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ダンディー少佐   MAJOR DUNDEE(1965・アメリカ)
■ジャンル: 西部劇
■収録時間: 124分

■スタッフ
監督 : サム・ペキンパー
製作 : ジェリー・ブレスラー
脚本 : ハリー・ジュリアン・フィンク / サム・ペキンパー / オスカー・ソウル
撮影 : サム・リーヴィット
音楽 : ダニエル・アンフィシアトロフ

■キャスト
チャールトン・ヘストン(ダンディー少佐)
リチャード・ハリス(タイリーン)
ジェームズ・コバーン(ポッツ)
センタ・バーガー(テレサ・サンティアゴ)
ジム・ハットン(グラハム)
ウォーレン・オーツ(O・W・ハドリー)
ダンディー少佐
この作品においてのペキンパーの失敗が前向きだったからこそ、次の作品『ワイルドバンチ』は偉大なものとなった。本作はペキンパーにとってただ映画会社から干されるきっかけを作ったという次元のものではなく、彼の芸術性を昇華させるきっかけとなった記念碑的な野心作である。そういう意味においては若干の価値を見いだせる作品ではあるが、それ以外の部分においてはセンタ・バーガー以外はありきたりのB級西部劇にすぎない。

■あらすじ


南北戦争末期に、アメリカ先住民アパッチ族に騎兵隊と住民を殺害された報復として、北軍のダンディー少佐(チャールトン・ヘストン)が部隊編成を任される。深刻な人員不足のため南軍捕虜からも志願兵を募ることになり、旧友であり、今や宿敵の南軍大尉タイリーン(リチャード・ハリス)も参加することになる。そして、メキシコに向けてのアパッチ征伐の大遠征は始まる。


■『ワイルドバンチ』へと昇華する為に必要だった失敗作


チャールトン・ヘストン チャールトン・ヘストン ダンディー少佐
全く違う性質の二つの映画がミックスされたかのような作品。B級西部劇(ペキンパーが猛反対した冒頭の合唱を始めとするダニエル・アンフィシアトロフの冴えない音楽が既にB級の極み)とB級メロドラマの混合。チャールトン・ヘストン(1924− )がエゴの固まりの主人公を熱演しようとしているが、その熱演が空回りしている(物語の展開に足を引っ張られている)ので、観ているものも主人公に感情移入しがたい。

そんなヘストンが最後の方においては、顔つきまでウォーレン・オーツのようないい表情になっていくのだが、その頃には肝心の物語自体が破綻をきたしていた。ヘストンの芝居にかける情熱とペキンパーの演出力の凄まじさを窺い知ることは出来るのだが・・・非常に残念な作品。しかし、コレがあったからこそアレにつながった事だけは間違いない。

偉大なる芸術家とは、失敗作もまた野心的な失敗作を生み出せるものである。


■良きにつけ悪しきにつけペキンパーが足枷をされた瞬間


ダンディー少佐 センタ・バーガー センタ・バーガー
物語を台無しにした一つの要素。それはヨーロッパ美女がメキシコの農村で豊満な肉体をさらけ出している不自然さにある。そうセンタ・バーガー(1941− )の存在。このドイツの女優が唐突にメキシコの荒地に現れた理由はペキンパーが求めたものではなく、スタジオ側がヨーロッパ市場の観客獲得のために仕込んだものだった。

餓死寸前のメキシコでこんなに肉付きのいい美女が放置されている説得力のなさ。
昔のハリウッド版西部劇にありがちなうんざりさせられる展開であり、ペキンパー流のリアリズムを見事にぶち壊す役割を彼女は果たしていた。


■センタ・バーガーの魅力


センタ・バーガー センタ・バーガー センタ・バーガー センタ・バーガー
しかし、この女優の素晴らしさは最も相応しくないところに投入された人員にもかかわらず、西部劇をラブロマンスに二分割してでも強引に自分の魅力を開花させる凄まじさにあった。

ダンディー少佐と彼女のラブロマンスは、全く必要性のない展開であり、夫を失った女がいとも簡単にダンディー少佐を誘惑するという
「ハリウッド社会のオヤジが新人女優の色目に引っかかる」ような陳腐さに満ち溢れている。

