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影なき狙撃者   THE MANCHURIAN CANDIDATE(1962・アメリカ)
■ジャンル: サスペンス
■収録時間: 126分

■スタッフ
監督 : ジョン・フランケンハイマー
製作 : ジョン・フランケンハイマー / ジョージ・アクセルロッド
原作 : リチャード・コンドン
脚本 : ジョージ・アクセルロッド
撮影 : ライオネル・リンドン
音楽 : デヴィッド・アムラム

■キャスト
フランク・シナトラ(マーコ)
ローレンス・ハーヴェイ(レイモンド・ショー)
ジャネット・リー(ロージー)
アンジェラ・ランズベリー(アリスン)
ヘンリー・シルヴァ(チュンジン)
影なき狙撃者
洗脳は全て女性によって行われる。園芸クラブの女性達、レイモンドの母、そして、ダイヤのクィーン。良い意味でも悪い意味でも、女が男を引き上げもすれば、引き下げもするのである。本作のレイモンドと母アリスンとジョシーの関係も、マーコとロージーの関係もその一例である。

■あらすじ


朝鮮戦争が終わり情報局に勤務しているマーコ大尉(フランク・シナトラ)は毎晩ある悪夢に悩まされていた。園芸クラブの中にいる自分と8人の部下達。そして、所々に中国人やロシア人らしき者たちが登場する。やがて部下の1人レイモンド軍曹(ローレンス・ハーヴェイ)が仲間の首を絞め殺す所でいつも汗だくになって夢から覚めるのである。この不気味な夢がきっかけで、これから起ころうとしている恐るべき政治的陰謀に気づくことになる・・・キーポイントはトランプの「ダイヤのクィーン」。


■トランプの絵柄と星条旗がミックスされた秀逸なオープニング


影なき狙撃者 フランク・シナトラ
2004年に製作されたデンゼル・ワシントン、メリル・ストリープ主演の『クライシス・オブ・アメリカ』のオリジナルが本作『ザ・マンチュリアン・キャンディデイト』である。主人公はフランク・シナトラではあるが、実際の所はローレンス・ハーヴェイが主役だろう。

本作でのこの人の芝居は田宮二郎みたいである。
とにかく冷静そうでいて、精神が脆そうなというかなり難しい役どころを見事に演じている。本作はフランケンハイマーが製作・監督するに当たって、シナトラにどの役でも好きな役を選んでくれと言ったらしい。それに対しシナトラは「レイモンドの役は俺には手に負えないぜ」と言ったと言う。

そして、何よりも素晴らしいのがオープニングのタイトル・デザイン。このトランプの絵柄と登場人物の写真と星条旗がミックスされたセンスはかなり不気味である。私自身も中学生の時期よくトランプの絵柄の強迫観念的な夢を見たりしたものだが、トランプの絵柄というのは実に悪魔的で潜在意識に訴えかけるものがあると思われる。特にあの半分眠りそうな眼差しが頭に残るのである。

ちなみに冒頭でレイモンドの父親の上院議員が所有する自家用機は、現実にフランク・シナトラが所有するものである。


■素晴らしい洗脳シーン


影なき狙撃者 影なき狙撃者
洗脳シーンの描写が素晴らしすぎる。兵士達には園芸クラブに見え、実際は東側諸国(つまり共産圏国家)による洗脳の説明に参加している構図なのである。その描写が360度カメラを回転させながら臨場感たっぷりに描写されているのである。それにしても、背景のスターリンと毛沢東と、そして、この不気味なアジア人とロシア人の相の子のような坊主の洗脳学者イェン・ロー。この傲慢でなんとなく女性っぽいイェン・ローがまた良い。このイェン・ローの存在感は映画の前半のキーであろう。

そして、この洗脳シーンが見事なのは、マーコの夢バージョンとは別にもう一つ黒人兵の夢バージョンが存在することである。黒人兵が悪夢を見るときには園芸クラブのシーンの全ての白人は黒人に入れ替わっているのである。こういう描写を1962年の時点で行えるフランケンハイマーという監督の感性は素晴らしすぎる。


