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インサイド・マン   INSIDE MAN(2006・アメリカ)
■ジャンル: サスペンス
■収録時間: 128分

■スタッフ
監督 : スパイク・リー
製作 : ブライアン・グレイザー
脚本 : ラッセル・ジェウィルス / ドナ・バーウィック
撮影 : マシュー・リバティーク
音楽 : テレンス・ブランチャード

■キャスト
デンゼル・ワシントン(キース・フレイジャー)
クライヴ・オーウェン(ダルトン・ラッセル)
ジョディ・フォスター (マデリーン・ホワイト)
クリストファー・プラマー(アーサー・ケイス)
ウィレム・デフォー(ジョン・ダリウス)
キウェテル・イジョフォー(ビル・ミッチェル)
インサイド・マン
近年まれに見る想像力を膨らませてくれるサスペンス。現実とはかけ離れたゲーム性溢れる世界観が見事に構築されている魅力が堪能できる。こういった作品は破綻する方が多いのだが、本作は見事に破綻と成立の調和が取れている。その不安定な調和が最高に刺激的な作品。

■あらすじ


マンハッタン信託銀行が白昼堂々と銀行強盗される。50人もの人質を取って4人の犯人は立て篭もる。まず最初に人質の携帯電話を没収し、それから人質全てを犯人達と同じ服装に着替えさせる。頭脳明晰の犯人に対して、フレイジャー捜査官(デンゼル・ワシントン)が対応することになるが、この完全犯罪にはさらに複雑な要因が絡んでいた。


■文句なしに素晴らしい作品


インサイド・マン インサイド・マン
映画の本質を良く知った人たちが撮った近年まれに見る素晴らしい作品である。複雑なプロットはもちろんだが、内容の割には説明臭くなく、さらには映像のトリック及びヒントが隠され、役者達の人物背景も薄くないところが素晴らしい。

そして、端役にいたるまで魅力的に描けてる部分は明確に脚本の強さだろう。ウィレム・デフォーは全く持ち味を生かしきれていないが、それ以外の登場人物の持ち味は見事に生かされている。特に全編に包み込まれる緊張感の持続が素晴らしい。昨今の映画の中でこれだけの緊張感と最後のオチのカタルシスを表現できている作品も珍しいだろう。



■なによりもこの男の存在感


デンゼル・ワシントン(1954− )の存在感と安定感。映画をある程度見る人ならばこういう視点で見る人も多いだろう。この俳優は脚本で仕事を選ぶか否かである。例をあげると、マイケル・ケインやロバート・デ・ニーロは脚本を選ばないので作品の当たりはずれが大きいが、トム・ハンクスやラッセル・クロウは脚本を吟味して出演作を選ぶ傾向があるので、当たりが多い。デンゼル・ワシントンもその傾向が強い俳優である。

本作においてデンゼルの役柄は役柄的な目新しさは全くないが、本作は演技力よりもサスペンスとしての脚本力と役者陣の世界観の構築が問われる作品なのでそういった点に関しては全く問題なしである。さらにいうと相棒のキウェテル・イジョフォー(1974− )もかなりいい味を出している。



■デンゼルに負けない存在感


インサイド・マン インサイド・マン
マデリーン・ホワイトを演じるジョディ・フォスター(1962− )。後ろにまとめたブロンド・ヘアーにクールなビジネス・スーツのいかにも有能な出で立ちで、きりっと話を切り返す姿は有能な弁護士そのものである。出番はそれほど多くはないが、かなりの存在感である。

クライヴ・オーウェン
そして、主犯ダルトンを演じたクライヴ・オーウェン(1964− )が凄くよい。英国王立演劇アカデミー出身のイギリス人俳優だけあって、風格あふれる犯罪者像を描き出している。このキャスティングは明確に『ダイ・ハード』(1988)のアラン・リックマンの成功を意識してのことだろう。
基本的にヨーロッパ人を悪役にすると映画に緊張感が出るものである。

さらに『サウンド・オブ・ミュージック』(1965− )でナチスから逃亡するトラップ大佐を演じたクリストファー・プラマー(1927− )が、ナチスが奪った資産を運営して一流銀行を作り上げたと言うケイスを演じている。しかし、この人もう80歳になるのだが、今だ現役で活躍しているすごく元気な人だ。


■音楽を除いてオープニングから素晴らしい


ダルトンがいきなり刑務所らしき場所で登場する。このオープニングのセリフがポイントである。「私の名前はダルトン・ラッセルだ。二度と繰り返して言わないので注意して聞いていただきたい。私が誰かはもう言ったよな?ここは刑務所の独房のように見えるが、そうではない・・・」

しかし、オープニングのA・R・ラフマーンのインド音楽「チャイヤ・チャイヤ」(1998)はインド音楽好きな私からすると『ゴーストワールド』のような必然性は感じられなかった。正確にはインド映画音楽なのだが、音楽自体はインド音楽好きが喜ぶ女と男の掛け合いの音楽だが、映画の雰囲気を見事にぶち壊している。この選曲は犯人がインド人なら合うのだろうが、本作には明確にミスマッチである。

つまり、リオのカーニバルのサンバが流れているようなものである。



■時間は与えたぞ。有効に使わない方が悪い


やはり映画においての犯罪はこれだけ手際よく、クールじゃないと面白くない。
全てが計算づくで犯罪が行われていく描写は見るものに、緊張感と複雑な爽快感と、これはやばいぞという気持ちを沸き起こさせてくれる。銀行強盗モノは最初の10分である程度の勝敗が決定してしまうのである。

