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ヒッチャー   THE HITCHER(1985・アメリカ)
■ジャンル: サスペンス
■収録時間: 97分

■スタッフ
監督 : ロバート・ハーモン
製作 : デイヴィッド・ボンビック / キップ・オーマン
製作総指揮: エドワード・S・フェルドマン
脚本 : エリック・レッド
撮影 : ジョン・シール
音楽 : マーク・アイシャム
美術 : デニス・ガスナー
編集 : フランク・J・ユリオステ

■キャスト
ルトガー・ハウアー(ジョン・ライダー)
C・トーマス・ハウエル(ジム・ハルジー)
ジェニファー・ジェイソン・リー(ナッシュ)
ヒッチャー
全てはルトガー・ハウアーで始まり、ルトガー・ハウアーで終わる。「出身地は?」と聞かれ「ディズニーランド」と真顔で答えるこの男に漂う危険な中年男性の色気。魅力的だが絶対こんなおやじに執拗に狙われたくないと本気で思わせてくれる理由なき犯行ぶり。そして、何よりもこの映画で謎なのは、ジョン・ライダー(ルトガー・ハウアー)の左手の薬指に結婚指輪がはめられているところである。

■あらすじ


テキサスの砂漠地帯を車の陸送するジム(C・トーマス・ハウエル)は、一人のヒッチハイカーを乗せた。男の名はジョン・ライダー(ルトガー・ハウアー)。無口な彼は突然「キミの前に拾ってくれた男の両脚を切り取った、そして、両腕もばらばらにした。そして、首もな。そして、君も同じ目に遭うことになる」と呟いた・・・。


■不条理劇の魅力が、コレにはある


ヒッチャー
「意味もなく追いかけてくる」という内容の共通点においては、スティーブン・スピルバーグ監督の『激突!』(1971)と似ているシチュエーションだが、『ヒッチャー』の魅力は、何と言っても無人のトラックではなく、家族連れだろうが警察だろうが無差別に殺す謎の殺人鬼ジョン・ライダーの存在である。グレイのよれよれのコートにくわえタバコがあれ程似合う男もなかなかいない。ジョン・ライダーを演じたルトガー・ハウアーの、静の動きの中で恐怖を漂わせる殺人鬼の芝居が、本作以降の映画の中の連続殺人犯像に与えた影響は計り知れない。

ヒッチャー ヒッチャー
謎のヒッチハイカー・ジョン・ライダー(ルトガー・ハウアー)を車に乗せたジム(C・トーマス・ハウエル)は、命を付け狙われる羽目になる。本作はまさに
「グレーゴル・ザムザがある朝、なにか不安な夢から目を覚ますと、自分がベッドで巨大な虫に変わっていることに気づいた」という奇妙な始まり方で有名なカフカの『変身』に代表される不条理劇そのものなのである。


■オレを止めてくれ


ヒッチャー
コイツが「ジョン・ライダー」と名乗るときの間が抜群に良い。こういう間一つで演技と言うものは現実味を帯びるものである。一方、ムダな間一つで演技と言うものは白けさせてもくれるものでもある。つまりは現実の生活でもそうだが、人間の説得力と言うものは、そのかなりの部分が会話における間の取り方に依存しているのである。

「何が望みなんだ!」とジム聞かれ、不気味に薄ら笑いを浮かべるジョン。そして言う。「あの男もそう聞いてきた。さっきの車の男だ。君の前に俺を拾った」そして、沈黙を置いて言う。「両脚を切り取った、そして、両腕もばらばらにした。そして、首もな。そして、君も同じ目に遭うことになる」・・・はっきり言って怖すぎる・・・

「何が望みなんだ?」と怯えるジムにたずねられ、「俺を止めてくれ」と応えるライダーの眼差し。この作品実に見事なまでに連続殺人犯の典型的な心理を描いているのである。その心理とは
「行為を楽しんでいる自分と、行為を止めてもらいたいと願う自分の葛藤である」

実は、このジョン・ライダーにはモデルがいる。その男は70年代にカリフォルニアで、ヒッチハイカーの少年達約40人をレイプ・拷問し殺害した
ウイリアム・G・ボーニンである。「ひとつ殺しをやるたびに、平気になっていった。捕まってなかったら、今でもやってるだろうな。止めることなんてできなかった」と彼は語っている。そしてもう1人のモデルがこの男である。



