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ザ・ミッション 非情の掟   THE MISSION / 鎗火(1999・香港)
■ジャンル: アクション
■収録時間: 81分

■スタッフ
監督 : ジョニー・トゥ
脚本 : ジョニー・トゥ / ヤウ・ナイホイ
撮影 : チェン・チュウキョン
音楽 : チュン・チーウィン

■キャスト
アンソニー・ウォン 黄秋生(グァイ)
フランシス・ン 呉鎮宇(ロイ)
ロイ・チョン 張耀揚(マイク)
ラム・シュー 林雪(フェイ)
ジャッキー・ロイ 呂頌賢(シン)
サイモン・ヤム 任達華(ナン)
エディー・コウ 高雄(ブン)
ザ・ミッション 非情の掟
「何も考えずに酔いしれよ!男だけの挽歌に」ストイックに生きる男たちの寓話。男がこんな男たちに憧れ、女がこんな男たちに惚れれば、世界はもっと「拝金主義に満ち溢れた世界」を乗り越えた豊かな世界になるだろう。この映画は『21世紀の男の寓話集』なのだ!必ず見るべし!

■あらすじ


命を狙われた組織の組長ブンの命を守るために現役の組員2人と元組員3人が召集された。敵の襲撃からブンを守る任務の中で、次第に連帯感が生まれた5人だが、ロイ(フランシス・ン)の舎弟シン(ジャッキー・ロイ)がブンの姐さんと寝たことが発覚し、4人に後始末が命じられることになる。


■ストイックさが生み出すスタイリッシュな世界観


ザ・ミッション 非情の掟
この世界観かなり斬新で格好良すぎる。黒のスーツに色シャツ、襟は外出しが基本の格好良さ(ただしフェイは除く)。決して現代的ではないファッションセンスなのだがそれがまた素晴らしい。
この絶対的なまでの「女不要」な世界観の中に、多くの男女がスタイリッシュさを感じるのはこの世界観故である。スタイリッシュの基本それは現実に必要なものを削ぎ落として見せる=魅せるストイックさである。

逆説的に言うと
「女不要」なふりをする男の方が、女性には魅力的に見えると言うことでもある。

こんな5人の男たち=サムライ(彼らの姿は紛れもなくサムライそのものではないか?)が、徹底的に組織の掟に忠実なその姿。この姿は非現実的ではあるが、非現実的ゆえに美しいのである。そんなただ黙々と課せられた任務を忠実にこなしていく姿を描いていくのが、この物語の前半〜中盤である。

組織の掟に忠実ということはつまりは、その掟から外れてしまうと「即、死」を意味することになるのだが、まったくけれんみのないこの設定が後半に至って活きてくるのである。
つまり本作の魅力は、タランティーノ作品のような「ルールなき世界観」ではなく「ルールのある世界観」だからこそ発する魅力なのである。

このことはタランティーノの安易な緊張感の創造に対し、実に緻密さの伴なう緊張感を創造しているのである。そして、中盤=終盤にかけて物語は、掟を破った5人のうちの1人シンをどうするかへと、焦点は移行していくのである。
ずっと「掟」に縛られてきた4人がいかにして物語を終焉に納めていくのか?今までのストイックな描写ゆえに否応無しに期待感は高まるのである。

ストイックな男1人1人が、お互いを認め合いストイックな世界観が崩壊していく過程が最期の最後に、友情と言う「情愛のカタルシス」をもたらしてくれるのである。



■人間は絶えず構図に魅了される


ザ・ミッション 非情の掟
オープニングスコアから冴えにさえまくっている。その安っぽくもストレートなスコアがこれからの81分嫌と言うほどに繰り返されるのだが、そのリフレインが見ているものの心を何故か高揚させてくれる。さらにバックに流れるタイトルロールがまさに黒澤明の世界観そのものの縦の漢字の配置の美学なのである。
「字の配列の美学」この特化された美学を日本人として大切にしたいよな。英語の美学は、世界中の国の人にも表現出来るが、漢字の美学は、中国人か日本人にのみ可能な美意識である。よく外国人がTATOOとして、漢字を入れる人が多いように、漢字とは世界的に芸術的に美しいデザインと考えられているのである(ハングルのTATOOを入れる外国人がほとんどいないのに対して)。

