HOME
■サイト内検索

■洋画
 □カタカナ順
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 □クラシック
 □ドラマ
 □コメディ
 □サスペンス
 □アクション
 □ポリス
 □スパイ
 □犯罪
 □カー
 □ミュージカル
 □史劇
 □文芸
 □戦争
 □西部劇
 □アドベンチャー
 □パニック
 □ギャング、マフィア
 □SF
 □ホラー
 □スポーツ
 □香港
 □ドキュメント
 □アニメ
 □エロス
 □B級
 □アカデミー賞
 □カンヌ映画祭
 □ヴェネチア映画祭



■邦画
 □ひらがな順
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 □名作
 □ドラマ
 □喜劇
 □サスペンス
 □アクション
 □刑事
 □時代劇
 □戦争
 □文学
 □パニック
 □東映ヤクザ
 □ギャング、ヤクザ
 □特撮
 □怪奇
 □ドキュメント
 □アニメ
 □エロス
 □B級
 □海外映画祭受賞
ソイレント・グリーン   SOYLENT GREEN(1973・アメリカ)
■ジャンル: SF
■収録時間: 98分

■スタッフ
監督 : リチャード・フライシャー
製作 : ウォルター・セルツァー / ラッセル・サッチャー
原作 : ハリー・ハリソン
脚本 : スタンリー・R・グリーンバーグ
撮影 : リチャード・H・クライン
音楽 : フレッド・マイロー

■キャスト
チャールトン・ヘストン(ソーン)
エドワード・G・ロビンソン(ソル)
リー・テイラー=ヤング(シャール)
チャック・コナーズ(タブ)
ジョセフ・コットン(サイモンソン)
ラストシーンのその一言のためだけに存在するSF映画。ヘストン扮する刑事の悪徳ぶりには感情移入できないはず。モノは盗むし、女とは職権乱用してエッチするしとその悪徳振りを棚に上げて、最後は正義を振りかざす。ある意味アメリカそのものな偽善的ヒーローを堪能せよ。

■あらすじ


食糧難、治安の崩壊、人口膨張に苦しむ2022年の近未来ニューヨークを舞台に、ソーン刑事(チャールトン・ヘストン)が、殺人現場の被害者宅で見つけた二冊の本。その中には驚愕の事実が記されていた。ソイレント・グリーンという配給食糧についての謎を解明するためにソーンは、ついに秘密の工場に潜伏成功したのだった。


■この絶望的な世界観


1973年にこの作品を作り上げたことが賞賛である。2022年のニューヨークの設定で人口4000万人のうち2000万人が失業している。さらには食料は配給制であり、住居に関してもほとんどがホームレス状態という悲惨さの中で、新たに配給されることになったソイレント・グリーンの原材料についてふと知ることになった警官の話である。

その絶望的な内容ゆえ、閉塞感が感じられる。美女は、「家具」となることにより、高級マンションで生活でき、知性のある老人は「本」となることにより、衣食住は確保できる。そして、壮年男性は、「暴徒」や「ギャング」になることにより、同じく衣食住、そして、女を確保するのである。そういう世界観の説明は、会話の中で見事に行われていた。



■映像としての世界観作りの陳腐さ


物語の設定はいいのだが、『海底二万哩』(1954)という歴史的傑作SFを撮ったフライシャーにしては、映像上の世界観作りが陳腐であった。2022年が舞台と言うことになっているが、映像上での時代設定の説得力はかなり薄い。1973年を舞台にしています。といっても逆に通用するほどに近未来感が気薄であった。

それは特に登場人物たちの服装の影響によるものなのだろう。50年後の世界を描いて衣装がこれでは、あまりにお粗末過ぎである。ちなみにシャールが最初の方でゲームをしていたが、あれはご愛嬌としか言いようがない。思わず1970年代のアタリかなにかやんと突っ込んで失笑してしまった。



■登場人物のアンバランスさ


さらに2人の登場人物を除いて本作の登場人物はことごとく時代設定にあわないキャスティングだった。まずは言うまでもなくチャールトン・ヘストン(1924− )。『猿の惑星』では最も類猿人に近いそのルックスと現在から未来にやってきたと言う設定上問題ではなかったが、本作においては、近未来の人を演じているので問題がある。食糧不足問題の映画の内容で、あれほどの体格だととうてい飢えているようには見えない。

チャールトン・ヘストンは元々西部劇や史劇のスターである。その彼がSFをすることは、まさにジョン・ウェインがSFに主演しているようなものであり、歯切れが悪いのである。この作品は28〜35才の役者を主役にするべきだった。ヘストンには、死人の家から物をくすねたり、職権乱用して女を抱いたりと言う役柄は似合わないのである。

そして、チャック・コナーズ(1921−1991)ももう少し若い役者にさせるべきだった。さらにジョセフ・コットン(1905−1994)に関して言えば5分にも満たないゲスト出演である。