ジェラルド・シェイファー
 Gerard John Schaefer Jr(1946〜)


ジェラルド・シェイファー
ヒッチハイカー殺人で有名な連続殺人犯といえば、殺人鬼警官∞フロリダのセックス野獣≠ニいわれたこの男が筆頭に上がるだろう。映画『ヒッチャー』のアイデアは、スピルバーグの『激突!』とこの男の存在から得られたと考えられている。

1972年フロリダ在住の警官シェイファーは17歳と18歳の少女の誘拐・暴行容疑で逮捕された。ヒッチハイクをしていた2人の少女をこの保安官代理はピックアップした。その時制服姿だったシェイファーの姿にすっかり安心した2人だったが、やがて舗装もされていないような殺風景な道を通って雑木林へと・・・と同時に豹変したシェイファー。

「なあ、白人奴隷っていうのを知ってるか?」「世界中で売買されてるんだぜ」「こんな場所だと悲鳴も誰の耳にも届かないだろうな?」等とたっぷりと言葉でいたぶった挙句2人に手錠をかけ、ロープで縛り、さらに猿轡をはめた上で、木にロープで首をつらせた。しかし、シェイファーが、その場を離れた隙に、2人は決死の逃亡に成功する。

逮捕されたシェイファーは免職になるが、この26才の若者は、わずか1500ドルで保釈されてしまう。それから2ヵ月後、17歳と16歳の少女が行方不明になった。そして、その少女の母親が控えていたナンバー・プレートによってシェイファーは再逮捕される事となった。

少女たちの死体は、隣接州の砂浜に埋められていた。手足と頭を切断され、かなり腐敗もすすんではいたものの、歯型などから身元はすぐにわかった。それから、2人が12メートルもある大樹の枝から、ロープで首を吊られて死んだのだということも判明した。

捜査の結果、シェイファーは1966年に、20代の女性2人を殺害して以来、少なくとも20人以上を殺害したことがわかった。さらに、自宅のタンスの中に犯行の記憶を元に記された小説が保管されていた。内容は常人には理解できないほどのおぞましさだった。女の首を吊り、その断末魔の叫びを耳にして悦に浸る主人公。そして、死体姦といった内容である。

シェイファーはいわゆる性的不能者だったらしい。彼は死の瞬間の女性の肉体や断末魔、又は死体でしか性欲を満たす事が出来なかったらしい。さらに恐るべき事に彼によって殺害された女性の中には8歳の少女もいた。シェイファーは、終身刑を宣告され今も最も警備の厳しい刑務所に収容されている。しかし、最も恐るべき事実は、1989年に学生時代のガールフレンド・ソンドラ・ロンドンと共同執筆した『キラー・フィクション』という本がアメリカで出版された事だろう。


■引き裂かれる為だけに存在していたこのヒロイン


ヒッチャー ヒッチャー
ジェニファー・ジェイソン・リー(1962− )TVシリーズ『コンバット』で有名な俳優ビック・モローと元女優で『バレエ・カンパニー』等の脚本家・バーバラ・ターナーの間に生れる。1964年に両親が離婚するも、14歳の頃からアクターズ・スタジオで学ぶ。芸名の“ジェイソン”は両親の友人、
ジェイソン・ロバーズから貰ったという。1990年『マイアミ・ブルース』『ブルックリン最終出口』でNY批評家協会賞助演女優賞、1994年『ミセス・パーカー/ジャズエイジの華』で全米批評家協会賞主演女優賞、1995年『ジョージア』でNY批評家協会賞主演女優賞を受賞。ちなみにプライベートでの大親友はケビン・クラインの妻であり元女優フィビー・ケイツである。

かなりの演技派女優であるが、この女優のあつかいがまたこの映画を伝説的カルトにした理由のひとつだろう。主人公の唯一の味方になったのはいいが、主人公と愛し合う間もなく、ジョン・ライダーに拉致られる。そして、トラックとトラックに両手足を縛られ、ロシア風八つ裂きの処刑をされる(アメリカでは引き裂かれるシーンありのバージョンもあるという)のだから、救いようのなさ120%である。この救いがたさは、『セブン』においてのグィネス・パルトロウの扱い並みに、
ヒロインの存在定義を見事に裏切る行為そのものであった。


