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サロン・キティ   SALON KITTY(1976・イタリア/フランス/西ドイツ)
■ジャンル: エロス
■収録時間: 124分


■スタッフ
監督 : ティント・ブラス
製作 : ジュリオ・スパジリオ / エルマンノ・ドナーティ
脚本 : エンニオ・デ・コンチーニ / マリア・ピア・フスコ / ティント・ブラス
撮影 : シルヴァーノ・イッポリティ
音楽 : フィオレンツォ・カルピ


■キャスト
ヘルムート・バーガー(ヴァレンバーグ)
イングリッド・チューリン(キティ)
テレサ・アン・サヴォイ(マルガリータ)
ティナ・オーモン(ヴァレンバーグの妻ヘルタ)
サロン・キティ
ヴィスコンティの『地獄に堕ちた勇者ども』と『愛の嵐』の影響を受けて作られた作品だったが、出来上がったものは前二作に比べると、どうしようもないほどに中身の薄い作品だった。この中にはデカダンスもエロスの本質もない。あるのはただただ中途半端な女性の裸の羅列と中身の薄い独りよがりな男の自滅だけだった。

■あらすじ


第二次世界大戦中のドイツ・ベルリン。上昇志向の強いナチス親衛隊将校ヴァレンバーグ(ヘルムート・バーガー)は、マダム・キティ(イングリット・チューリン)の経営する高級娼館サロン・キティ≠利用して、政府高官のあらゆる情報を盗聴することにより、権力の頂点に駆け上がろうとする。しかし、彼が愛人にした娼婦マルガリータの裏切りによりヴァレンバーグは思わぬ境地に立たされることになる。


■一度はシドニーにあるSMクラブ「サロン・キティ」に行ってみよう


サロン・キティ
私がオーストラリアのシドニーで、広告代理店で働いていた頃、サリーヒルズにあるクリーブランド・ストリート沿いに「サロン・キティ」というSMクラブがあった。オリンピック前の時期でもあり、日本人観光客に向けての夜の広告を獲得しようとしていた私は、シドニーでも老舗のこのSMクラブに目をつけた。

サリーヒルズという場所は、セントラル駅から降りてすぐの場所だが、レッドファーン、チッペンデールというシドニーのスラム街に隣接しており、治安の悪いチャイナタウンとも近い、売春宿の濫立する地帯である。要するに殆どの日本人が、この地域では活動していないような不健全な場所である。

そんな地域の中でも売春宿の密集地帯と言われるのがクリーブランド・ストリートである。概観は寂れた住宅の並ぶストリートにインド食料品店がぽつんとある通りだが、何か殺風景な雰囲気がただよっており只ならぬ雰囲気がある。
通りは廃れているが、この通りにある売春宿はシドニーの中でも有数のトップランクの店が多く存在する。

殆どの高級エスコートサービスの事務所もココかノースシドニーかポッツ・ポイント(シドニー最大の歓楽街キングスクロスのすぐ近く)という場所にある。そんな中でも20数年の歴史を誇るSMクラブが「サロン・キティ」である。概観は普通の民家であり、分かりやすいように大きなプレートに番地名だけ掲げられている。

ココで、もしシドニーに観光やワーホリや出張で行かれる方がいたなら参考にしてもらいたい。一流の売春宿は周りの民家に迷惑をかけないように一切それらしい雰囲気の看板などは出していない。唯一民家と違う点は、入り口付近にカメラがあるか、やたら分かりやすい場所に番地のプレートが掲げられているかだけである。

私が「サロン・キティ」に伺うとアマンダという品のいい中年女性が出てきた。彼女に導かれ、中を色々見せて貰う。監禁する牢屋、磔台、鞭、ラバーマスクやボンデージなど様々なSM道具が綺麗に陳列されている。更にミストレス(女王様)にも何人か会う。皆長身でメイクが濃いが、実に好印象を与える落ち着いた口調の人ばかりだった(売春宿の中にはドラッグの影響で少し行動がおかしい人や日本人を食い物にしようと馴れ馴れしい美人がよくいる)

