HOME
■サイト内検索

■洋画
 □カタカナ順
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 □クラシック
 □ドラマ
 □コメディ
 □サスペンス
 □アクション
 □ポリス
 □スパイ
 □犯罪
 □カー
 □ミュージカル
 □史劇
 □文芸
 □戦争
 □西部劇
 □アドベンチャー
 □パニック
 □ギャング、マフィア
 □SF
 □ホラー
 □スポーツ
 □香港
 □ドキュメント
 □アニメ
 □エロス
 □B級
 □アカデミー賞
 □カンヌ映画祭
 □ヴェネチア映画祭



■邦画
 □ひらがな順
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 □名作
 □ドラマ
 □喜劇
 □サスペンス
 □アクション
 □刑事
 □時代劇
 □戦争
 □文学
 □パニック
 □東映ヤクザ
 □ギャング、ヤクザ
 □特撮
 □怪奇
 □ドキュメント
 □アニメ
 □エロス
 □B級
 □海外映画祭受賞
情婦   WITNESS FOR THE PROSECUTION(1957・アメリカ)

■ジャンル: サスペンス
■収録時間: 117分

■スタッフ
監督 : ビリー・ワイルダー
製作 : アーサー・ホーンブロウ・Jr
原作 : アガサ・クリスティ「検察側の証人」
脚本 : ビリー・ワイルダー / ハリー・カーニッツ
撮影 : ラッセル・ハーラン
音楽 : マティ・マルネック / ラルフ・アーサー・ロバーツ
衣装 : イーディス・ヘッド

■キャスト
チャールズ・ロートン(ウィルフリッド卿)
マレーネ・ディートリッヒ(クリスティーネ・ヴォール)
タイロン・パワー(レナード・ヴォール)
エルザ・ランチェスター(看護婦ミス・プリムソール)
情婦
ロートンとランチェスターによる偉大なる芸術的芝居の作り出す心地よい空間が、芝居の持つ魔力を堪能させてくれる。そして、そんな芝居の魔力といった次元を超えたマレーネ・ディートリッヒという芸術家の存在を堪能させてくれる名作でもある。56歳にしてこれほどのエロスと情念を感じさせてくれる女性はなかなかいないはずである。

■あらすじ


大富豪の未亡人の殺害容疑で逮捕されたレナード(タイロン・パワー)の裁判が、法廷で開かれることになった。そして、検察側の証人になんとレナード夫人クリスティーネ(マレーネ・ディートリッヒ)が立つことになった。夫を落としいれようとする夫人の真意は?


■あの絡み合う2人のスチール写真の色気


情婦 情婦
本作品はとにかく芸達者オールスター作品である。チャールズ・ロートンを筆頭に、エルザ・ランチェスター、タイロン・パワー、そしてマレーネ・ディートリッヒと、この4人の存在感が、このサスペンス作品をただのどんでん返しものの領域から、超ハイセンスな大人の娯楽作品へと昇華させたのである。21世紀に生きる我々こそがこの白黒の世界観を堪能してみるべきなのである。映像の読解術を養ってくれる作品であり、これを見れば昨今の映画の
上辺だけのスピード感、展開の速さが生み出す弊害がはっきり理解できるのである。

この作品のスチール写真の数々は実に素晴らしい。とにかく56歳に見えないほどの美貌と脚線美をさらけ出すこの欲情を煽るマレーネの肢体が実に良いのである。私が中学生の時にこのスチール写真を見た時、マレーネの美脚に見とれてしまいドキドキした。56歳にして10代の青年の欲望を駆り立てる肢体・・・これこそが真の100万ドルの脚線美なのだろう。今時のレースクィーンや雑誌モデルが1億円の脚線美という言葉を使い古している現在においてはただただ性欲の消耗品か憧れの消耗品に過ぎないフレーズになりさがったが、マレーネの100万ドルの脚線美は、そういったレベルを遥かに超越したものなのである。まさに
マレーネの美脚は地球上の男性の心を揺るがすコンパスなのである。


■この2人の息が合うのもなるほど納得!