センタ・バーガーとの絡みにおいてのヘストンがことごとく、ヘラヘラしていて物欲しげで格好悪く見えるのは、逆に言うとそれだけセンタ・バーガーが芯の強そうないい女だからだろう。彼女の肉付きの良さもあるだろうが、この女優にはただの美女にはないドイツ女独特の逞しさと知性(=母性愛)がみなぎっている。

ある意味御幣のある言い方だが、彼女の登場するシーンにおいてはリチャード・ハリスでさえも食われている。だからこそ、そんな彼女がヘストンとキスを交わす瞬間に陳腐な女に成り下がる嘘くささが鼻につくのだ。
ただの小道具としては収まりきらない魅力に溢れているからこそ、彼女はいい意味でこの作品を破壊しつくした。

センタ・バーガー センタ・バーガー センタ・バーガー センタ・バーガー
そして、極めつけは水辺で入浴していた二人(敵に近づきつつある状態でなんとも不用心な?この行為の方がW・オーツの逃亡よりもまずいのではないか?)が案の定アパッチ族の待ち伏せを受け、ダンディーが彼女の肉体に鼻の下を伸ばしている時に、足を矢で射抜かれてしまうシーンである。

この西部劇史上最も情けない主人公のこのシーンによってこの作品は完全にぐらつき始めるのだった。


■そして、リチャード・ハリスが一人かっさらっていく


ダンディー少佐 リチャード・ハリス リチャード・ハリス
ダンディー大佐の旧友でもあり、過去のトラブルにより宿敵となった南軍大尉タイリーンを演じるリチャード・ハリス(1930−2002)。
この男は主役を張るとそうでもないのだが、助演に回ると何故か俄然主役を食ってやろうと凄まじいオーラを発散してくれる主役泣かせの男である。

こいつが最初から最後まで、ほぼ自力で男の魅力を発散してくれている。はっきりいうと演技力においてはヘストンが圧倒的に押されてしまっていた。だからこそハリスが魅力的であればあるほど、題名になっている主人公が煮え切らない人物に成り下がり、この作品の根本はつまらないものへと納まっていった。

ちなみに元々タイリーンの役柄はアンソニー・クインで考えられていたという。そして、もうひとりダンディー大佐の盟友ポッツ(当初リー・マーヴィンにオファーが出されていた)を演じるジェームズ・コバーン(1928−2002)と裏切り者として処刑される南軍兵士を演じるウォーレン・オーツ(1928−1982)も本来の持ち味を出すまでには至っていないが、やはり渋い芝居をしてくれていた。


■登場人物中最もダメなオヤジは実はダンディー少佐だった


ダンディー少佐
男臭い共演者に囲まれダンディー少佐が、美味しいところをかっさらい男臭さを発散してくれるのかと思いきや、そうではなかった。それどころかセンタ・バーガーの色香の前にあっさりと陥落し、敵の奇襲が予想されるような場所で彼女と水浴びにこうじ、敵の奇襲を受け、負傷し、部下の蔑みの眼差しを受けながら戦線離脱していくのである。

更にこの男のアンチ・ダンディズム行為はつき進む。負傷中の隠れ家でもある娼婦の部屋で、メキシコ人娼婦に欲情したこのオヤジは、ただのエロオヤジの如く彼女とセックスに励み、センタ・バーガーに見事ばれてしまい気まずくも情けない表情をスクリーン一杯にさらけ出すのである。

そして、あまりにも情けない自分の姿に自暴自棄になりやけ酒を煽る(ここで現れる娼婦は全てホンモノである)のだが、
その姿は女々し過ぎてもはや観客の誰一人の同情も呼び起こさないほどのダメオヤジの堕ちっぷりだった。


■堕ちた分だけ復活の瞬間にカタルシスが生み出されると思いきや・・・


ダンディー少佐 ダンディー少佐
さぁ・・・ダメオヤジがどのようにして失った自尊心を取り戻すのだろうか?と映画の残り時間が20分しか残されていない事を気にしながら観ていると、なんとタイリーンが唐突に登場し、一分後には何事もなかったかのようにダンディー大佐は自尊心を取り戻し、部下に指令を出しているのだった。

