不明者数 約1200万人  ソ連市民死者数 約700万人

そんな他の戦場が人道的に見えるほどの、捕虜が存在しない戦場をアメリカ人の監督が、全てのハリウッド映画において悪の権化と描かれていた第二次世界大戦中のドイツ軍を主役に映画を作ったのである。さらに面白いのはその敵は連合国ではなく非常にマイナーなロシア戦線のソ連軍なのである。この時点でこの映画の製作が可能になったのはかなり奇跡的だろう。ベトナム戦争が終結し疲れきったアメリカ国民にこの映画を提示するのだからペキンパーという男は自覚しているのだが、すごく嫌な男なのである。


■極めてユニークなポイント その二


・ペキンパーとマクシミリアン・シェルの融合

俳優の魅力を出す点においてペキンパーは、セルジオ・レオーネと並ぶ一流の腕を持っている監督である。ジェームズ・コバーンの男臭さと飄々とした独特の雰囲気。マクシミリアン・シェルの独りよがりさと弱さと魅力的なへたれぶり。(予断ではあるが、シェルが最後のシーンで敵を撃ち殺しながらすってん転ぶところなどは最高である。この絵画・文学・音楽を愛するブルジョア俳優が、ペキンパーのような荒くれ監督の映画に出た事自体が奇跡的だ。なぜならシェルはすごく仕事を選ぶ俳優なのである。)

おおよそ砂にまみれた芝居など似合いそうにないジェームズ・メイソンまでもが砂塵まみれになって死んでいく。そして、デビッド・ワーナーがまたまたやる気なしな芝居でいいムードをかもしだす。さらに男の世界の一輪の花として登場するセンタ・バーガーの熟した魅力が母なる大地を感じさせとてもよいのである。そして、ペキンパーとシェルの融合が、ジェームズ・コバーンでさえもドイツ兵に思わせてくれるのである。


■極めてユニークなポイント その三


・ペキンパーのナチスドイツに対するこだわりが爆発

原作者のウィリー・ハインリッヒと製作者のヴォルフ・C・ハルトヴィッヒは共に東部戦線の従軍経験をもつ人物である。(またまた予断ではあるが、このハルトヴィッヒはポルノの帝王であり、それで稼いだお金を本作品全てにつぎ込んだらしい)モーゼルKar98kライフル、MG42機関銃、MP40サブマシンガン、ルガーP08などドイツ軍の武器だけでもマニア垂涎ものである。

ジェームズ・コバーン「あの時代に関するいろいろな資料やフィルムを見た。まったく先入観無しにあの時代を正確に捉えるというのはとても難しいことだと思う。同じ映像を基に作った二本のドキュメンタリー映画を見たんだが、一本はナチス・ドイツがプロパガンダ用に作ったもの。もう一本は全く同じ映像を使ったロシアのプロパガンダ映画だった。同じショットがまったく違うイデオロギーによってそれぞれ違う編集をされると、どんなものになるかを見られたのは、とても貴重な経験になった。そのとき気がついたのは、それぞれ違うけれども嘘つきだということでは双方とも変わらないということだった。サムはそれがかなりのショックだったみたいだな」


■極めてユニークなポイント その四


・抜群のカット割りとスーパースローモーション

ワイルドバンチ』で創造した脅威のカット割りとスーパー・スローモーションの融合で戦争を見せた。そして、その映像は今見ても戦争の本質を捉えている力ある映像である。

戦争の本質、戦場が生み出す人間群像、軍隊の非個性さを見事にまであぶりだした作品である。この作品によって1980年代のベトナム戦争映画の切り口は導かれていったのである。

− 2007年4月3日(2007年10月27日修正) −


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