エルザ・ランチェスター(1902−1986)とチャールズ・ロートン(1899−1962)
病気療養明けの敏腕弁護士と口うるさい看護婦という奇妙なコンビ。実生活でも1929年に結婚してからロートンが亡くなるまで夫婦であった。ロートンが同性愛者だったので子供はいない。(真ん中の写真は1929年撮影)ランチェスターはこの役でアカデミー助演女優賞にノミネートされ、見事ゴールデン・グローブ助演女優賞を受賞した。ロートンもこの役でアカデミー主演男優賞にノミネートされた。

プリムソール「まあ、すてきですこと。法学院でお仕事するなんて弁護士さんは幸せね。昔虫垂炎の弁護士を看護して婚約にこぎ着けたけど、合併症で急死したわ」
ウィルフリッド卿「それこそ幸せな弁護士だ」

もうこの2人の会話から実際の夫婦の芝居の上での奇妙な役柄関係に興味惹かれてしまうのである。むすっとした皮肉たっぷりの老人と、元気溌溂の老婦人の取り合わせの妙なのである。


■老いから生まれる天然の輝き


ビリー・ワイルダーという監督は小道具の使い方が実に上手である。(葉巻、片めがね、帽子、錠剤、魔法瓶)本作においての、手動で階段を昇降する椅子の効果はその最もたるもので、小道具を通じて観客に登場人物に対する親しみをわかせるのである。実に嬉しそうに椅子を操作する無邪気な姿からこの老人の子供のような無邪気な気質を見え隠れさせるのである。
一流の映画監督は、必ず老齢の俳優の輝きを活かすものなのである。若さから生まれる自然の輝きよりも、老いから生まれる天然に磨きこまれた輝きを好むものなのである。そして、その最たる例こそが、本作品のマレーネ・ディートリッヒであるのだ。


マレーネ・ディートリッヒ(1901−1992)

マレーネ・ディートリッヒ マレーネ・ディートリッヒ
100万ドルの脚線美と大ヒット曲『リリー・マルレーン』
ドイツの裕福な中流貴族のもとに生まれる。幼少の頃よりバイオリンやピアノを学び、カントとゲーテとリルケを崇拝していた。18歳の時にプロのバイオニストを目指してベルリン国立音楽学校に入学するも左手首を痛めて断念。やがて演劇に興味を持つようになり、1930年にジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督に見出されて『嘆きの天使』の中学教師を堕落させる踊り子ローラ=ローラ役に大抜擢される。

スタンバーグは「マレーネは私の創造物である」といってはばからず、退廃的なムードを出すには頬をくぼませた方がいいと奥歯を抜かせたり、眉を細長く書かせたりして退廃的なイメージを作り上げた。国際的な名声を獲得したマレーネは、1930年に『モロッコ』でハリウッド・デビューする。引き続きスタンバーグと組んで『間諜X27』(1931)、『ブロンド・ヴィナス』(1932)、『上海特急』(1932)などに出演するが、スタンバーグの映画は次第に魅力を失い、1935年の『西班牙狂想曲』がスペイン政府の圧力を受けて興行的に失敗し、両者の人気には翳りが見えた。

そして、『I Loved a Soldier』がマレーネのわがままから撮影途中で製作中止となり、マレーネはヨーロッパに渡ってイギリス映画『鎧なき騎士』(1937)に出演。やがて『嘆きの天使』がお気に入り映画の一本だったアドルフ・ヒトラーから、ドイツに戻って親独映画への出演を要請されるが、マレーネはこの申し出を拒否してアメリカに戻り、1939年にはアメリカの市民権を取得した。(この事によりマレーネの作品はナチス・ドイツでは上映禁止になる)

1943年からは米軍兵士慰問のためヨーロッパを巡り、反ナチ運動にも積極的に参加。戦後、兵士慰問の功績が認められてアメリカ政府から自由勲章が、フランス政府からレジョン・ドヌール勲章が授与された。兵士慰問のためフランスに滞在していたマレーネは『狂恋』(1947)に出演。共演のジャン・ギャバンと恋に落ちるが、ギャバンから結婚を迫られると彼を捨ててハリウッドに戻った。