そして、何の盛り上がりもないアパッチ族の討伐シーン(ダンディー少佐はほとんど活躍していない上に、アパッチ族長を殺す役割も若造に奪われてしまう)の果てに、フランス軍とのおおよそ戦闘とはいえないレベルの騎馬戦が繰り広げられ、メリハリのない戦闘シーンにむりくりメリハリを作り出す意図ありありの不自然なタイリーンの自爆行為の果てに物語は終幕を迎える。


■伝説とは、失敗の中から多く生み出される

ダンディー少佐 ダンディー少佐
本作は『昼下がりの決斗』(1962)の成功を受け、ペキンパーが450万ドルの大予算で依頼された初めての大作映画になる予定だった。しかし、撮影寸前に300万ドルに予算を削減された。さらに撮影寸前まで脚本(ジョン・フォード監督で意図した脚本)の大部分は未完成のままだった。

撮影は開始され、ヘストンにカメラを意識した芝居をやめさせようとペキンパーは挑発的な演出を繰り返し、ヘストンを激怒させたこともあったが、全体的に役者との関係は良好だった。一方、スタッフとの関係に関しては些細な理由で10人以上をクビにしたり、時にはアルコール臭い状態でセットに現れ、険悪なムードを作り出していた。

やがて撮影現場のトラブルと撮影ペースの遅延(結果的に80万ドル予算が超過した)を理由にペキンパーは解雇寸前の極地に経ってしまう。そんな所に救いの手を差し出したのが、ヘストンだった。
「サムを監督に残せ。予算が不足ならギャラ(20万ドル)は要らん。撮影の費用に回せ」と言った。

「あの作品でサムとずいぶん親しくなった。彼ほど親しくなった監督は、他にはいない。撮影が行われた3ヶ月間彼と私は固い絆で結ばれていたと思う。あの頃よく一緒にひどくまずいメキシコのブランデーのグラスを傾けながら、あれこれ話し合ったり、いかにやつらがひどい連中か愚痴をこぼしあったりしたものだ。やつらって?もちろんやつらさ」チャールトン・ヘストン

「他の作品以上にこの作品から多くのことを学んだ。そして、苦労して映画に出て一文の得にもならなかったというのも面白い経験だった」ヘストン


■男が男に惚れる・・・


ダンディー少佐 ダンディー少佐
74日間の撮影が終わり最終的にペキンパーが編集した156分(戦闘シーンのスローモーション・シーンを含む)は、編集権を奪われた上にずたずたに短縮され、123分で公開された。一方、1964年10月ペキンパーは次作『シンシナティ・キッド』の監督を任されることになるが、4日後に解雇されることになる。

そして、『ワイルドバンチ』(1969)を撮るまで映画界から干された状態になるのである。後日『ワイルドバンチ』の空前のヒットの中、掌返しにコロンビアの重役連中がペキンパーに『ダンディー少佐』の追加撮影と編集権を与えるので再撮影しないか?と持ちかけたがペキンパーはただ一言
「今さら興味ねえ!」と突っ返したという。

サム・ペキンパー
ちなみに本作において、ペキンパーは、ラッパ吹きの青年と恋仲になるメキシコ人女性の役柄で出演していた女優ベゴナ・パラシオス(1941−2000)と恋愛関係になり、結婚している。以降二人は離婚、再婚を繰り返し、計3回の結婚をすることになる。

最後にこの作品に関してのコバーンとペキンパーの逸話で締めくくろう。ポッツという役柄が見えてこないコバーンはある日ペキンパーに「どう演じればいいんだ?」と尋ねた。「そんなこと知るか?このアホ!」とペキンパーは答えた。「それじゃ、ポッツはどんな男なんだ?」「気にするな。そんな事忘れろ。ポッツならまったくそんな事は考えない」とペキンパーは答えた。

そして、数日後コバーンは尋ねた「ダンディーというキャラクターのどんなところに興味を持って、この映画を作りたいと思ったんだい?」
「ヤツは生き残るからだ。くだらん騒ぎがあろうと、まわりが嘘だらけだろうと、酔いつぶれようと、どんな目にあってもダンディーは生き残るんだ!」それを聞き、コバーンは感嘆したという。コバーンは独白する。「そのとき私はなぜ自分が好き好んで、トラブルだらけの混沌としたこの映画に最後まで付き合おうとしているのか分かった様な気がした」と。

− 2007年12月10日 −


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