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ベスト・キッド   THE KARATE KID(1984・アメリカ)
■ジャンル: スポーツ
■収録時間: 127分

■スタッフ
監督 : ジョン・G・アヴィルドセン
製作 : ジェリー・ワイントローブ
脚本 : ロバート・マーク・ケイメン
撮影 : ジェームズ・クレイブ
音楽 : ビル・コンティ

■キャスト
ラルフ・マッチオ(ダニエル)
ノリユキ・パット・モリタ(ミヤギさん)
エリザベス・シュー(アリ)
マーティン・コーヴ(コブラ会センセイ)
ウィリアム・ザブカ(ジョニー)
チャド・マックィーン(ダッチ)
ベスト・キッド
日本で作られたあらゆるカラテ映画よりもカラテの精神を教えてくれる作品。ミヤギさんという日系アメリカ人の「日本人よりも日本人らしい」アイデンティティの深さ、この作品の脚本は驚異的な程に日本の精神をよく勉強している。それでいながら娯楽の部分でもあるカラテ・トーナメントのシーンは格好良すぎる。さらに鶴の舞い≠アれに匹敵する映画的魅力溢れるカラテ技は今だ生まれていない。果たして日本でカラテの精神を教えてくれるような作品がどれだけ存在するのだろうか?少なくともサニー千葉の作品には一つも存在しなかったことだけは確かである。

■あらすじ


カリフォルニアに転校してきたばかりのダニエル(ラルフ・マッチオ)は、山の手に住む美少女アリ(エリザベス・シュー)に好意を抱く。彼女が最近まで付き合っていたジョニーはコブラ会所属の少年カラテ・チャンピオンで、学校の不良グループのリーダーだった。そんなジョニー達に目をつけられいじめられるダニエル。そんな時アパートの管理人をしている日系アメリカ人ミヤギ(ノリユキ・パット・モリタ)と知り合う。


■カラテブームの到来


ベスト・キッド
こういう
「単純に勇気を与えてくれる映画」が最近めっきり少なくなった。小学生の頃テレビの洋画劇場でよくやっていて、この作品が放映された次の日は、男子みんなが「鶴の舞い」状態だった。そんな風に子供が見ても単純に楽しめるのだが、それでいて大人が見ても異文化交流と武道の精神の深みが感じられる作品である。ただし、テレビにおいては、大幅なカットがなされていたので、馬鹿映画的な誤解を受けている部分があるのも事実である。

主人公のダニエルは、母子家庭で育ち、愛情溢れる母親がいるのだが、彼女は仕事に対しても生きがいを見いだしているのでどうしても放任されていて、しかも不良グループからも目をつけられている。一方、一人ひっそり昔失った妻子の悲しみを引きずって生きている日系アメリカ人ミヤギさん。この二人の出会いにより、ダニエルは人間として、男として成長するのである。

そして、ミヤギさんの再生の物語でもある。孤独の中ずっと生きてきたミヤギさんが、ダニエルに会うことによって過去の深い傷を克服していくドラマでもあるのだ。
そこには東洋と西洋の接触により生み出された素晴らしい影響が描き出されているわけである。さらには西洋が真に東洋の英知を吸収しようとしている瞬間でもある。

この作品が実にすがすがしく感じるのは、アヴィルドセンの最後の締めの見事さにあるのだが、物語のほとんどはじっくりと武道精神について描いている。その点がこの作品をただのマーシャル・アーツ映画ではないレベルに高めているゆえんである。


■日本人の多くのものが最も日本の良さを理解していない


一般的にこの作品は、
「カラテと日本人の精神を誤解したカラテまがい映画」という評価が定着しているが、こういった評価が日本人自身の、自国文化に対する認識の低さを証明している。この作品は実に見事に日本人の古来のものの考え方の良い部分の本質と武道の本質を物語っているのである。

若い頃日本で、そして、シドニーで実戦カラテをやってきたが、実際のカラテの精神は、この映画の側のカラテの方がよりある気持ちがする。確かに実戦カラテは強くはなるのだが、精神的な部分はあまり教わらない。この作品でミヤギさんが教えているカラテの本質は実に素晴らしい。

はたして、邦画のカラテ映画でこの作品よりまともに武道について捉えている作品はあるだろうか?
「日本人は、何故か他国の作った日本≠ノ関するものを笑い飛ばしてバカにする風潮」があるが、そういった独りよがりな姿勢はまさに恥ずべき姿勢である。


■パット・モリタの抜群の魅力


ベスト・キッド ベスト・キッド
とにかくミヤギさんとダニエルが魅力的である。それぞれの人間描写が完璧になされており、一つの交流の中に
「師弟関係」「異文化交流」「年齢を超えた友情」「父と子の関係」「少年のファンタジー」が含まれている。この描写の凝縮の巧みさは手放しに賞賛に値する。

ミヤギさんを演じるは、ノリユキ・パット・モリタ(森田沢之、1932−2005)である。日系アメリカ人の二世で第二次世界大戦中は、彼自身本当に日系人収容所での生活を余儀なくされる。元々スタンダップ・コメディアンで英語が母国語の人で実際は流暢に話せる。

