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偽牧師   THE PILGRIM(1923・アメリカ)
■ジャンル: コメディ
■収録時間: 39分


■スタッフ
監督・製作・脚本 : チャールズ・チャップリン


■キャスト
チャールズ・チャップリン(偽牧師チャーリー)
エドナ・パーヴィアンス(ミス・ブラウン)
マック・スウェイン(教会の執事)
シドニー・チャップリン(駆け落ちする男性/車掌/悪ガキの父)
ディーン・ライスナー(悪ガキ)
『キッド』とはうって変わって、悪がきがチャーリーをとことんウザがらせてくれる。昔の作品の方が小津安二郎を含めて子供に対するそっけない扱いが、逆に最近のとってつけた映画のような嘘っぽさがなくてすごく良い。本作ではチャーリー、子供を蹴飛ばしさえもするのだ。

■あらすじ


脱獄囚のチャーリー(チャールズ・チャップリン)は水浴び中の牧師の服を盗み牧師に成りすますことに成功する。そして、ひょんなことから教会の新任牧師と勘違いされ、説教をすることになる。そこでミス・ブラウン(エドナ・パーヴィアンス)と知り合い、下宿することになるのだが・・・


■浮浪者ではないチャーリー


丁度『キッド』(1921)と『黄金狂時代』(1925)の間に位置する作品。当初チャップリンは西部開拓史を舞台にコメディを考えていたという。元々は59分だったが、1950年代に再編集され39分になった。丁度チャップリンが中篇作品から長編作品を作ろうとしていた過渡期に出来上がった作品であり、おなじみの浮浪者スタイルからの脱却を図ろうとした作品である。

ちなみに50年代に『007/ロシアより愛を込めて』『野生のエルザ』『ミニミニ大作戦』の主題歌で有名なマット・モンローが、チャップリンの作詞・作曲による「I'm Bound for Texas」を劇中の主題歌として歌っている。


■バナナの皮にすってんころり!


とにかくお約束のギャグ・シークエンスがたっぷり。牧師に変装して逃げてる途中、違う警官の前を走って通過するときに、疑われないようにジョギングでもしてるようなフリをして往復するチャーリー。このネタ、チャップリンはかなり好きなネタらしく、違う作品でもよく見かける。

そして、少年がポイ捨てしたバナナの皮にけつまずき、すってん転ぶその姿。
まさにバナナの皮で転ぶ芸の元祖である。ちなみにこの一緒に転ぶ執事役・マック・スウェイン(1876−1935)は元々喜劇映画で売り出していたコメディアンだが、低迷しているところをチャップリンが1921年に起用して、後にはアカデミー賞にノミネートされるほどになった人である。『黄金狂時代』でも印象的な役柄を演じている。


■聖職者を笑いのネタにしてしまう


ミサのシーンが最高に面白い。しかし、このシーンは、聖書というものが現在よりもより神聖だった当時においては大論争を巻き起こしたシーンだという。まず聖書を手にとって、裁判所と間違えて宣誓をしかけたりするのだが、
一番面白いのは寄付金を募り、右と左の二つの寄付金箱の重さを確かめ、重い方には満身の笑顔、軽い方には思いっきりむすっとするシーンである。まさにチャップリンらしい表情の見事さである。

そして、信者に説教をする時に、ダビデとゴリアテの話を見事なパントマイムで説明するのだが、大人はしかめっ面で子供だけが大喝采するのである。
何かこのチャップリンを見ていると牧師の仕事と言うものが極めて胡散臭いものに感じられてくるのだが、この描写により、全米の教会から「福音書や聖職者への侮辱である」であるという、クレームを受け、州によっては上映禁止処置までとられたという。

しかし、チャップリンのパントマイムを見ていると、目で見たものだけでも多くのインスピレーションが洪水の様に与えられるという事実に気づかされる。実際のところ、目と耳の両方から同時に何かを得ることによって、多くのものが失われているのかもしれない。


■映画史上最も憎めない悪がき


何よりも最高のギャグ・シークエンスは、チャーリーと悪がきの父親(シド・チャップリン)が悪がきに散々に悪さをされるシークエンスである。とにかくこの悪がきの凶暴度は映画史上最強だろう。悪がきのビンタが見事にチャーリーの目や鼻を打ちのめしているのである。それでいてこの悪がきなかなか憎めないところが素晴らしい。
実際のところ、チャップリンは映画の中で、ビンタしたがらない大人しい礼儀正しいこの子に「もっと本気で殴りなさい!」と叱ったという(さすがチャップリン演技指導は厳しい)。

ちなみにこの悪がきを演じたディーン・ライスナー(1918−2002)は、後に脚本家となり、『ダーティハリー』(1971)『恐怖のメロディ』(1972)『突破口!』(1974)などの傑作を輩出した。本作においてチャーリーの刑務所仲間役で出演しているチャック・ライスナーが実の父親である。

チャック・ライスナーはのちにバスター・キートンの『蒸気船』(1928)『マルクス兄弟デパート騒動』(1941)の監督として有名になった。


■情緒的なすがすがしい幕切れ


さわやかなラストシーン。保安官は脱獄囚であるが、ミス・ブラウンのお金を取り戻した、根は善人なチャーリーを、アメリカ=メキシコ国境に連れて行き「私に花を摘んでくれ」と言って、メキシコ側に逃がそうとするのである。

鈍感なチャーリーはなかなかその意図に気づかずにクソ真面目に花を摘んで保安官に渡す。「じゃああっちの花も綺麗だな・・・」と言ってメキシコ側にある花を指差し、チャーリーはその花を摘むのだが、あろう事か去っていこうとする保安官を追いかけてアメリカ側に戻って、花を差し出すのである。

その鈍感さに痺れを切らした保安官はチャーリーをふん捕まえて再び国境に追いやり、蹴飛ばしてメキシコ側に追いやるのである。ようやく保安官の温かい意図に気づいたチャーリーは、自由を獲得して大喜びして「おお・・・ついに平和をつかんだ」と喜ぶ矢先にカウボーイ達が撃ちあい死んでいく姿に直面するのである。驚いたチャーリーは国境をまたぎながら何か起こったらどっちにでも逃げれるようにして去っていくのである。

まさに『モダンタイムス』(1936)のラストシーンを髣髴させる情緒溢れる名ラストシーンである。本作を最後にチャップリンは長編喜劇の名作を連発していくのである。ちなみにこの作品がエドナ・パーヴィアンスとの最後の共演作になった。

本作はどちらかというとその思想性よりも目で見て単純に楽しめる喜劇性を追及した作品である。

− 2007年7月1日 −


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