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仁義なき戦い 広島死闘篇   (1973・東映)
■ジャンル: ヤクザ
■収録時間: 100分

■スタッフ
監督 : 深作欣二
原作 : 飯干晃一
脚本 : 笠原和夫
撮影 : 吉田貞次
音楽 : 津島利章

■キャスト
菅原文太(広能昌三)
北大路欣也(山中正治)
千葉真一(大友勝利)
梶芽衣子(上原靖子)
成田三樹夫(松永弘)
小池朝雄(高梨国松)
仁義なき戦い 広島死闘篇
いかにして若者は利用され使い捨てられていくのか?現在の一般社会においても適応される「若者を使い捨てる」=「即戦力」のカラクリが明確に記された作品。山中正治の生き方に、今も多くの若者は涙している。我慢しろ、希望を持て、何とかしてやるから・・・多くの若者は、こうして使い捨てられ忘れ去られていくのである。

■あらすじ


終戦後の広島に3年の懲役を終えたばかりの一人の復員兵がいた。その男の名は山中正治(北大路欣也)。彼はふとしたきっかけで村岡組若衆の盃を受ける。やがて村岡の姪である靖子(梶芽衣子)と愛し合うことになるが、大友勝利(千葉真一)率いる愚連隊との抗争で3人殺害し、無期懲役で刑務所に服役することになる。靖子恋しさに脱獄した山中は狂犬のように暴走し、警官隊に追いつめられ、拳銃の筒先を口にふくみ自ら命を絶つのだった。


■死闘篇の存在があったからこそ・・・


仁義なき戦い 広島死闘篇
仁義なき戦い』シリーズの中でも一般的に最高傑作と謳われている広島死闘編。本作は、前作の大ヒットの影響下に即席で作られた作品であるにもかかわらず、前作の単なる続編に終わらず、さらなる『仁義なき戦い』シリーズの魅力を開拓していったことが素晴らしい。

特に今回初登場となる北大路欣也、千葉真一、成田三樹夫、小池朝雄の怪演すれすれの名演ぶりに注目してもらいたい。本作の存在があったからこそ『仁義なき戦い』はやくざ映画の一つの象徴になったともいえる。
この作品まではどの映画会社のやくざ映画も一作完結型であった。しかし、本作と前作の関係が『仁義なき戦い』という一大戦国絵巻を展開させるきっかけとなったのである。


■千葉真一の狂気


千葉真一
本作は北大路欣也の狂気も凄まじかったが、何よりも千葉真一が最強の狂気ぶりを誇示していた。この時代(1970年代)の千葉真一は、日本映画史上希に見る迫力に満ちた役者だった。日本でこの当時狂犬を演じられる名優は、間違いなく彼と菅原文太と渡哲也だろう。しかも、千葉真一は、リンチ・シーンの立ち回りが実にうまいのである。

基本が空手の人間が立ち回りをするとやけにぎこちなくなりがちなのだが、千葉真一の場合は素で路上の喧嘩が強そうな残虐な立ち回りが出来るのである。本作においての彼の狂人オーラが存在したからこそ、やぶれかぶれの北大路欣也の狂気ぶりも浮かなかったのである。

もし今北大路欣也のような芝居をする俳優がいると他の俳優はそれについていけないがゆえに、逆に北大路がかなりオーバーアクトな浮いた存在に見えてくるだろう。


■短気は損気


本作の全編を貫いているのは
「短気は損気」なのである。仁義なきシリーズを通じて短気な人間の末路は全て惨めな末路に終わっている。さらに言うと、短気な男に惚れる女も感情的で直感的な女性が多いということである。きわめて若い時期に、あまりにも不幸が重なりすぎると女性は、幸せよりも不幸さを求めて人生を突っ走っていく傾向がある。幸せになりたいが、幸せはすごく不安。だけど、不幸の中に身をおいたらもうこれ以上悪くなることはないので、すごく安心だというのである。だからこそ、他人の善意を裏切るような行為を平気で行える人もいるのである。