1948年にはビリー・ワイルダー監督の恋愛コメディ『異国の出来事』に出演し、以降人気も普遍のものとなる。50年〜60年代にかけてユル・ブリナー、フランク・シナトラ、バート・バカラック、アメリカ大統領ジョン・F・ケネディと浮名を流した。ちなみにマレーネはバイセクシャルであった。1970年と1974年には日本でもコンサートを行う。映画出演は1978年の『ジャスト・ア・ジゴロ』へのカメオ出演が最後となり、翌1979年にはコンサート中に足を骨折。歌手としての活動の休止を余儀されただけでなく、寝たきりの生活を強いられたマレーネは、外界との接触を断ち、痛みを抑えるために酒と麻薬に溺れた。引退後はエッセイ『ディートリッヒのABC』や自伝『My Life Story』を発表。 92年5月6日に老衰で亡くなり、葬儀はパリで盛大に行われた。


■タイロン・パワーよ永遠に


「私の歩く地面さえも彼は崇拝しているわ」
とクールに言い放つクリスティーネ(マレーネ・ディートリッヒ)まさに100万ドルの脚線美を露骨に見せ付けずにその象徴を見事に利用したセリフである。

レナード(タイロン・パワー)の回想シーンで、マレーネの歌声と脚線美の一端が伺えるが、ほんの一瞬である。このシーンにおいて、実に巧妙に監督は2者の性格の本質を描ききっているのである。レナードの要領のよさとプレイボーイぶり。一方のクリスティーネの情欲の強さと献身さを。そして、この数分の過去の回想こそが今後の物語の急転の伏線になっているのである。

溺れるものはカミソリの刃をもつかむ」ウィルフリッド卿

ちなみに本作がタイロン・パワー(1914−1958)の遺作となってしまった。ジーナ・ロロブリジータと共演の次作『ソロモンとシバの女王』にてスペインでジョージ・サンダースとの乱闘シーンの撮影直後に、心臓発作で急死した。すでに彼のパートは75%取り終えていたが、ユル・ブリナーを代役に撮影された。完成した作品中のロングショットなどでタイロン・パワー・バージョンが使用されている。生涯3度の結婚をし、最初の妻はフランスの名女優アナベラ(1910−1996『ナポレオン』『巴里祭』1939年結婚。1948年離婚)であった。代表作は『長い灰色の線』(1954)『愛情物語』(1956)『陽はまた昇る』(1957)。

当初レナード役には、ウィリアム・ホールデンの予定だったが、スケジュールの都合で実現しなかった。脚本の第一稿を読んでタイロン・パワーは出演を辞退していた。ジーン・ケリーやカーク・ダグラス、グレン・フォード、ジャック・レモンから、無名時代のロジャー・ムーアなどが候補に挙がったが、結局はタイロン・パワーが演じることになった。


■キーポイントは、2人の女性


情婦 情婦
この2人の女性が本作のキーポイントである。マレーネという女優のクールさが強調されればされる程、髪を掻き上げ、情熱的に画面に迫り、変貌するその瞬間も限りなく光り輝くのである。マレーネがスクリーン上で、最も輝く瞬間は魔性オーラを発散しているときなのである。そして、男性は
マレーネの彫刻のような美貌が、一瞬にして醜く崩れる瞬間により彼女の虜になってしまうのである。

「悪夢にうなされたいかい?ここにキスをしたいの?お馬鹿さん」


クリスティーネ役をマレーネ・ディートリッヒは、映画化が決定したときから熱望していたが、エヴァ・ガードナーやリタ・ヘイワースにも出演交渉がなされていたという。最終的には監督のビリー・ワイルダーの要望によりディートリッヒに決定した。