そして、もう1人のキーパーソンでもあるチュンジンという韓国人を演じるヘンリー・シルバー。この頃のシルバーはプエルトリカンでありながらインディアンやアジア人などさまざまな役柄を演じている。ちなみにシナトラはチュンジンとの格闘シーンで本物の机を誤って叩いてしまい小指を骨折した。この格闘シーンは、ハリウッド映画で初めて空手シーンを使用したシーンだという。何気にプロレス技を使用しているところも擽られる所である。ちなみにこのシーンに触発されブレイク・エドワーズは『暗闇でドッキリ!』(1964)から恒例になるピンク・パンサー・シリーズでの、クルーゾー警部とケイトーのカラテ・コントを編み出すこととなる。

この洗脳シーンで『知りすぎていた男』(1956)で暗殺者を演じた一度見たら忘れられない俳優・レジー・ナルダー(1907−1991)が出演している。20代の初めに火事でやけどしたことにより顔面にケロイド状の跡が残ったが、このハンディキャップを物ともせず、逆にその特異な風貌を生かして悪役俳優として活躍した人である。


■何気に岸信介元首相も出演している


何気にマーコの夢の中に出た人物を確認するシーンで、スクリーンの中に映し出される写真の中に
1960年に右翼に刺された時の岸信介の写真があったのがかなり不気味である。ちなみにこの写真の一部はFBIから貸し出されたものであったらしい。岸信介の写真もそうなのか?


■不自然すぎるジャネット・リーの役柄


ジャネット・リー(1927−2004)の役割が実に不自然である。それは狙ってのことだろうが、ジャネット・リーの演技力がもう一つなので、何とも意識して胡散臭い役柄を演じてるとしか思えない。しかも、電車で煙草の火もつけれない冷や汗たらたらの不気味な男に恋して、住所と電話番号まで教える女は地球上にまずいないだろう。この設定だけがこの作品を非常に白けさせてくれた。

ちなみにこの時期のジャネット・リーは人生の波乱の中にいた。3番目の夫トニー・カーティスの不倫相手17歳のクリスティーナ・カウフマンが原因で1951年からの結婚生活にピリオドを打ち、彼女も同年に再婚するのである。


■現実に『マンチュリアン・キャンディデイト』は存在している・・・


サーハン・サーハン
『洗脳』によって暗殺者に仕立て上げられたといわれる男サーハン・サーハン(1944− )
この男の存在こそ今だアメリカにとって、タブーであると言われている。サーハン・サーハンとは1968年6月5日にロバート・ケネディを暗殺したといわれる犯人である。民主党の大統領候補指名選のキャンペーン中のロサンゼルスのアンバサダー・ホテルの厨房での出来事であった。ちなみにサーハンはエルサレム生まれのパレスチナ人である。彼が暗殺を実行する前に水玉模様のワンピースを着た女性が彼に話しかけている姿が何人かに目撃されている。このことにより、彼女がサーハンにとっての「ダイヤのクィーン」であったとも言われている。

何よりもこの暗殺劇が不可解なのは、銃を所持したパレスチナ人が誰にも制止されずにケネディに近づけたという事実と、単独犯扱いしたがるアメリカ政府の対応である。さらにロス市警は犯行後なぜか数千枚にも上る現場写真を焼却したという。サーハンは今でも終身刑でコークラン刑務所に服役している(ちなみにこの刑務所にはチャールズ・マンソンや、かつてロバート・ダウニーJr.も収容された)サーハンは13回保釈の要求をしているが拒否され続けているという。

実はアメリカ政府も1950年代からCIAが
MKULTRA計画という洗脳計画をスタートしていたことが明らかになっている。この計画によって、サーハン・サーハン含め1995年にラビン・イスラエル首相を暗殺したイーヤル・アミールまでの多くの暗殺犯が洗脳されたともいわれている。ちなみにサーハン・サーハンの洗脳に関わったのは、ベトナム戦争継続派の軍関係者とも、ジャクリーン・ケネディとの再婚を目論んでいたアリストテレス・オナシスともマフィアともいわれている。