しかし、一度プレイに入ると完全なプロであり、素晴らしいと賞賛出来るほどの女王様振りを見せてくれた(丁度この日に来ていたお客様が人に見られて虐められるのが好きな人だったので、私も観客になった)。

そんな素晴らしいSMクラブ「サロン・キティ」の名前をつけるきっかけになったのが、この作品であるとオーナーから聞き及び是非とも拝見したいと気になっていた。本作の主演俳優の二人はヴィスコンティの『地獄に堕ちた勇者ども』の主演俳優の二人=ヘルムート・バーガー(1944− )とイングリッド・チューリン(1926−2004)様である。そして、時代設定も同じくナチスに支配されたドイツであり、ナチス親衛隊の絡む話である。


■妖艶に踊るチューリン様の魅力


サロン・キティ サロン・キティ
オープニングからチューリン様が弾けてくれる。
しかもこの弾け方が並みではない。ゴージャスなブロンド美女風に登場したかと思いきや逆の方を向くと実にダンディな男性のメイクと服装というこだわりぶり。アニー・ロスが吹き替えで唄うスコアもさすがに一流ジャズ・シンガーだけあって文句なしに素晴らしい。

このオープニングシーンにはやられた。全体的にチューリン様のミュージカル・シーンは、チューリン様のバレエの素養がものをいったのか、実に軽やかで素晴らしい。

そして、もう一点素晴らしいのが、この作品の良く出来たセットの造型である。プロダクション・デザイナーが007映画で有名な芸術家肌のケン・アダムだけあって実に良い。しかし、良かったのはココまでだった・・・


■いい素材もティント・ブラスにかかれば・・・


サロン・キティ
「殺人と同じで最初は難しい。後悔の念に悩むかもしれない。しかし経験さえ積めば、気楽に遂行できるだろう。やがて快感を覚えるようになるはずだ」

そして、オレの女友達のポールダンサーが敬愛する全裸でナチ式敬礼をした後に、性の開拓シーン≠ヨと突入していく。
「同士諸君衣服を脱げ」の掛け声の下、鉤十字の旗の下、乱交に励む数十人の男女・・・しかし、ココはティント・ブラス。そんな美味しいシチュエーションも、演出がダメなので全く生かしきれていない上にカメラワークに到っては悲惨なほど良くない。

「精神医学センターの協力で各人の適性を診断する 何をされても拒んではいけない 性交、アナルセックス、マスターベイション、フェラチオもだ」

この人の撮る作品は、「エロスの帝王」などと言われている割には、全然エロスの部分がよろしくない。エロくもなければ、フェチっ気もなく、情緒的でさえもない・・・



■ナチスを演じたにしては魅力に欠けるバーガー


サロン・キティ サロン・キティ サロン・キティ
高級娼館「サロン・キティ」で働くに適応した美女を選別するために、ユダヤ人の捕虜が入れられた牢に一人づつ候補の女が送り込まれる。女同士で、みすぼらしい老人、醜い男と・・・セックスする女たち。それを格子越しに眺めるヘルムート・バーガーの眼の輝きの妖しいこと。

しかもセリフがかなり不気味。「失格した女は解放せずに再教育しろ!」やら「相手の人間は全て処分しておけ!」と言った非人道的極まりない役柄なのである。

ヘルムート・バーガー サロン・キティ
しかもこのどうにも素晴らしすぎる衣装のセンス。矢沢タオルばりのマフラーにブランデー。さらにはハカイダー並みに、ガキ受けしかしないスーパーSSファッション。ん〜〜このセンスにはバーガーも閉口したのではないか?


■ごく当たり前の権力者の女に対する振る舞い


サロン・キティ サロン・キティ
「今までの生き方を破壊して新しい世界を受け入れろ!それが再生だ。言うとおりにしたら権力を与えよう」

バーガーが娼婦マルガリータを自分のものにする為に言うセリフなのだが、これって
芸能界のオーディションなどで日常茶飯事的に繰り広げられているエロオヤジとすぐに股を開くバカ女の構図に過ぎないんじゃないか?・・・と早くもナチスの本質やらデカダンスやらとは関係のない次元の話にがっかりさせられる。

