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ジャッカルの日   THE DAY OF THE JACKAL(1973・イギリス/フランス)
■ジャンル: サスペンス
■収録時間: 142分

■スタッフ
監督 : フレッド・ジンネマン
製作 : ジョン・ウルフ
原作 : フレデリック・フォーサイス
脚本 : ケネス・ロス
撮影 : ジャン・トゥルニエ
音楽 : ジョルジュ・ドルリュー

■キャスト
エドワード・フォックス(ジャッカル)
ミシェル・ロンズデール(ルベル)
オルガ・ジョルジュ=ピコ(ドニーズ)
デルフィーヌ・セイリグ(マダム・モンパリエ)
デレク・ジャコビ(カロン)
ジャッカルの日
本当に存在する殺し屋とはこのような感じじゃないだろうか?とふとと想像力を刺激してくれる。中肉中背で、人当たりは良いが、絶えず鋭い目の光を伴い、人通りを歩いても決して目立たず、周りと同化する男。このジャッカルのリアリズムが、たった一人の人間がフランスの警察機構全てを翻弄し、執拗にミッションを成功させようとするその姿に神々しささえも感じさせてくれる不思議な作品である。
そして、見ているもののすべての心の中で、最後にド・ゴールが弾丸をかわすシーンで、軽く「チェッ」と舌鼓を打たせてしまうのである。

■あらすじ


ドゴール大統領暗殺に雇われた世界最高峰の殺し屋ジャッカル。誰も本名を知らず国籍不明のこの男が静かにそして、的確に獲物を捉えようとしている時、その動きを察知したフランスの警察によってフランス全土に包囲網が敷かれた。しかし、ジャッカルは変装を繰り返しつつも獲物に確実に近づく。そして、暗殺予定日のフランス解放記念日がやってきた。


■殺し屋と言えばジャッカル


ジャッカルの日
本作の魅力は、何と言ってもジャッカルの魅力に尽きるだろう。
静かにやってきて、そして、静かに仕事を終え去っていくと言う殺し屋像はここに確立されたといっても良い。特に、殺し屋としてジャッカルが見ているものを痺れさせるシーンは、風光明媚な草原の中で木にぶら下げたスイカを特殊な組み立て銃で試し撃ちするシーンだろう。

木にロープで組み立て銃を固定し、一回一回撃ちながら照準をアジャストしていき最後には、固定した銃を、解き放ち両手に持ち、水銀を使った炸薬弾でスイカを木っ端微塵に打ち砕くのである。ちなみに原作では20発近くを撃って照準をアジャストした上で、照準が狂わないようにつまみの部分を接着剤で固定までしているのである。


■ジャッカルを演じた男


ジャッカルの日
ジャッカル役を当初製作者のジョン・ウルフは、ロジャー・ムーアにさせたがったが、ジンネマンは「彼は有名すぎる上に、背が高すぎる。だから普通に道を歩いていても目立ちすぎる」と断り、さらにマイケル・ケインもジャッカル役を演じたいと強烈なアプローチをしてきたが、同じ理由で断る。

エドワード・フォックス(1937− )は王立演劇アカデミー出身の舞台俳優で、173pと高身長ではない。ジョゼフ・ロージーの『恋』(1971)で英国アカデミー助演男優賞を受賞して注目される。ジンネマンはこの『恋』を見て、彼こそジャッカルだろ叫んだと言う。ちなみに代表作は『ガンジー』(1982)『ネバーセイ・ネバーアゲイン』(1983)等である。


■ジャッカルを追いつめた男


ジャッカルの静かな存在感も勿論ではあるが、到底切れ者に見えないが、実はかなりの切れ者であるルベル警視を演じたミシェル・ロンズデール(1931− )の存在感も本作においてはかなり大きなウェイトを占めている。ロンズデールはフランスの名優で『007/ムーンレイカー』(1979)ではジェームズ・ボンドの敵役を演じている。他に代表作は『夜霧の恋人たち』(1968)『黒衣の花嫁』(1968)『好奇心』(1971)『インディアン・ソング』(1974)『日の名残り』(1993)『ミュンヘン』(2005)である。