村岡組に入ることになった、山中正治(北大路欣也)に「ええ男になれよ」と金時計をさらりとやる組長。その行為に感動する山中に対して村岡組若頭松永(成田三樹夫)は、「ええもんもろたの。これスイス製の何十万もするもんじゃい。うちのおやっさんはの、ああいう腹の太いお方よ。おぅっ」と肩をぽんっと叩いて去っていく。
まさに一つの企業に1人は欲しい逸材だ。やる気のある人材に餌を与えて、餌以上の仕事をさせる。いつの時代も若者を動かすためにはこの三つのみが大きな力を果たすのである。金と女と期待されていると感じさせること。


■梶芽衣子の普遍的美貌


梶芽衣子
梶芽衣子の役柄である上原靖子は、あまり魅力的ではない。
深作監督作品全般的に言えることは女性の描き方が恐ろしく下手だということある。感情の動機付けが陳腐なので、登場する女性は全てうすっぺらに見えてしまうのである。靖子に関しても、未亡人でただ寂しいから男の体を求め、その相手が偶然山中だったというわけであるが、そういった部分の描き方が、陳腐なのでどうしても本作での山中と靖子の恋愛の部分は、中だるみになってしまうのである。しかし、そんな中でも魅力を発散する梶芽衣子という女優は、すごいオーラを放つ女優である。

特にあの瞳が素晴らしい。彼女のルックスは、一つの日本女性の美人像を作り上げたといってもしかりである。今現在、10代の若い女性に人気のあるモデルのルックスは、梶芽衣子的なのである。つまり梶芽衣子こそは、現代日本の10代に最も影響を与えている女性なのである。


■女性が酔うことの意味


酔った美女と2人っきりになると男性とはどういう反応を示すものだろう。私の経験からも、山中のようになるのが、ごく自然の傾向だろう。
女性にとって酔った姿を男性の前でさらけ出す行為は、求愛行為なのである。基本的に普段がきりっとしていればしている女性ほどである。

しかし、男性諸君、その求愛行為を拒否することは不可能であるが、
女性から求愛した恋愛ほど、うまくいかない恋愛もないということは気に留めておいてもらいたい。なぜならそういった女性は、感情が変化しやすいからである。恋愛とは、基本的に男性から求愛したほうが、自然であり、うまくいく場合の方が多いのである。

もっとも恋愛に安定を求めること自体が馬鹿げたことかもしれないのだが・・・


■手持ちカメラが人間を虫けらへと化す


仁義なき戦い 広島死闘篇
山中の人生を決定づける一発!和田を射殺したことにより山中の人生は決定づけられてしまった。
仁義なき戦いの怖さは、一人の若者が、チンピラになり、人殺しを経験し、その世界で一人前になっていく。または仕返しに殺害される紙一重の姿を懸命に描いている所にある。

だからこそ人を殺すシーンがやたらと壮絶で悲哀に満ちているのである。
虫けらのように人を殺すその人もまた虫けら。だからこそ手持ちカメラでの映像なのである。臨場感よりも、むしろリアルなスケール感のない映像を求めての手持ちカメラなのである。

殺害した後の北大路欣也の芝居がまた素晴らしい。
気分の高まりを落ち着かせるために口笛を吹いて、そして、にやりと笑って、思い出したかのようにダッシュで逃げサル!そうこの逃げサルがポイントである。


■大友勝利語録


大友は語る!
「いうなればあいつらはお○○の汁でメシ食うとるんど。わしらうまいもの食うての。マブイスケ抱くために生まれてきとんじゃないの」。広島弁はむちゃくちゃだが、勢いで突っ走る突っ走る。純粋に欲望のためだけに生きている男の魅力と怖さを演じさせたらこの男が一番である。

果ては
「あんとなもんの風下にたってよ。せんずりこいて仁義にくびくくっとれって言うんか〜」とぶちぎれる次第である。そして、大友一派が村岡組を襲撃するシーンが凄まじい。千葉真一・八名信夫・志賀勝・名和宏・北大路欣也・山城新吾・成田三樹夫・川谷拓三が、建物の一階二階を走り回り転げまわるのである。かなり必見の豪華さである!


■前田吟 仁義なき戦いに現る!