別にナチスでなくとも、男性の分かりやすい性質の一つとして、権力を行使して女性を食い物にしていく性質があるので、このバーガーとマルガリータの関係には何ら知的な刺激を受けない。


■退廃的とは、老醜を晒すという意味ではない

サロン・キティ サロン・キティ サロン・キティ
「娼婦の暮らしは本当はどんなものか、きづいた時には遅すぎる」

「こんなところで何してるの?若くて綺麗なのにもったいない・・・身を落とす必要はないわ」


女装して戦争の指揮をとる将軍、ナチスのフィルムを流してペニスの張り子の様な特注パンを女に与えるナチス高官の老人・・・
退廃的というよりも老醜が晒されているだけというお粗末な描写が中途半端に続き、娼婦であることを苦に感じた主婦が自殺する。

・・・というか女性の中の葛藤を、本気で描いていないので観ていて何が起こっているのか理解しづらい点が多い。この作品に関しては正直一つの作品として成立しているとも言いがたい。


■これをヴィスコンティやカヴァーニとは比較するべきではない


サロン・キティ イングリッド・チューリン
果ては
「愛の営みは自由で清らかなものなのに」という、娼婦を束ねるマダムの言うセリフかよという迷言まで飛び出し、すっかりダメダメな薄っぺらな展開の果てに、物語は冴えなく老けたバーガーと、これまた魅力に欠けるテレサ・アン・サヴォイ(=マルガリータ)の駆け引きとも言いがたい間抜けな展開を見せ付けられるのである。

さすがのチューリン様も物語の中盤には既に暴走モードに入っていた。正直・・・全く魅力的ではない。空襲を受けて吹っ飛ぶ娼館の中でシャンパン片手に狂気の大笑いを見せ付けるシーンなぞは、見せ場のはずなのだが、そういった感情の流れを全く伝え切れていないので、観客には失笑しか生み出さなかった。

サロン・キティ テレサ・アン・サヴォイ
「国家社会主義など誰も信じてはいない!権力闘争しかない!主義も理想もない!」

間抜けにもマルガリータの思う壺に、自分でナチスの悪口を独白するバーガー。その姿は断崖絶壁で何故か突然ご丁寧に事件の回想をし始める火曜サスペンスの犯人の姿そのものに陳腐で恥さらしだった。


■唯一の救い


サロン・キティ サロン・キティ サロン・キティ
唯一のエロス・シーンはこの美女の肢体だけと言っていいだろう。そして、下の写真の女性であるティナ・オーモン(1946−2006)の愛らしい容貌も救いと言えばまぁ救いだった。

ティナ・オーモン ティナ・オーモン ティナ・オーモン
本作は1979年に
『ナチ女秘密警察 SEX親衛隊』という題名で公開され、全くヒットしなかった(そりゃそうだろ?)。物語は一様実在した高級娼館『サロン・キティ』のマダム、キティ・シュミット(1882−1954)がナチス親衛隊情報部と協力し、盗聴器を仕掛け、娼館を訪れる他国の外交官や自国の政府高官や軍人に対する諜報活動を行なった事実を基にしている。

最も実際のマダム・キティも、1939年にドイツから亡命しようとしたが、オランダ国境で捕まり、情報部に協力するか強制収容所行きかどちらか選べと言われて嫌々協力したらしい。そして、親衛隊によりベルリンで数十人の美しい売春婦が逮捕され、20人の情報部員の女性と共に7週間のトレーニングを受けさせ、1940年3月より再オープンしたという。

ポーランド侵攻作戦を始めとする電撃作戦で多大なる戦功をあげたヨーゼフ・ディートリッヒ(1892−1966)SS大将に到っては全20人の娼婦を集めて大乱交セックスに励んだという。
ゲッペルスもこの館の常連で、レズビアンショーを楽しんでいたという(彼は公衆の面前では同性愛は祖国の敵だと吼えていた)。

やがて戦争の激化と共に「サロン・キティ」は空襲の直撃を喰らった事もあり、情報部の手から離れていった。しかし、20人の訓練された娼婦にはそれ以外の仕事もなく娼婦として働き続けた。キティは1954年に死ぬまで情報部との関係は決して口外しなかったという。

− 2007年12月3日 −


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