当初ミヤギ役を三船敏郎にとオファーされたが三船が断った。ちなみにこのオファーに対して脚本家のロバート・マーク・ケイメンは反対していたという。その後マコ岩松にオファーが出されたが、『コナン・ザ・グレート』(1984)の撮影のため不可能だった。結果的には長身の三船よりも160pと小柄なパット・モリタが選ばれる。

結果的にパット・モリタのミヤギさん役は最高に魅力的な役柄となった。これはすべてモリタの抜群の成り切りぶりによる。本来コメディアンで明るく流暢な英語を話す彼が、上手くない英語と抑えた芝居にチャレンジしたのである。
特にモリタの何とも言えない目つきがいい。なかなか目を合わせないところも何とも素晴らしい。

パット・モリタとラルフ・マッチオ(1961− )両人ともカラテの経験がなかったので、ブルース・リーのダチ、チャック・ノリスの弟子パット・ジョンソンが武術指導を担当した。ちなみに彼はトーナメントのレフェリー役で出演している。


■カリフォルニア・ガール


ベスト・キッド
ダニエルのガールフレンド・アリ。彼女の存在がなければこの作品は野暮ったい独りよがりな東洋文化に触れ合うひ弱少年と東洋人の地味な作品に成り下がっていただろう。彼女のオール・アメリカンな存在はそういった状況を防ぐとても重要な要素だった。

アリを演じるエリザベス・シュー(1963− )は、ベストだった。当時彼女の映画初出演であり、ハーバード大学在籍中だった。彼女の存在が、イタリア系アメリカ人と日系アメリカ人の物語に、典型的にぴちぴちで元気なブロンド女性像として組み合わさり、良い効果を生み出している。ちょっとぽっちゃりしているのだが、トンボを切るところなどまさにチアリーダーっぽさ満点で、
この作品のとても重要な若さ∞明るさ≠象徴していた。


■「センセイ!」と叫ぶコブラ会の胴着に憧れたガキ時代


ベスト・キッド
それにしてもコブラ会の面々がなかなか個性的で魅力的だ。小学生の頃はダニエルさんやミヤギさんよりも断然コブラ会にハマル。何よりも胴着が格好良く、あの正座の姿勢からの立ち方に憧れたものだ。
「ノー・センセイ!」と叫びたかったものだ。

まずはやはり「センセイ!」マーティン・コーブ(1947− )の渋さ。今で言う「悪いオヤジ」の魅力。『プラトーン』(1986)のトム・ベレンジャーのような格好良さに満ちていた。この人だけ『ベスト・キッド』シリーズ3作に出演しているのだが、実際に黒帯所持者だけあって、強そうだ。元々はチャック・ノリスがこの役柄を演じる予定だったらしい。

そして、いじめっ子ジョニーを演じるウィリアム・ザブカ(1965− )もかなり良い。本当に憎たらしいヤツなのだが、最後にダニエルに「おめでとう」と言ってトロフィーを渡す武道精神には震えたものだ。今は映画製作・脚本もしていて2003年にはオスカーにノミネートされたりしている。実際、当時レスリングの経験はあったが、カラテの経験はなかったという。

チャド・マックィーン
そして、忘れてはならないのがこの男、チャド・マックィーン(1960− )。彼は見た目から分かる様にスティーブ・マックィーンの息子でありチャック・ノリスの弟子であり、ブルース・リーからも少年時代に直接指導を受けているサラブレッドだった。

かなりいい味を出していたのだが、本人のモーターレース好きと父親が亡くなっていた事が影響したのだろう。結果的にその魅力を生かしきることなく年を取ってしまった。


■見よ!鶴の舞い!すっげぇ〜格好いい!


ベスト・キッド
さすがに『ロッキー』のアヴィルドセンだけあり、最後のカラテ・トーナメントのシーンの盛り上げ方は抜群に上手い。なかなかこれに匹敵するほど鳥肌の立つカラテ映画も少ない。
とにかく最後の鶴の舞い≠ヘ、馬鹿にしつつも必ずマネをしたくなるのが男の悲しい性(さが)なわけだ。

ちなみにこのトーナメントでベスト4に残りジョニーに敗れる空手家で登場する浅黒い肌のダリル・ヴィダルは、パット・モリタがビーチで鶴の舞い≠している時の代役もしている。この鶴の舞い≠作品に取り入れたのは彼のアイデアである。

実際海外で何年も生活してみるとこの鶴の舞い≠フ影響力がいかに強いかを実感させられる。ビーチで友達みんなでじゃれあってると必ず一人は鶴の舞い≠するもんだ。

そして、ジョー・エスポジトの「ユー・アー・ザ・ベスト」を忘れるなかれ。トーナメントのダイジェストで流れる曲だが、かなり底震えするほどきてる曲だ。他にもこの作品80年代の良質ポップスが楽しめる。サバイバーの「モーメント・オブ・トゥルース」(『ロッキー』シリーズで有名)や、バナナラマの「クルーエル・サマー」なんかもすごく良い。