■私の最大の目標は完璧をめざすこと


「私の最大の長所は忍耐強いこと。私の最大の目標は完璧をめざすこと」とディートリッヒ自身は語る。そして、ビリー・ワイルダーは彼女のことを「現実の彼女は料理をしたり人の世話を焼いたりする事が好きな、看護婦もしくは主婦タイプの女性である」「美しい脚を持つマザー・テレサ」だと語っている。

ピーター・ボグダノヴィッチがディートリッヒに「あなたは多くの偉大な監督の元で仕事をしてこられました・・・」と質問したとき
「ノー、ノー、私が仕事をした偉大な監督は二人だけだわ。つまり、フォン・スタンバーグとワイルダーのふたりよ」と答えた。


■どんでん返しで騙される喜び


情婦 情婦 マレーネ・ディートリッヒ
検察側の証人として、夫に不利な証言をする妻&ィ語は二転三転し、レナードは無罪を勝ち取る。その時夫を貶めようとしていたクリスティーネが夫の無罪判決を聞きホッとする表情を浮かべ立ち去る姿をウィルフリッド卿は見逃さなかった。そして、告白される驚愕の真実。
一流のサスペンスの醍醐味は、とてつもない芸達者な役者が、さらに上をいく芝居によって見事に騙される瞬間にあるのである。この作品でチャールズ・ロートンがディートリッヒとパワーに痛快にも騙された事実に説得力を持たせたからこそ観客も心の底から騙されたと満足できるのである。

最近どんでん返しを売りにする映画が増えているが、どんでん返しとは魅力的な登場人物達(芸達者な役者達)によるそのプロセスが最も重要なのである。そういった人物描写、プロセスを無視して単なるシチュエーションのみを描く作品がいかに多いことか。最近の映画監督が人間描写に欠けている点はこういった風潮からもよくわかるのである。

そして、さらにこの作品には説得力あるどんでん返しの中のどんでん返しが用意されていたのである。もはやこの奇跡的な存在感の化学反応については語るまでもなく素晴らしいのである。

「いずれ正義のハカリは元に戻り、君に償いをさせる」ウィルフレッド卿がレナードに吐く言葉。

「先生ブランデーをお忘れですよ」最後のプリムソール看護婦のセリフ。まさに見事な芝居の幕引きである。最近の脚本家に欠けているものは、幕の引き方である。物語の幕引きを鮮やかにするためには脇役にいたるまで魅力的に描写しておかないといけないのである。


■さすがアガサ・クリスティ


情婦 情婦
本作はアガサ・クリスティが1948年に発表した短編小説『検察側の証人』が原作である。1954年にクリスティ自身により舞台化される。

ヘルムト・カラゼクはこの作品について見事な表現をしている。
「完璧などんでん返し。無実と思われた者は犯罪者であり、冷酷な仕打ちと見えたものは愛である―すべてを手中に収め、コントロールしていると自負していた弁護士は実は操り人形であって、犠牲者のように見えた人物に糸を引かれている。さらに、その犠牲者もまた、遠隔操縦されながら、愛という名の蜘蛛の巣にとらえられもがいている」

ちなみにこの作品をハリウッドでアル・パチーノ、ニコール・キッドマンでリメイクすることが決定したらしい。見応えある作品になるか否かは脚本家・監督の力量によるだろうが、これほど完成度の高い作品をどうリメイクするかは楽しみである。


− 2007年1月30日 −


当サイト内で使用している画像・映像キャプチャー等は、あくまで映画文化の熟成及び芸術復興を標榜する当サイトの意図により、
「映画を文章だけで云々することの不誠実さ」と「目で感じる芸術及び娯楽」である映画に対する敬意の姿勢で使用しております。よって著作権等は、全て各製作者・会社に帰属します。
画像・映像キャプチャー等の使用に関して表記の問題がある場合、又は削除依頼がある場合は迅速に応対させていただきますのでご連絡ください。
このサイトは、100%非営利に、純粋に「映画解釈の究極」を求めて運営されています。取り上げるべき作品・感想等ございましたらどんどんメールください。
当サイトはリンク・フリーです。
Copyright (C) 2007 Geijyutsu Taizen. All Rights Reserved.
Mail:webmaster@summaars.net