仁義なき戦い 広島死闘篇
菅原文太が物語の35分も経った所で本格的に登場する。そして、広能昌三の舎弟・島田幸一役で前田吟が出てくる。この時すでに『男はつらいよ』シリーズのひろし役で、寅さんの妹さくらの夫を演じている人が、なんと最も似合わなさそうなこのシリーズに登場したのだ。

前田吟役者人生最初で最後の本格的やくざ役ではないか?実入りの悪い広能組。焼肉を親分の昌三に食べさせるために、近所の犬を殺して焼肉の肉と偽る島田達。「おまえらも食わんか」と言われて戸惑う。犬の肉を食わされる羽目になる昌三が緊張感あふれるこの映画の中でかなり笑える。しかし、こんなシーンでも文太兄いはしぶい!


■出会いと別れの繰り返し


仁義なき戦い 広島死闘篇
原爆ドームをバックにくわえ煙草にやくざファッションばりばりの北大路と着物姿の梶。
これはやばすぎるショットだろう。北大路が、ワインレッドのシャツの袖を折り曲げているところが何ともいかついところである。2人は何年かぶりに再会し、深い恋に落ちるのである。

みんなが人生の中で経験するであろう昔別れた相手との再会・・・そして、再び恋に落ちる・・・これもまた人生である。出会いと、別れの繰り返しほど二人の歴史の中で美しいものはないのである。
出会いと別れを繰り返せる相手こそ、本当の意味での運命の人なのかもしれない。

しかし、この幸せもつかの間・・・山中は、大友の組員を3人殺害し、無期懲役になるのである。そして、組織からも見捨てられる。脱獄し暴走する山中に対して、もう1人暴走する若者がいた。


■ボロくずの中からの栄光


仁義なき戦い 広島死闘篇 仁義なき戦い 広島死闘篇
大友勝利である。組長である父からも勘当され暴走する。村岡組のチンピラ(川谷拓三)を捕らえて、リンチするシーンが凄まじい。虐待する大友=千葉も、虐待されるチンピラ=川谷も、大友の仲間で虐待のえげつなさにぞっとする中原=室田日出男も全てがすごくいい。

ややリアルすぎる嫌いもあるが・・・(私も高校時代に始めてみたときはぞっとした)何よりもこういったシーンのおかげで川谷拓三が輝くきっかけをつかめただけでも価値のあるシーンなのである。
わずか数分のシーンで輝くことが出来るという多くの若い役者に勇気と希望を与えたという点においては、このシーンの何の救いもないところさえもが、神々しく輝いていくのである。

映画というものは、映像の中だけではなく、その作業の過程からも評価されてしかるべきものなのである。



■追いつめられる若者たち!


北大路欣也
結局山中も警察に追い詰められ、包囲され空き家にて、口に拳銃をくわえて自殺するのである。虫けらのように・・・北大路欣也の最後のくだりの芝居は最高に追い詰められている男のけだるさとぞっとするような孤独感に満ち溢れていて素晴らしい。

かなりリアルである。こういう状況なら自殺することが楽だろうと思える状況を見事に描いたやくざ映画である。
組織の中からも、社会の中からもつま弾きにされた悲しい男の物語としても見ることが出来る点がこの作品の魅力だろう。そして、最後の菅原文太もまたよい。男から哀愁が取り除かれたら何の価値が残るのだろうか?

21世紀は人生の中から孤独を取り除いていくことが重要と考えている時代である。携帯電話の進化・パソコン・IPODなどなど。しかし、孤独を取り除くことなど出来ない。人間は便利になれば便利になるほど、孤独をより身近に感じ、疎外感をより身近に感じることになるのだ。便利さは時間の浪費を生み出している。

しかし、かつては便利さが時間の効率性を生み出すものと考えられていた。情報量が豊富になり時間の浪費がさらに加速している。そして、それが判断力の低下につながっている。現代社会は国家が政策決定するために会議を開いて協議するレベルの情報量を1人の頭の中で思い悩み、決定しようとしている誠に、不可能な可能性を追い求めている時代なのである。そこに、現代社会に氾濫する精神病理学の構造が伺えるのではないだろうか?

この映画の主人公は貴方なのである。そして、あなたも山中正治のように、社会のサイドコーナーへと他人に利用され、人生に翻弄され追い詰められてはしないだろうか?山中はすごく真面目な人だと私は思う。

− 2007年2月21日 −


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