このルベルがハトの糞のついたズボンで政府高官の前に引き出されて、気まずそうに登場するシーンが、ジャッカルのいつも小奇麗な身だしなみとの見事な対比を見せてくれているのである。
最初はこの人で大丈夫か?と思わせといて知らぬ間に、この人が相手だとジャッカルもまずいかも・・・と感じさせてくれるところなぞは素晴らしい演出力である。


■「計画は俺が立てる。連絡もしない。これがスイス銀行の口座だ」


ジャッカルの日
本作はジャッカルの内面を反映させる撮影技法は一切排除して撮影されている。そして、そういった乾いた感覚の映像が逆にジャッカルのプロフェッショナリズムに臨場感を与えているのである。

変装用の毛染めを買いに行った時の、店員の女性のたじたじした反応などはクールなジャッカルがいかに女性に魅力的に映っているかというのちにマダムを落とす説得力の付箋にもなっている。足下を見ようとしたイタリア人の偽造者を殺害するプロセスのクールさもしかりである。

クールで物腰の丁寧な男性はいつの時代もどこの国においてももてるものである。

最初の方に準備されていた何気ない道具(仕込み銃、偽造パスポート、毛染め等々)が、物語の終盤に活用されていく過程はまさにジグソーパズルやプラモデルである。全体像が出来上がっていくにつれてジャッカルの凄みがじわじわと分かっていくのである。
派手にプロとしての強さをアピールするよりも、じわじわと準備の周到さを気づかせてくれるプロのアピールの方がより説得力のあるものだ。

人間を納得させる事は、瞬間にではなく、着実にじわりとさせるべきである。最近のサスペンスにはこのじわじわとが実に欠けているのである。退屈を恐れるあまりに上っ面だけになってしまっているのである。



■2人の魅力的な女性たち


オルガ・ジョルジュ=ピコ オルガ・ジョルジュ=ピコ
フォーサイスの作品には、かならず魅力的な女性が登場する。そして、得てして使い捨てっぽい扱いがフォーサイスらしいところだが、本作においてもそういった扱いで2人の女性陣が登場する。

1人は内務省の高官に取り入りジャッカルに間接的に情報を流す女スパイ・ドニーズを演じたオルガ・ジョルジュ=ピコ(1944−1997)である。このドニーズという役柄は体を武器にして内部情報を聞き出す役割であるが、ある意味悲しいほどに使い捨てのムードが漂っていてよかった。ただ難点を言えば、なぜ彼女がこういった役割を担当することになったかを感情移入させてくれる背景をもう少し挿入してほしかったものである。それほどオルガの雰囲気ははかなげでぴったりとはまっていた。

ちなみにオルガは、在中国フランス大使とロシア人の母親の間に広東で生まれ、渡米しアクターズ・スタジオで演技の勉強をし、『さらば友よ』(1968)でデビューした女優である。最初の10年間は比較的恵まれていたが、だんだんと精神的に不安を抱えるようになり、1997年にパリで自殺した。

デルフィーヌ・セイリグ ジャッカルの日 デルフィーヌ・セイリグ
マダム・モンパリエを演じたのは日本ではあまり知られていない大女優・
デルフィーヌ・セイリグ(1932−1990)である。彼女は私にとって、シルバーナ・マンガーノと同じく氷の微笑を持ったこの世のものとは思えないほど美しい女優の1人である。

デルフォーヌははレバノン生まれのフランス人だが、アメリカに帰化している。本作においても洗練された髪型とその氷の美貌とすらりとした肢体とマダムという響きとシャネルの服にぐぐっときた人は多いだろう。『去年マリエンバートで』(1960)『ミュリエル』(1963・ヴェネチア映画祭女優賞受賞)『夜霧の恋人たち』(1968)『インディアン・ソング』(1974)が代表作である。