■日系アメリカ人の示す武道精神


「道を歩く時、右端は安全だ。そして、左端も安全だ。しかし、真ん中を歩けば必ずひかれてグシャだ。カラテも同じ。カラテをするもいいしないもいい。ただし半端にするとグシャだ」

「純粋な心から生まれたものは全て正しい」


ミヤギさんが教える数々の武道の精神が実に素晴らしい
。肉体的な強さの追求は、精神的な強さの追及のためであり、強くなることが重要ではなく自分を信じられるようになることが重要なこと。勝ち負けは全く重要ではないということ。他人の評価やカネばかり求めて自滅したり、虚構の生活でドラッグなんかに溺れている現代人のバカっぽさに対して、痛烈にカウンターパンチを食らわす「生き方の聖典」でもあるのである。

また実に良く出来た設定が、ミヤギさんとコブラ会のセンセイのバックグラウンドである。ミヤギさんは第二次世界大戦当時家族を収容所に収容されながら、アメリカ兵として戦いに参加した過去を持つ。一方、センセイもベトナム戦争でグリ−ンベレーに所属していた戦争体験者である。しかし、お互いの武道に対する姿勢は、その戦争体験から得たものの違いからも生まれているのである。

アヴィルドセンは、ミヤギさんの収容所のエピソードの描写にかなり拘ったと言う。実際スタジオ側は、カラテ映画のテンポを悪くすると理由づけて、削除を要求していたが、拒否したという。

第二次世界大戦当時1941年11月から、アメリカに住む日系アメリカ人及び日本人の名簿が作成された。その後約12万人の日系アメリカ人が全米16箇所の強制収容所へ収容された(パット・モリタもそのうちの一人)。そして、ほとんどの日系人が固定資産を没収、及び買い叩かれ、着の身着のままでの転居を強要され、財産を失った。

1988年に当時のアメリカ大統領ロナルド・レーガンは、日系アメリカ人補償法に署名し、「日系アメリカ人の市民としての基本的自由と憲法で保障された権利を侵害したことに対して、連邦議会は国を代表して謝罪する」として、公式に強制収容された日系アメリカ人に謝罪し、1人当たり20,000ドルの損害賠償を行った。それはこの作品の公開後4年目のことでもあった。


■カラテの修練シーンの秀逸さ=ファンタジー


車のワックスがけでの左右の動き、やすりでの円の動き、ペンキ塗りでの上下の動きといった手の動きが、実はカラテの修練につながっているという発想が独創的で素晴らしい(最もジャッキー・チェンの初期の映画的ではあるのだが)。

「雑用でこき使われてるだけだよ!」と挫折しかけるダニエルに、夜の日本庭園をバックに、修練の成果を気づかせるミヤギさんのシーン。体が自然に反応する不思議さに驚くダニエル。そして、確立される師弟関係。この作品の師弟関係の描写は、友人関係でもあり、父と子の関係でもあり、実に多面的であり素晴らしい。
こういった人間関係の構築が見事に描かれている作品はなかなか少ないだろう。本作はそういった意味においては過度に過小評価されている作品でもあるのである。

そして、この修練成果を知るシーンの後に、ミヤギさんが酒に酔い、ミヤギさんの悲しい過去を知ったダニエルが、彼をベッドに寝かしつけてあげ、お辞儀をして去っていくシーン。その無言の一時はまさに映画史に残る名シーンである。


■コブラ会そのものの、かつての格闘技ブーム


勝ち負けは問題ない。立派に闘えば尊敬され誰にも迷惑をかけん

暴力は何も解決しない。カラテは防御のためだけにあり、闘わないために修練するのだ

少し前に日本において格闘技ブームというものが巻き起こった。そして、この影響がコブラ会のような勝利至上主義と武道の精神を口先で言及するだけの卑屈な精神の蔓延だった。果ては勝利のためならどんな卑怯なことも辞さないという人間まで登場する始末だった。

結局はこの格闘技ブームが示したものは、人間の浅ましさと武道のゆがめられた醜さと、それに便乗しようとする腐りきった芸能人の存在提示だった。多くのブームはその輝きが衰える瞬間に地の底まで死臭を放つ程に腐りきる。「ブームとは全てにおいて、腐敗する道を決定した瞬間」なのである。


■空前のカラテ・ブームを捲き起こしてしまう


本作は低予算で製作され、9000万ドルの興行収入を挙げた。そして、ノリユキ・パット・モリタは1984年アカデミー賞助演男優賞とゴールデン・グローブ助演男優賞に日系アメリカ人として初めてノミネートされた。

原題は「カラテ・キッド」であり、この作品が公開されるやいなや、全米においてカラテ・ブームが沸騰した。ブルース・リー・ブームとは違い。少年少女が入り込みやすいその内容ゆえに、カラテ道場に通いたがる子供達が急増したという。

− 2007年8月2日 −


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