そういった意味においては拳銃が発する火花を意味する原題「鎗火」は実に素晴らしい。

登場人物の5人が5人とも実に魅力的であり、それは魅力的な美男子の俳優を集めたのではなく、名脇役を集めた故に生まれたものである。その一人ひとりがどこまでも個性的である。特に坊主頭、片耳ピアス、ブルーのシャツに黒のスーツで格好良く決める兄貴肌のロン(フランシス・ン 1961− )。コイツはなかなかプロに徹しきれない男なのだが、他の従順な4人に対して、たまに暴走する彼の存在はこの作品のキモである。いわば彼は直情径行型という役割である。


■ダンス・ダンス・レボリューション


一番最初に飛び込んでくる本編の映像それはダンス・ダンス・レボリューションに講じるフェイ(ラム・シュー)の姿である。この世紀末に流行ったゲームの雰囲気がすごくいい。これは予断だが、私自身もシドニーでチャイニーズの子をゲットする時にはゲームコーナーで絶対これをやっていた。一緒にゲームで汗かいて、ベッドでも汗がかけるいい社交場だった。

しかし、こんなオヤジが汗だくになってダンレボしてるところはかなり引くのだが、実に印象的なオープニングである。そして、トイレットペーパーで無造作に汗を拭い、彼が歩く姿に他の4人の登場人物の姿が交差していくのである。
近い将来に一緒に任務をこなすことになる5人それぞれの紹介をわずか数分のうちでやってみせるこの構成力が実に素晴らしい。


■何気に美味しいところをさらっているロイ・チョン


ザ・ミッション 非情の掟
そんなイントロダクションで一際目立つ白の上着に黒のズボンの正装をした加藤鷹風なヘアスタイルの浅黒い男マイク(ロイ・チョン、1964− )。ロンが直情携行型であるならば彼は5人の中で最も「女にはだらしなさそうな兄ちゃん」的な人当たりのいい役柄なのである。

最初に5人が対峙した時に煙草を「どうですか?」と差し出す間の悪さ。軽い兄ちゃんに見えるのだが、実は他の4人が衝突しないか絶えず注視している冷静さも兼ね備えている男であり、5人の中で最高の射撃の腕を持つのだが、一歩引いた雰囲気がかなり良い。

それでいながら最初に銃を手にし、
耳元でカチャカチャと点検して「スプリングが弱い」と言って調達屋のフェイに再点検させる仕事に対しての厳しさを持っているところが更にこの男の魅力でもある。


■固定された世界観の中で・・・


ザ・ミッション 非情の掟
この作品の魅力の一つは間違いなく斬新な銃撃戦である。
その斬新さが四方八方に向って銃を構える、奥行きある立体感溢れる非現実的な構図と、その非現実的な構図が生み出す静の空間=∞禅のような空間≠ェ、結果的には現実感を生み出しているのである。ジャスコという現実的な空間を空っぽの建物にして、その中で黙々と撃ち合う姿。

究極の非現実性のみが生み出しうるスタイリッシュさである。そして、
性格も考え方もばらばらな5人がごく自然に瞬時にフォーメーションを組む美しさ。まさにその姿からは、銃声の音をバックにファッションショーで歩いているモデルたちのようなナルシズム溢れる理路整然さが漂ってくる。

必死さを一切排除したナルシズム溢れる銃撃戦に緊張という味付けをしたからこそ、斬新な銃撃戦となったのである。全てが無言のうちでなされ、動くべきでない時は銃をホールドしてじっと佇むのである。だからこそこの銃撃戦はファッションショー的(固定された世界観)空間なのである。



■無駄な余韻を持たずに殺すというある種の敬意


更に追いつめた襲撃犯たちを敵のアジトに追い込んでの銃撃戦。草むらの中から移動しながら銃弾を黙々と放つ5人。そして遂には佐藤佳次演じる敵の殺し屋を追いつめ捕捉するのである。

この佐藤と5人の男たちが、組織から佐藤の処遇の通知を待つ姿が実に良い。マイクが彼の力量を認める眼差しを投げかけたり、ロンは煙草をあげたりと敵を讃えてノーサイドの空気が漂うのだが、上からの「処理して撤収しろ」の一本の電話と共に、瞬時に射殺し撤収するのである。この何とも非情な空気への転換が実に素晴らしい。

この作品には全編に渡り、剃刀で殺される男を除き、殺される側にも殺す側にも無駄な余韻を持たないある種の敬意が払われているのである。最近のハリウッド映画にはこの種の人命に対する敬意ある姿勢が示される映画が少ない。