わずかな時間の出演であるが、この2人の女優の存在が、本作の一種の清涼水の役割を果たしていた。あくまでもくどくなく、それでいてあっさりとしすぎずが重要なのである。


イリイッチ・ラミレス・サンチェス(1949− )


イリイッチ・ラミレス・サンチェス
フォーサイスの描いたジャッカルのモデルは彼だと言われている。そのおかげでサンチェスはカルロス・ザ・ジャッカルと別名で呼ばれるようになった。現在はパリのサンテ刑務所にて服役中である。

サンチェスはベネズエラの裕福な家庭に生まれ、共産主義者だった弁護士である父親の影響で共産主義に傾倒し、14歳でベネズエラ共産党に入党した。その後キューバでの軍事訓練中に、目をかけられたKGB大佐ビクトル・シメノフによってソ連に留学する。1970年からジョージ・ハバッシュ率いるパレスチナ解放人民戦線(PFLP)に合流し、テロリストとしての道を歩むことになる。

■OPEC本部襲撃事件

1975年12月ウィーンのOPEC本部での閣僚会議中にカルロスとPFLPの仲間6名が襲撃し、サウジアラビアの石油相ザキ・ヤマニを初めとする総勢70名の各国代表を人質にした。死者4名を出すが、身代金2500万ドルがサウジとイラン政府により支払われる。用意された飛行機でアルジェリアに逃げるも、身代金は当局に没収される。この事件のリーダーとして、サンチェスは脚光をあびることになる。

1973年から1984年にかけて14件のテロ事件に関与し、世界中で83人を殺害、約100人を負傷させた。1994年8月14日に、スーダンの首都ハルツームでスーダン警察に拘束される。そして、無期懲役が確定した後、2004年に担当弁護士のイザベラと婚約している。

ちなみに映画の中でトルヒーヨ殺害にもジャッカルは関与したらしいと言われているが、このトルヒーヨとはドミニカ共和国の独裁者ラファエル・トルヒーヨ(1891−1961)のことである。31年間にわたり恐怖の独裁制を敷いていたが、CIAの工作により殺害された人であり当のサンチェスとは全く接点はない。


■アルファロメオ・スパイダー


ジャッカルの日
『エヴァの匂い』と同じく本作においても白のアルファロメオ・スパイダーが登場する。ジャッカルが運転するコンヴァーティブルの車がそれであるがとにかく格好いい。今のアルファロメオは賛否両論の多い車だが、この頃のスパイダーは別格だった。

他にも興味深い車として、ポルシェに良く似た黒塗りのシトロエンDS19サルーンが登場する。出目金みたいでお世辞にも格好いいとは思わない車ではあるが、それはそれで個性が出ていて良いのだろう。

映画の楽しみはこういった車や、女性ならばマダム・モンパリエのシャネルといった歴史の肖像を確認出来るところにもあるのである。


■殺し屋と言う極めて非現実的なものを現実的に描く


よく
ジャッカルはゴルゴ13に比べるとプロからはかけ離れていると言う意見が出てくるが、そういう人には映画と劇画の違いが理解できていないように思える。劇画は物事が極めてスムーズに進む媒体であり、映画は物事が極めてスムーズに進んでいかない媒体なのである。つまり劇画は非現実を常に描き、映画は現実を常に描こうとするものなのである(SFであろうとゾンビであろうと観客に信じ込ませようという力が働く)。

劇画の人物を実写化したとしてもそれはあくまでも劇画であるので、その面白さはおおよそ劇画には勝てない。だからこそジャッカルは、ゴルゴ13と比較されるべきではないのである。ゴルゴ13にはゴルゴ13の素晴らしさがあるように、
ジャッカルという殺し屋像の素晴らしいところは、この殺し屋という極めて非現実的な職業を現実的に描いた点にあるのである。


