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新悪名   (1962・大映京都)
■ジャンル: ヤクザ
■収録時間: 99分

■スタッフ
監督 : 森一生
原作 : 今東光
脚本 : 依田義賢
撮影 : 今井ひろし
音楽 : 斎藤一郎

■キャスト
勝新太郎(八尾の朝吉)
田宮二郎(清次)
中村玉緒(お絹)
浜田ゆう子(月枝)
藤原礼子(お照)
万里昌代(お雪)
茶川一郎(お銀)
新悪名
レイプされた女への朝吉の一言「そんなことおまえ人間誰にもあるこっちゃ。一回や二回。な?けつまずいて道で怪我したんと同じこっちゃ」。在日朝鮮人への朝吉の一言「せやけどやなぁ。こういうときやからこそちゃんとするべきやろ。それをあんなことしたらやっぱりあかんやっちゃ思われてもしゃ〜ないやないけぇ?」。今このセリフを吐いたらなんて無思慮な人と思われかねない。でも人が相手に何かを伝える時、今の時代はあまりにも繊細過ぎやしないだろうか?言葉の持つ力とは、無思慮であろうともその中に込められた思いのはず。思いやりを繊細さと履き違えている現代人にこそ朝やんの優しい心根を味わって欲しい。そして、この作品からは間違いなくソレが味わえるはず。

■あらすじ


14年ぶりに八尾に復員した朝吉(勝新太郎)。戦死したものと思われていたので、妻お絹(中村玉緒)は別の男と結婚し子まで儲けていた。すっかり落胆した朝吉は、戦後の闇市で懸命に生きるモートルの貞の妻お照(藤原礼子)と共に雑炊屋をする。そんな折、貞とそっくりなアメリカかぶれのポン引き男国際友好倶楽部の理事長=E清次(田宮二郎)と知り合う朝吉だった。『悪名』シリーズ第三弾。


■清次とお雪 いいカップルやなぁ


万里昌代 新悪名
万里昌代と田宮二郎が最高にイイ!特に宣伝フィルムの万里昌代が髪をわさぁ〜っとする姿が衝撃的!そこには豊かに実ったワキ毛が!逞しいよなぁ〜昭和の女は。
どうせ男ならこんな逞しい美女に膝枕されたいよな?まさに女豹のような万里昌代の魅力と、清次になってやけに髪形が格好良くなった田宮二郎の今でも通用する美男美女<Rンビがノリに乗っている!

悪名』パワー留まる所を知らず!しかも
1961年に「鉄砲節河内音頭」を大ヒットさせた鉄砲光三郎(1929−2002)の河内音頭まで聞ける豪華さ。神社の境内で飲み食いする姿。オレの地元(京都の最南端)の神社の境内でもたまにこんな感じでおっさん達が飲み食いしてたなぁ。80年代頭でも・・・。なんかオレ的にこういう雰囲気とても好きだね。


■本気で戦えばこそ・・・負けてもなお逞しかった


新悪名 新悪名
「農地改革・・・戦争に負けてよかったのはこれだけや」

オレが経験した事のない時代の空気を映画の中から掴み取る。映画というものから、ニュースフィルムや歴史の教科書では窺い知れない、当時の庶民の息遣いが聞こえてくる瞬間がある。14年ぶりに八尾に帰ってきた朝やんは、戦死したものと思われており、妻も再婚していた。

当時どれだけの人が、こういう朝やんのような状況の中帰国したんだろうか?戦争が生み出す悲劇の一端がなんか見えてくる。戦争から帰ってきて、お国のために戦ったはずが、肝心のお国はこの有様。しかし、歯を食いしばって逞しく生きる庶民の姿。昔の人々は本当に逞しかったよなぁ。


■勝新と玉緒と田宮


新悪名 新悪名
新婚ほやほやの勝新太郎(1931−1997)と中村玉緒(1939− )が、別れ別れになる役柄を演じるという実生活とのギャップが実に面白い。
しかし、あくまでも私的感覚においてだが、この時点においては玉緒の方が、勝新よりも遥かに芝居に迫力があったなぁとオレは感じてしまう。

この頃の玉緒もそうなのだが、いつの時代においても玉緒の芝居というのは、
相手役にとってもっともやり易く最もやりにくい女優だったのではないだろうか?この人の独特な(超絶的な)演技力が相手役を食い潰しもすれば、生かすこともしていた現状を理解すれば、ここ10年の彼女の芝居がなぜ一人芝居において輝いているのか納得がいく。そして、そこに彼女の悲劇があるんじゃないかと思う。この人はもっともっと芝居を昇華させられる人である。ただし、張り合える相手役がいればの話だが・・・


■価値観の喪失感を感じる戦後と今


新悪名 新悪名
とにかくこの時代の大映京都作品はセットが全て素晴らしい。特にこの闇市セット。こう言うと語弊があるが、なんかこの箱庭感覚が凄くいい。
小さな空間で必死に生きる者たちの熱気を清潔感に満ちた汚しっぷり≠ナ表現するその美術感覚は、並みではない感性だろう。

この作品の中で、朝やんにとって未知の言葉が洪水のように流れ込んでくる。この第三作目の魅力は、ここにある。
新しい言葉の洪水が先導する新しい価値観。今まで鬼畜扱いだった米兵と神のような存在だった天皇陛下の存在が完全に逆転し、国家のためにから、己のためにという価値観の反転の中、人々は、頭で考えるよりも本能で生きるようになっていく。