このMKULTRA計画でサーハンの洗脳担当だったと噂されたCIAのウィリアム・ブライアン博士は、1978年にラスベガスの豪華ホテルの一室で死亡している。他殺とも自殺とも定かではない。多くの専門家はサーハンが犯人ではなく検視レポートでも言われているように、背後から至近距離で撃たれた銃弾が致命傷になったので、他に暗殺者がいたと考えている。ちなみにサーハンは正面からケネディを撃っていた。


■60年代のホットパンツ


レスリー・パリッシュ 影なき狙撃者
レイモンドが愛した女性ジョシー役のレスリー・パリッシュ(1935− )のホットパンツ姿がかなり艶めかしい。古来ファッションほど進歩のない分野はないといわれているのだが、このホットパンツは今でも十分通用するセンスである。この人60年代後半以降はB級映画にしか出演しなくなるのだが、この頃はそれなりに綺麗な人であった。


■トランプ占いをしろ!


影なき狙撃者
レイモンドに電話がかかりトランプ占いをしているうちに出てくるダイヤのクィーンのカードを見たとたんに豹変するレイモンド。そんな彼がジョーダン上院議員を殺害するシーンで牛乳パックを撃つことによって血が流れるのではなく白いミルクがこぼれるという描写は見事すぎる。この当時の映像が素晴らしい理由の一つは明確に、

直接的ではなく間接的な表現方法を取る事により、映像の創意工夫が行われているからである。

「人間という魚は環境の海に泳ぎ、互いに傷つけあっている。致命傷の多くは親からかぶっているのだ」



■初めてマッカーシー上院議員の赤狩りを批判した


本作において、レイモンドの義父のアイズナー上院議員は、1950年代にハリウッド中にまで吹き荒れた赤狩りを巻き起こしたマッカーシー上院議員の役柄を演じている。
この作品は一見共産主義者の非人道的な洗脳という手段の行使を描いておきながら、実際のところアイズナー上院議員夫婦の大衆に対する洗脳の恐怖も描いているのである。

フランケンハイマーの表現の見事さは、
実は洗脳とは母が子を育てるときに行う第一義的な行為であり、その延長線上に国際政治においても東西両陣営において、洗脳された人々の固定観念の元に冷戦という構図が成り立っているという主張なのである。


■アンジェラ・ランズベリーの存在感


影なき狙撃者
こんな母親であれば、息子が近親相姦的関係になるかも。と納得させられる演技力である。彼女はこの芝居によりアカデミー助演女優賞にノミネートされ、ゴールデングローブ助演女優賞受賞となった。

本作のポイントは近親相姦である。脚本の見事さゆえに最後の最後のキスシーンで二人が実は近親相姦の関係にあることが分かるのである(原作ではベッドに息子を誘う。このベッドに息子を誘う行為自体が実に「ダイヤのクィーン」的要素である)。レイモンドは自身の口から、最初は母を嫌いやがて憎むようになったと言っているが、
それはこの母親の支配欲の強さと、その支配の中から抜け出せない自分に対する怒りでもあるのである。

アンジェラの凄さは、実際はアンジェラとローレンスはわずか三歳違いなのであるが、素晴らしい存在感で誰しも彼女が3歳違いの男性の母親である不自然さを感じさせなかったことである。

本作はリチャード・コンドン(1915−1996)が1959年に書いた小説を原作にしている。ちなみに彼はジャック・ニコルソンとキャサリン・ターナーで映画化された『女と男の名誉』(1985)の原作者でもある。


■そして、全ては終わった


最後のマジソン・スクエア・ガーデンでの暗殺シーンで、マーコが、レイモンドを発見するアイデアは、アルフレッド・ヒッチコックの『海外特派員』(1940)からだという。そして、最後にレイモンドは、本来狙撃する予定であった大統領候補を狙撃せずに、副大統領候補である自分の義父アイズナーと母アリスンを狙撃して、自らも自殺するのであった。

実に皮肉な結末である。洗脳された人間が洗脳から解放されたことにより、事実を知っている唯一の人になってしまったのである。だから彼の手で全てを終わらさざるをえなかったのである。これこそ、人間本来の存在の皮肉性なのである。

本作は41日間かけて撮影された。この翌年にケネディ大統領が暗殺され、以降80年代後半までリバイバル公開されることはなかったという。

− 2007年5月11日 −


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