■松葉杖姿のジャッカル


ジャッカルの日 ジャッカルの日
ドゴールを暗殺するために、片足に松葉杖の変装で現れるジャッカルの見事さというよりも、このしつこさがかなりのわくわく感を伴わせる。そして、最後に失敗するのであるが、背の高いド・ゴールが、とても背の低い元兵士に接吻をしようと突然前かがみになったために失敗するという実にちょっとしたことが失敗の理由だった所が素晴らしく現実味があって良い。

ちなみにこの片足のシーンで、凄まじい角度でエドワード・フォックスの脚を折り曲げ縛り付けていたため、血流が止まり、医者は5分以上この態勢を続けてはいけないと忠告したと言う。しかし、リハーサルをしているときに手足を失い2つの松葉杖をついた老婆がエドワードに話しかけ、おかげで彼は15分以上も血流がとまった状態でおしゃべりを交わさざるをえなかったという。

本作は最後のオチも最高である。警察がつかんだ身元「チャールズ・カルスロープ」は実は赤の他人の身元だったと言うオチである。これでジャッカルは永遠の謎となったのである。こういう見事な終わらせ方はやはりフォーサイスの物語を作る能力の高さの賜物だろう。


■見事な緊張感の演出


ジンネマンは、時間的な緊張感を出すためにあえて、音楽をほとんど使用せずドキュメンタリー・タッチで淡々と撮影している。そして、人間の潜在能力に緊張感を植えつける時計≠フショットを31ショットも使用している。

こういった映像の緊張感に呼応する形で、ジャッカルのあの無駄な肉のついていない研ぎ澄まされた肉体と冷静な物腰からも凄まじい緊張感が発散されている。最近のやたらマッチョな体格よりもやはり殺し屋の体格はエドワード・フォックス体格だろう。この1人の男が、実に淡々とフランスの警察全員よりも狡猾に振り回すのであるから爽快でないわけがないのである。


■フレデリック・フォーサイス


本作はフォーサイスが、ビアフラ内戦の報道に関してBBCと喧嘩して失職し、机に向かって35日間で書き上げたデビュー作『ジャッカルの日』が映画化されたものである。今やこの本は各国諜報部門の推薦図書になっていると言う。

ちなみに本作のヘブライ語訳の本が1995年にラビン・イスラエル首相を暗殺したイガール・アミルの自宅にもおいてあったと言う。イスラエル当局はアミルはこの本を暗殺の参考にしたと語った。それくらい世界中に影響を与えた作品であり、その現実の登場人物を織り交ぜたどこからどこまで真実か分からない独特のタッチの政治サスペンス小説の誕生に世界中が驚嘆したと言う。


■情報量の多い本という媒体を映像化する難しさ


ジンネマンは、ジョン・ウルフに出版前の『ジャッカルの日』を読むことを勧められ、わずか半日で読みきり、その日にすぐに映画化を希望したと言う。ジンネマンは語る。
「ド・ゴールはすべての暗殺計画に生き残ったと言う結末を誰もが知っていたにもかかわらず、サスペンスがいっぱいだった。最後の瞬間まで、読者はどこで、どうやって襲撃が行われるのかしらされていない。スクリーンの上でも、同じように息をのむような期待感を保つことが出来るかが難問だった。すべてが冷たく合理的で、何の感情もない、巨大なパズルを一緒にするようなものだった」

シャンゼリゼの解放記念パレードの撮影は、実際のパレードを見守る数百万人の観光客の中で、フランス政府から特別の許可をもらい行われた。スーツの内側に手をやった男が、身体検査されるシーンも、見物客は本物の刑事による身体検査だと思ってみていたという。

本作の脚本を担当したケネス・ロスは翌年フォーサイスの『オデッサ・ファイル』の脚本も担当している。他に『ブラック・サンデー』(1977)も彼の脚本によるものである。当初はジャック・ニコルソンの出演も決定していたと言うがどんな役柄での出演予定だったのだろうか?

− 2007年5月30日 −


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