オーウェンはほとんどマスクで顔を隠しているので、出来るだけ顔が露出できるように脚本の修正を希望したと言う。当初スパイク・リーがデンゼルに主演を依頼したときどの役をやりたいか?と聞かれ、ダルトンは顔に覆面してるシーンが多いからとフレイジャー役を選んだと言う。

携帯電話を没収し、男性も女性も下着姿にし、全く犯人グループと同じジャンプスーツに覆面をつけさせるところが実にうまい。そして、人質をトランプのカードのようにシャッフルし、犯人グループが紛れ込んでいくと言う展開は見事としか言いようがない。これが最後の脱出劇に生かされるのである。

そして、人質にまぎれて正面玄関から堂々と警察に保護され、ダルトン以外の三人は脱出に成功する。一方、ダルトンは保管室に突貫工事で作り上げた隠し部屋で一週間過ごした上でダイヤモンドと秘密の書類を持ち出し堂々と脱出する。


■アドリブで演じられた尋問シーン


銀行強盗のシーンの合間合間に挿入される人質の尋問シーンが非常にユニークで、だんだんとフレイジャー捜査官とミッチェル捜査官のぶしつけな人質に対する対応からどうやら全員容疑者として疑われていることが分かってくるのである。この作品の脚本、若干の破綻は存在するが、実に見事に作り上げられている。

ところでインド人が解放されて外に出てきたときに、覆面を取ったその髭と浅黒い顔を見てSWATが
「おいっ、くそ!こいつアラブ人だぜ!」と勘違いするシーンがある。そして、「ターバンを返してくれ」を連呼するインド人。さすがこういった何気ない描写はスパイク・リー節炸裂である。


■この間の病院の件は失態だったよな?


このダリウス(ウィレム・デフォー)がフレイジャーに言うセリフは、デンゼル・ワシントンが病院に立て篭もった映画『ジョンQ』(2002)に掛けているのだが、こういった映画の中で映画を示唆するシーンが本作には多い。それはともかくとして、題名の『インサイド・マン』とは内通者の意味である。

ある意味内通者を把握するためには、複雑すぎて一回の鑑賞ではまず無理だろう。本作はある意味『SAW』と同じく劇場で見てもらいDVDでも見てもらう戦略的サスペンス映画である。特に怪しい共犯の可能性の人物をあげるときりがない。

1.携帯を隠し、ぼこぼこにされる支店長

2.第一通報者の人種差別的な巡査

の二人である。明確に共犯者なのは支店長だろう。彼は金庫の保管室の責任者であり、銀行の構造を全てダルトンに話しているはずである。最後にダルトンがダイヤの一部を、彼の手(手だけ写して)に渡すところなんてシーンがあればより本作は味わい深いものになっただろう。

そして、もう一人のこの巡査の「悪い連中は片付けてしまわないと。まずは人質の救出です。それに盗み聞きをする人間にも用心しないと」と言って、フレイジャーが犯人サイドが仕掛けた盗聴器の存在を教えているのである。この巡査のセリフが明確に彼の共犯性を浮き彫りにしているともいえる。


■フォルクスワーゲン・トゥアレグ


最後に犯人グループがダルトンを迎えに来るシーンで登場するのが、黒のトゥアレグである。この車はドイツのフォルクスワーゲン社が販売しているのだが、フォルクスワーゲンこそは、アドルフ・ヒトラーに創立された会社であり、強制収容所のユダヤ人の労働力を使って儲けていた会社である。そして、この車に乗っている第五の男こそ、右頬のほくろから人質だったユダヤ人ラビだと分かるのである。

ユダヤ人を苦しめたフォルクスワーゲンの車に乗るユダヤ人ラビの存在により本計画は彼が発端となっていることが分かる。インサイド・マンを含めると10人くらいの犯人グループが行った大犯罪計画だったのかもしれない。そういった部分をくどく説明せずに、ほどよくヒントを散りばめている程度で終わっているところが、本作を近年まれに見るクライム・アクションとして成立させている。

ちなみにトゥアレグに乗ったことがあるが、凄く快適な車であった。ブレーキングもかなり良く、さすがポルシェと共同開発しただけある車である。


■アマゾンでゲット出来るボールペン


インサイド・マン インサイド・マン
最後に何気にフレイジャーは、市長と会話するホワイトに30分間盗聴できるボールペンをあげたりしてるが、これもまたうっかりすると見逃す程度のさりげない描写である。そして、最後にフレイジャーは彼女の家でダルトンがすれ違いざまに入れたダイヤモンドをポケットから発見する。あのなんとも言えない笑顔。まさに秀逸なラストである。

大人が楽しめる作品。こういう作品こそサスペンスの醍醐味であり、頭の体操になる。
解答を与えてくれるサスペンスよりも解答を、人それぞれで導き出せるサスペンスのほうが魅力的である。


■スパイク・リーの真価


インサイド・マン インサイド・マン
本作品は39日間で撮影された。ちなみにジョディ・フォスターのシーンは3週間かけて撮られたと言う。当初はロン・ハワードが監督にあたる予定だったが、『シンデレラマン』の為に降板したと言う。ちなみにデンゼルとスパイク・リーは4度目の仕事である。

スパイク・リーといえばアメリカ社会におけるマイノリティーを描いた作風で有名な監督だが、そういった要素と娯楽性を本作において見事に絡め合わせたと言えるだろう。


− 2007年5月18日 −


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