■ラム・シューとアンソニー・ウォン


ザ・ミッション 非情の掟
5人の中で最も無愛想な男フェイが、終盤にかけてどんどん輝いてくる。5人の中で文句なしに一番ブ男であり、ポケットに豆を入れて歩き、その豆をむしゃむしゃ殻を撒き散らして食べる不愛想で何の魅力もないヤツなのだが、コイツが、組長の姐さんと寝たシンが消されないようにちょこまか奔走するのである。そして、タクシーの中では組長に弁解する練習を何回も繰り返すそのギャップ。

この男がシンの為に奔走するからこそ、シンが最後に助かる説得力が生まれるのである。ちなみにシンが迫られてエッチしてしまう姐さん役のシー・イーリンは1990年のミス・ワールド香港代表に選ばれた人である。どうりで長身で絶世の美女なわけだ。それにしても爺のダンナに満足できずに浮気したからといって射殺される彼女も悲劇過ぎる。

この姐さん射殺シーンが何気に一番衝撃的なシーンである。

ザ・ミッション 非情の掟
この一間さえない宍戸錠似の男が、5人を束ねるリーダー、グァイ(アンソニー・ウォン 1961− )だ。その冴えない風貌とは裏腹に、カミソリの刃1本で敵を無表情で殺すほどの凄腕の用心棒なのだ。それ以上に驚きなのは、彼はフランシス・ンと同い年で撮影当時30代後半だったという事実だ。


■紙くずサッカーする5人の用心棒


ザ・ミッション 非情の掟
スタイリッシュな空間というものに必要な要素において、特に試されるのが男たちがふと息抜きする瞬間だ。こういったシーンでこそ本当のセンスが問われるのである。そして、この作品はそうした瞬間が実に見事に描写されている。組長の家のプールサイドで5人がほっと瓶ビールと煙草で一服するシーンを始め、中華料理店で乾杯する5人などどれも5人の個性が絡み合い見事な効果をあげている。

しかし、なんといっても最高にいいシーンは、組長をオフィスで待つ間、時間を持て余した5人が誰それとなく紙くずでサッカーをするシーンである。
最初は2人で紙くずをパスし合いやがては5人全員でパス回しするようになるのである。スーツを着た5人の用心棒が無言で紙くずを蹴りあう格好良さ。このシーンは5人の連帯感が熟成される姿を何気に表している点においても素晴らしいシーンである。

ザ・ミッション 非情の掟 ザ・ミッション 非情の掟
ちなみにロイの弟分シンを演じたジャッキー・ロイ(1966− )は新人ではないが、初めての大役だった。それにしても雨の日に1時間遅れで組長の姐さんの送迎から帰ってきたシンが、びしょぬれになったシャツを無造作にテーブルに置いた時に、ロイがさり気にシャツの匂いを嗅ぎつけ、姐さんの匂いを嗅ぎつけたのか、体を洗って来いこれと一緒にとシャツをシンにほうり渡すさりげなさが素晴らしい。


■最後のミッションは果たされた


ザ・ミッション 非情の掟
最後のシンの処刑の任務を巡るストイックさの破綻が、この作品を見事なほどの情愛のカタルシス≠ヨと導いてくれる。最終的にシンを助ける4人。そして、いつかは真実が組織にもわかり友情≠優先した5人には非情の鉄槌が落とされるのだろう。

しかし、そんなことを100も承知で、非情さよりも友情を選んだこの4人の男たちの姿勢=ストイックさに対する裏切り≠ェ、カタルシスの伴なう共感を見ている側に呼び起こすのである。このスタイリッシュの崩壊の瞬間が最後に存在したからこそ、この作品は名作に値するものへと昇華したのである。

この作品は台本と言うものは存在せず、監督が役者達にストーリーの説明をし、それに基づいて各々がアドリブでリハーサルをし、監督と役者がリハーサルの中で肉づけをしていき、わずか19日間で撮影していった。

本作は、第37回台湾金馬奨最優秀監督賞、最優秀主演男優賞(フランシス・ン)と第5回金紫荊奨最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀助演男優賞(ロイ・チョン)、最優秀撮影賞受賞と第19回香港電影金像奬最優秀監督賞などを受賞した。

− 2007年8月4日 −


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