■2人の魅力的な登場人物


文句なしに本作の実際的な主役と言えるのが、エドワード・G・ロビンソン(1893−1973)である。この人悪役が主だったが年をとるにつれて味わい深い魅力が出てきた人である。とにかくとぼとぼ歩く姿や、その潤んだ目、全てが本作にはまっていて良かった。彼の存在があったからこそ、ヘストンはまだ救われている。

本作が遺作となったロビンソンは撮影時にはすでにほとんど耳が聞こえない状態だった。
そんな状態でも的確な芝居を行っている姿が、作品の内容にもかかわらずこの物語をただの安っぽい映画で終わらせない映画に変えていった。

そして、「家具」シャールを演じたリー・テイラー=ヤング(1945− )。175pとかなり長身の人である。本作以外は代表作と言える作品には出ていないが、本作においては見事に「家具」としての魅力を発散していた。ちなみにかつてはライアン・オニールと結婚(1967−74)している。


■ソルの尊厳死


ホームという概念はなかなか普遍性があるよい観点である。ホームとは、安楽死をするための巨大建造物であり、薬物を投与したあと20分で過去の地球の大自然と心地よい音楽の中で死を安らかに迎えることが出来るのである。この発想は、今現在においても心の奥底では求めている老人の方々が多いのではないだろうか?

生きていくことの大切さと、尊厳をもって人生に折り合いをつけていく大切さは、高齢化社会にあたって、かなり奥の深いテーマである。

このソルの安楽死のシーンは、チャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』からベートーヴェンの交響曲第6番『田園』、そして、グリーグの『ペール・ギュント』が流れる実に尊厳溢れるそれでいて悲しいシーンなのであるが、このシーンの撮影は、撮影全体の最後に行われ、その時ヘストンだけがロビンソンが癌であり、余命いくばくもないことを知っていた。そして、その盟友に対する気持ちが、当初は台本になかった涙を流すシーンへと転化して言ったのである。ちなみにロビンソンはこの撮影の9日後に死去した。


■男尊女卑と人種差別


エキストラ500人を動員して一週間がかりで撮影された暴動シーンに関しては、ただ大人数を画面で捕らえてるだけで、迫力に欠ける。こういたシーンを見せ付けられると黒澤明のダイナミズムたっぷりな群衆シーンの撮影のうまさを実感させられるのである。

しかし、何よりも重要な点として押えておきたいのが高級マンションの「家具」=美女の存在である。一方、警察などの機関では、黒人が上司と言う人種差別のない社会が形成されているのである。疑問に思うのは、こういった政治が崩壊し、企業と警察の独裁国家になった場合、まず起こるのが、男尊女卑ではなく、人種的緊張だろう。

女性を「家具」のように扱う社会が存在しえるとは到底思えないし、この点に関しては明確なる社会学的な認識の欠陥だと思える。

しかし、もちろん美女の「家具」つき高級マンションに男のロマンを感じないかと問われれば、間違いなく男のロマンを感じると私は答える。特にヘストンがマンションを再訪したときに美女が10人くらいくつろいでいるあのシーンを見て、熱くなれない男は男じゃないだろう。


■ソイレント・グリーンは人肉だ!


全般的に本作は緊張感の溢れない展開なのだが、ソイレント・グリーンの謎を突き止める過程においては致命的なほどに緩い展開である。廃墟の発電所で撮影されたのがばればれな非近未来的な場所で、人間が原料だったと言うことが気づくのだが、そこへのもって行き方が見事なまでに下手糞過ぎる。カメラも音楽も役者も完全な緊張感の途切れた仕事ぶりなのである。

そして、ソーンはラストに言う。
「ソイレント・グリーンは人肉だ!早く何とかしないと、今に食糧生産のために人間を飼うようになる!」映画はここで終わるのである。


■映画の陳腐さに対して、現実味溢れる警告


映画自体はお世辞にも良作とはいえないが、温暖化や食糧及び水不足、人口増加、国家の崩壊などというテーマは、2007年においても現実味溢れるテーマである。世界的に環境汚染や人口の増加に関心を持ち始めた1970年代だからこそ生まれた作品だが、昨今はこういった問題に関しての関心が失われすぎではないだろうか?

ショッピングセンターの大型店舗化、コンビニ、ドラッグストアの乱立化によって、食糧の流通の激化と相乗効果で、処分する食糧も激化しているのである。ちなみに日本の食糧自給率は約40%である。つまり、約60%を海外から輸入しているわけである。

水も空気も食糧も、高額化していく時代がもうそろそろやってくるのかもしれない。自然を破壊し、人類のみの繁栄を考えたつけはやはり神学的に言うと払わされる可能性が高そうである。

ちなみに本作は、1966年に刊行されたハリイ・ハリスンの『人間がいっぱい(MAKE ROOM!MAKE ROOM!)』が原作である。ただし原作の設定は1999年から2000年だったが2022年に変更されている。タイトルのソイレントとは、SOY(大豆)とLENTIL(レンズ豆)からハリソンが合成した新語である。

− 2007年5月21日 −


Copyright (C) 2007 Geijyutsu Taizen. All Rights Reserved.