■二人の持ち味が生かされた熱演と名演


ヒッチャー
主人公のジムを演じるC・トーマス・ハウエル(1966− )は、有名なロデオ・スターの父クリス・ハウエルの息子である。1982年に『E.T.』でデビューし、翌年コッポラ監督の『アウトサイダー』の主役に抜擢される。1989年に『コマンドー』のレイ・ドーン・チョンと結婚するも1990年離婚。現在は再婚し3人の子に恵まれている。

ジョン・ライダーを演じるルトガー・ハウアー(1944− )は、オランダ出身の俳優で『ブレードランナー』(1982)『レディホーク』(1985)『バットマン・ビギンズ』(2005)などに出演する現在も活躍中の役者である。実際の彼は環境保護運動家としても有名であり、実はジョン・ライダーとは、逆の性質の人物なのである。


■ルトガー・ハウアーの存在感が本作を傑作の地位にまで引き上げた


本作品の監督ロバート・ハーモンは初監督だけあって、下手をすればただのバイオレンス・アクションにしかならないレベルの脚本の突飛さ、幼稚臭さが見え隠れするが、ルトガーの存在感溢れる見事な芝居によって、本作は傑作となりえたのである。
そう、ルトガーが、自らの名前をジョン・ライダーと名乗るあの瞬間から、観客は彼の魔法のまじないの虜になってしまうのである。

特にジョンが車から突き落とされた後に、転倒した体を起こしながらもにやりと笑うその仕草にはしびれると同時に、こいつは絶対獲物を逃さない執念深い男だなと気づかされる。こういう悪玉に、多くの観客はワクワクし虜になってしまうものである。「さあこいつはどういう風に終わりを迎えるのだろうか?」と。

昨今の大作映画が魅力あふれないものになっている点はまさにここにある。要するにその悪玉が終わりを迎えたところで「あっそう」という感覚しか持てない程度の魅力しかない悪玉が多いという事である。


■「私をなぜ殺そうとするのですか?」「自分で考えろ!」究極の不条理


ヒッチャー
映画史上緊張感あふれるシーンの一つに数えられるのが、レストランでジョンとジムが対峙するシーンである。ジョンから逃げ延びレストランで焦燥感たっぷりに座り込んでいるジムの向かいの席に、突如現れたジョンが座り込む。

すっかり怯えきっているジムが恐る恐る尋ねる「なぜ僕をつけまわす?」と・・・そして、その答えとしてジョンは、ジムの首根っこを掴み2枚のコインを彼の両目につけ「お前は利口だろ?自分で考えろ」と言って立ち去るのである。

一体なんなんだその答えは?・・・もう不条理そのものである。このセリフにこそ、この映画が観客を惹きつけてやまないポイントが隠されている。
「私をなぜ殺そうとするのですか?」の答えが「自分で考えろ」なのだから。つまり、究極に不条理な状況にジムは置かれているのである。だからこそ観客はもう目が離せないのである。


■彼によってジム青年はオトコになった


ヒッチャー ヒッチャー
最後の2人の戦い・・・頼りない青年だったジムが、皮肉にもジョンに執拗に付け回されることによっていっぱしのオトコの面構えになっていくのである。そんなジムとジョンが戦う荒野の決闘の美しいこと美しいこと。荒野の中でロングコートが似合うという意外な図式を定着させた男セルジオ・レオーネ。そんなヤツをも唸らせるルトガー・ハウアーの、ロングコートにショットガンという図式の格好良さ。

そして、そんなルトガーと最後互角に張り合ってしまうトーマスもまた素晴らしい。最後の彼の無常観漂う表情もなかなかよいが、スリラーヒロイン張りの見事な怯えまくり演技も見事なものだ。特に相手に同調を求めてへつらい笑う笑顔が最高によい。この男がいたからこそルトガーの演技も頂点に達することが出来たのである。それにしても当時のトーマスは、コリン・ファレルに似ている。

本作の撮影は『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)でアカデミ撮影賞を受賞したジョン・シールだけあって、特にルトガーを被写体にしたショットや、誰も助けてくれるものはいないというムードを漂わせる自然風景のショットなどが見事である。

− 2007年1月28日(2007年10月31日修正) −


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