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アルゴ探検隊の大冒険   JASON AND THE ARGONAUTS(1963・イギリス)
■ジャンル: SF
■収録時間: 109分

■スタッフ
監督 : ドン・チャフィ
製作 : チャールズ・H・シニア / レイ・ハリーハウゼン
脚本 : ジャン・リード / ビヴァリー・クロス
撮影 : ウィルキー・クーパー
特撮 : レイ・ハリーハウゼン
音楽 : マリオ・ナシンベーネ / バーナード・ハーマン

■キャスト
トッド・アームストロング(イアソン)
オナー・ブラックマン(女神ヘラ)
ナンシー・コバック(メデイア)
ナイアル・マクギニス(ゼウス)
ナイジェル・グリーン(ヘラクレス)
アルゴ探検隊の大冒険
形だけのものに命を吹き込んでいく作業と、形のないものの形を作り上げていく作業。これがハリーハウゼンと昨今のCGクリエイターのしている事の違い。二人の少女がいて、人形に愛着を感じている姿と、妄想した何かに愛着を感じている姿の違い。前者は共存を育み、後者は共存を拒み、自己の世界に埋没していく。形あるものだからこそ制約は多い、そして、ハリーハウゼンはそんな制約の中で一つの芸術を創作した。交響曲の作曲家のような妥協した緻密さによって・・・

■あらすじ


父王が殺され王国を乗っ取られたイアソンは、テッサリアの王位を奪還し、王国に幸せをもたらす為に、“黄金の羊の毛皮”を求めて、選りすぐりの勇者たちと共に大型帆船「アルゴ号」で航海する。行く先々で様々な災難に見舞われながらも、女神ヘラ(オナー・ブラックマン)の助けにより、乗り越え進んでいく。そして、遂に“黄金の羊の毛皮”のあるコルキス王国に上陸するのだった。


■ダイナメーションはCGより創造的である


アルゴ探検隊の大冒険 アルゴ探検隊の大冒険
前人未踏の領域に達したSF映画の革命児レイ・ハリーハウゼン(1920− )。彼のダイナメーション方式(=ミニチュア模型を使用したストップモーション・アニメのコマ撮り映像と、役者が演技している実写の映像を巧みに組み合わせる方式)が、
まさにゼペット爺さんに作られたピノッキオが青い妖精によって生命の息吹きを手にしたように、形あるものに生命の息吹きを与えていく。

そして、
人間とは全く違う動きで見るものの深層心理に迫ってくる。そのカクカクした動きは、ハナから人間の動きに同化させようという意思はない。そんな人間とミニチュアの映像が組み合わさった瞬間に、全く違うモノ同士が調和された新たな世界観が生み出される。

ダイナメーションに対して
CGとは、その精密さゆえに絶えず人間との同化を計り、新しい世界観を生み出せず観ている者の心もそれほど躍動させない。ココに特撮の悲しい現実が垣間見える。ハリーハウゼンは一つの世界観を創造していた。しかし、CGクリエイターが生み出すものは、物語の巧みさによって一つの世界観を作り出すことはあっても、それ自体は決して一つの世界観を創造する力を持てないのである。


■予想できない動きを生み出したからこそ・・・


アルゴ探検隊の大冒険
だからこそハリーハウゼンの創造物は、あらゆる世代の人々の心を圧倒し、驚愕させ、恍惚とさせる。私がハリーハウゼンを始めて体験したのは中学二年生の時だった。1980年代のSFブームの中、この作品に触れたときの感動は、新しい世界観を感じ取った衝撃だった。

あの巨人像の動き。あのカクカウとした独特の動きに驚愕し、逃げ惑う男たち。山陰から出るぞ出るぞっと期待と不安を見事に煽る映像と心は同化していた。そして、最後の骸骨戦士たちの登場で完全にこのカクカクした世界観の虜になった。

「動きが変・・・だから素晴らしい」

新たな魅力は異質さを感じ取ることから更に加速していく。
CGが異質さの排除だとすると、ハリーハウゼンはその対極に位置している。彼の作り出す創造物こそ、現実では目にすることの出来ない不思議な動作をする創造物でひしめいているのである。そして、それが独特の魅力となって時代を超えた普遍性を保ち続ける原因となっている。


■キュートな女神・オナー・ブラックマン

アルゴ探検隊の大冒険 オナー・ブラックマン オナー・ブラックマン
実質的な主人公とも言えるオナー・ブラックマン(1927− )の魅力が、この作品のギリシア神話の世界観に観るものを違和感なく包み込んでくれる。ゼウスの妻ヘラを演じているのだが、主役のカップルよりもこのカップルを観ている方が興味深い。

この作品のオナーは一年後に作られた『007ゴールドフィンガー』で演じるボンドガールよりも遥かに美しい。そして、女神に相応しい母性愛溢れる芝居をしている。何気にこの作品の一つのツボはオナー様の全登場シーンかもしれない。
最後にイアソンとメディアが熱い抱擁を交わす姿を天界から眺めて切なげな表情を見せるオナーがとても可愛らしい。