今日の飯の種を掴むために立ち止まることが許されず、闇雲に前進する日本人の姿。パンパンであろうとも、チンピラであろうとも、闇市の住民であろうとも、善悪以前にまずは、流れにのっかかって前に進まなければという気分で生きているこの時代の独特な感覚。

変に利口じゃないぶん前進するスピードもまた速い。この作品の妙味は、戦後直ぐの日本人の感覚を見事に描いてる様なところにあり、戦後を知らないオレにとっても、今と昔の価値観の喪失時代の共通点とそうでない点を実感できるところにある。


■ココに戦後の匂いがあったからこそ・・・


新悪名 新悪名
「わいの勘では合点がいかんのじゃ!」
朝吉

露骨にもさいズラになってから朝やんの魅力は急激に半減する。そして、それに反比例するかのように清次の魅力が燦然と輝く。とにかく戦中・戦後派のギャップを表すかのように、会話一つとっても全く噛みあわない2人。やけに素晴らしい発音の英語と関西弁を組み合わせた清次の話術に圧倒されまくりの朝やん。

そして、いざ喧嘩になってもボクシングの構えをする清次と噛みあわない可笑しさ。
この作品の魅力は、情に厚い朝吉と情よりも利にあざとい清次のギャップにあった。そして、そんな不器用に生きる戦中派と、器用に生きる戦後派が、奇妙な共同作業をする事により、長所短所を補いながらお互いに感化しあい、物事を解決していく姿に観客はカタルシスを覚えたのである。

そして、戦後の焼け野原の匂いが作品の中から遠のいていくに従いこの作品の魅力は著しく喪失していったのである。


■本編最高のセリフ「足の方で合わしときぃ〜」


新悪名 新悪名
「靴屋やでェ〜金出しやぁ!金出したら渡したる」トラックに乗って靴を売る清次
「おいっ!これ片チンバやないかい!」靴を買ったオヤジ
「足の方で合わしときぃ〜」そういってトラックで去る清次

とにかく最高に輝いている田宮二郎(1935−1978)。森一生曰く。
「田宮二郎も乗ってやってたです。・・・二枚目の気取りがかえって生きたんです。案外気が小さいんですよね、田宮二郎は。映画はよく見てて、演技もよく見てるし、勉強してるんですけどね。インテリなんです。ただ、それを知ったかぶりしないといいけど、ときどきやるから(笑)。人は良かったですなあ。だから、自殺するちゅうことになったのか。俗物さがなかったですな」

そして、もう一人抜群に輝いているのが、清次の妻・お雪役の万里昌代(1937− )。新東宝時代グラマラスなイメージで売り出していたので、そういった余韻のある役割を演じているが、この女優さん本当に現代でも通用する美貌の持ち主だ。


■オカマのお銀参上


新悪名 新悪名
「なんだいにらみやがって!ちっとも怖かないよ〜」お銀

この作品には2種類の魅力的な少数派が登場する。オカマのお銀と在日朝鮮人の堀さん。特にお銀に扮する茶川一郎(1927−2000)が由利徹のオカマ芝居よりもおすぎとピーコの地の仕草よりも、遥かに魅力的だ。朝やんの顎をこちょこちょしたり、朝やんが寝ている隣で脛毛を剃ってたり・・・とにかく目がギョロギョロしていて一度見たら忘れられない。

オレが20代始めにこのシリーズを網羅した時に、この人の登場を毎作ごとに待ち望んでいた。それほどお銀は魅力的な存在だった。今のただ大げさなだけのオカマ芸人達に比べて、
この人のオカマ芸には、女にも男にもない妙な魅力が存在している。ココが今時の男にはキモイだけであり、女にはかわいいといわれるオカマ芸人との違いである。


■一流ホステス顔負けの殺し文句を連呼する月枝


新悪名 新悪名
「わてなぁ髪じょきじょき切られた時に朝きっつぁん好きになってん。この人のためなら死んでもエエおもた・・・身震いするほど好きになってん・・・朝きっつぁんの子供産みたい」

素晴らしいセリフだよな。女からココまで言わせる朝やん。ズラはもさいがカレーライスの食べっぷりといいやっぱり格好良すぎる。はにかみながらずけずけと男を落とす文句を一流ホステス並みに吐き捨てる女・月枝を演じるのは、浜田ゆう子(1939− )である。

こんなカワイイ女にココまで言われたら男冥利に尽きるよな。男だったらあるだろ?「あんたのためなら死んでもいい」とか「あんたの子供産みたい」とか「○○さんってもてるでしょう?」って言われたこと。この瞬間が男としての最高の瞬間だよな・・・ホンマ男って単純な生きもの。


■戦後の闇市から立ち直っていく日本の姿

新悪名 新悪名 新悪名
そして、最後のシバキ合いでズラを脱ぎ捨て着流しになった朝やん。もうこの瞬間清次の存在感をどっと食い潰し、一瞬で朝吉・オン・ステージへと観客を導いていく。この絶対的存在感。これがスターの魅力であり、金払ってでも見たい男の姿である。
テレビはタダ。映画は有料。だからこそ映画スターはテレビスターよりも遥かに格上だった。

「おまえが受けた傷はまあ大層な話やけど 日本が受けた傷や」


そんな素晴らしいセリフと共に故郷八尾に帰っていく朝やんと月枝。「リンゴの唄」をバックにびっくり雑炊をこしらえる清次、お雪、お照、お母さん・・・本当に温かい幕切れで本作は終幕を迎える。

− 2008年2月9日 −


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