■いまだこの巨人を超える巨人は現れない・・・


アルゴ探検隊の大冒険 アルゴ探検隊の大冒険
この作品の魅力的なシークエンスとして誰もが挙げるのが、青銅の巨人像タロスのシーンだろう。このタロスが動くまでの緊張感と、ニッと振り向きヘラクレスを睨みつけ立ち上がる一連の動作の素晴らしさ。そして、アルゴ探検隊一同を追いかける様。
格好良いという次元を突き抜けた観るものを感嘆させる℃pがそこにある。

カクカクと動く緊張感と、一個の役者のように喜怒哀楽を表現するその巧みさは、ハリーハウゼンがただの技術屋ではなく芸術的感性の持ち主であることを理解させられる。間違ってもこの作品を観た後にゴジラを観てはいけない。こういう言い方をするのは良くないのだが、その求める芸術性の領域には天と地の差がある。


■ポセイドンは海を往け!


アルゴ探検隊の大冒険 アルゴ探検隊の大冒険
そして、吠える岩≠フ間を通り抜けようとした時に半人半魚のポセイドンが登場しイアソン一行を助ける。このシーンの断崖絶壁の造型といいポセイドンの尾びれといい水しぶきといい素晴らしいほどの躍動感に溢れている。
特に無言で黙々と人間を助けるポセイドンの姿が何とも妙な重量感を生み出している。

ところでイアソンという主人公を演じている極めて個性に欠ける俳優トッド・アームストロング(1937−1992)はアメリカの俳優である。この作品以降数作で表舞台からは消えていった役者だが、20代に一緒に演技を勉強した仲間には、今をときめくダスティン・ホフマンやジーン・ハックマンがいる。


■この腰のくびれと胸の谷間が少年には眩しかった

ナンシー・コバック ナンシー・コバック ナンシー・コバック
吠える岩≠フ災難から救出される女神官メディアの妖艶さはハリーハウゼンによるものではない(勿論彼女は生身の人間である)。メディアを演じるのはナンシー・コバック(1935− )である。「奥さまは魔女」第一作にも出演してるキリっとしたいかにも上流階級の女性役が似合う人だが、この作品ではその抜群のプロポーションを生かした妖艶さで古代ギリシアの猥雑な雰囲気をかもし出してくれている。

特に全身金粉を塗りたくった姿で踊る姿は妖艶で素晴らしい。ちなみに彼女は1969年に世界的な音楽監督(イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団などで有名な)ズービン・メータと結婚している。

そんな彼女の美しさを更に映えさせるのが、スクリーンに焼き付けられた自然の情景である。それはイタリアにてオールロケで撮影されている。しかも登場する神殿は1998年に世界遺産に指定されたパエストゥムの神殿(紀元前600年ごろ建立)である。

子供の心を揺さぶる事に生涯を捧げたハリーハウゼンの徹底した特撮映画作りの姿勢がここにも窺える。舞台設定をミニチュアで手っ取り早く済ますのではなく、ホンモノの感性を子供に与えてあげる素晴らしさ。それ程本気の姿勢で作り上げられているからこそ子供の感性を敏感に揺さぶり、「ギリシア神話」に興味を持たせるきっかけになるといった大きな影響力を生み出せるのだろう。


■4ヶ月の時が濃縮された骸骨戦士の生命の息吹き


アルゴ探検隊の大冒険 アルゴ探検隊の大冒険
七つの首を持つ大竜ヒュドラの素晴らしい動きにただただ圧倒される。イアソンとのハラハラするような死闘よりも、その動きにただ驚嘆させられてしまう。
ハリーハウゼンの芸術性は子供を単純にハラハラさせ、大人を驚嘆させる所にある。

アルゴ探検隊の大冒険 アルゴ探検隊の大冒険
そして、退治されたヒュドラの牙を地面にパラッとまくと地面からむくむくと骸骨戦士たちが出てくる。一匹一匹と出てくるこの間・・・ダイナメーションの味わい深さとは実はこの微妙な間にあるのだった。
カクカク動く瞬間瞬間の間・・・間が逞しくさせる想像力と間が生み出すファンタジーの見事な調和。

この骸骨戦士のシーンの撮影だけに、ハリーハウゼンは4ヶ月の時を要したという。


■ハリーハウゼンは、芸術家として名を残す


アルゴ探検隊の大冒険
ただし、肝心の復讐劇は未消化に終わってしまう。しかし、ほとんどの観客はハリーハウゼンのダイナメーションてんこ盛りの展開に満足し、不満は感じないだろう。

100万ドルの製作費をかけて、本編(役者のパート)の撮影は1961年の冬に行われた。ハリーハウゼンはこの作品によって名実共にSF映画の先駆者となったが、当時は所詮子供やドライビングシアター向けのB級映画だと軽視されていた。しかし、この映画を観て育った世代が大人になり、ハリーハウゼンの芸術性が語られるようになった。

どんな芸術家もそうであるが、本当の評価を得るまでには時を必要とする。逆に言うと何十年間か多くの人々の心に残ったという実感によってのみ初めて真の芸術は昇華するのかもしれない。観てすぐこれは芸術だ!と言っている次元のものはただの芸術の模造品に過ぎないのかもしれない。

− 2007年11月27日 −


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