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恐怖 TASTE OF FEAR(1961・イギリス) | |||||
| ■ジャンル: サスペンス ■収録時間: 82分 ■スタッフ 監督 : セス・ホルト 製作 : ジミー・サングスター 製作総指揮 : マイケル・カレラス 脚本 : ジミー・サングスター 撮影 : ダグラス・スローカム 音楽 : クリフトン・パーカー ■キャスト スーザン・ストラスバーグ(ペニー) クリストファー・リー(ジェラード博士) アン・トッド(ジェーン) ロナルド・ルイス(ボブ) |
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■あらすじ 事故に遭い車椅子での生活を余儀なくされる富豪の娘ペニー(スーザン・ストラスバーグ)は、母を捨て別の女性と結婚した富豪の父親によって、一緒に住もうとフランスに呼び戻される。10年ぶりに再会するはずだった父と娘。しかし、フランスについたペニーの前には父親の姿は無かった。そして、義理の母ジェーン(アン・トッド)とその友人のジェラード博士(クリストファー・リー)が既に父親を殺しており、遺産相続のために自分も殺そうとしていると疑惑を抱くようになる。 ■サスペンスを堪能したければ英国 サスペンス劇でどんでん返しモノと言えばやはり英国が強い。本作もシンプルながら最後への持って行き方は、見事でありグイグイと惹きつけてくれる。大金持ち、可憐な娘、車椅子、ハンサムで頼りがいのある男性、見るからに怪しい男、そして、断崖絶壁と消える死体。これだけの条件が揃えば十分だろう。 モノクロの映像の中で繰り広げられる心理劇をただただ堪能しよう。もっともっと評価されて然るべき作品。ヒッチコックやクリスティが好きな人なら分かるはず。この作品の魅力と、クリストファー・リーの意味深な役割が。 人生とは、親切そうな人間が、あなたを崖から蹴落とそうと虎視眈々と狙っており、冷たそうな人間が、崖に佇むあなたの肩に優しく手を置いてくれるもの。無言の優しさをリーが体現したからこそ、異様な説得力がラストシーンを支配した。 ■愛しのスーザン・ストラスバーグ ![]() ストーリーも文句なしによろしいが、それと同じくらい本作の魅力は、ヒロインを演じるスーザン・ストラスバーグの魅力によるところも大きい。大きな目をパチクリさせながら、アヒルちゃんのような口をパクパクさせ疑念に駆られさまざまな表情を魅せるスーザン。しかもその清楚な外見からは想像もつかないバスティなナイスボディぶり(特に車椅子で前かがみになるスーザンに何も感じなければ、男を辞めた方がいいだろう)。さすが、ハマー・プロ。その編はソツがない。 スーザン・ストラスバーグ(1938−1999)という女優は、その苗字の通り(アクターズ・スタジオの演技指導者)リー・ストラスバーグの娘である。1955年『アンネの日記』のアンネ・フランク役でブロードウェイ・デビューを果たし、早々にトニー賞にノミネートされた。同年『ピクニック』に出演し、以降、『女優志願』(1958)『白昼の幻想』(1967)『マニトウ』(1978)などに出演する。 私生活においては、1957年に舞台で共演したリチャード・バートンに対して情熱的に惚れ、情熱的に捨てられた。基本的に安定した精神の女性であり、マリリン・モンローの親友だった(モンローはアクターズ・スタジオ出身である)。1999年、乳癌によって60歳で死去する。 ■騙されてばかりのような女が、実は騙す側だった ![]() この作品はスーザンにとって『ゼロ地帯』(1960)というアカデミー外国語映画賞にノミネートされたナチ収容所の映画に出た後の作品であり、『アンネの日記』から彼女のイメージとして定着している幸の薄い可憐な少女というイメージを逆手にとった作品である。 この人を騙すよりも、むしろ騙されそうなスーザンが、騙す側に立つ役柄を演じたからこそ本作は実に魅力的なものになった。 ■アン・トッドという素晴らしい英国女優 ![]() 「彼女は妻だったのよ。愛は死んでしまうものなの?」ペニー 「別の愛が(夫を)殺してしまったんだ」ボブ 共演の役者もなかなか魅力的な布陣が揃えられている。のちに薬物により自殺する英国の中堅俳優ロナルド・ルイス(1928−1982)と、デヴィッド・リーンと離婚して間の無い英国の名女優アン・トッド(1909−1993)。そして、クリストファー・リー(1922− )である。 すっかり孤立無援状態の車椅子のペニー(スーザン・ストラスバーグ)が、まんまとジェーン(アン・トッド)とボブ(ロナルド・ルイス)に騙されて、交通事故に見せかけて父親の亡骸と共に断崖絶壁から落とされる。しかし、実はペニーは既に死亡しており、ペニーの友人のマギーという富豪の女性がペニーの振りをして、ジェラード博士(クリストファー・リー)と共に二人を逆に嵌めたというオチなのである。 しかも、その事実を聞かされ落胆して車椅子にへたり込んだジェーンがボブに勘違いされて崖から蹴落とされるという非情のオマケまでつく。そのどんでん返しの巧みさよりも、むしろソツのない物語の展開に、英国という国のサスペンスに対する底力を感じずにいられない。 特にジェーンという女性が、絶対的な悪意で、この犯罪を行なっていなかった点がポイントである。ジェーンが戸惑い、ボブが暴走するという男女の歪んだ関係が、本作をただの薄っぺらなどんでん返しものにしなかった。むしろ極めて現実的なサスペンスだと思わせる何かをアン・トッドが生み出していた。 ■クリストファー・リー 当時39歳 ![]() どこからどうみても怪しい紳士・クリストファー・リー(当時39歳)が実は善人だったという役柄をハマー・プロがする意表をついた嬉しさ。しかし、最後の最後で崖から蹴落とされたジェーンの亡骸を悲しそうに眺めるマギーの肩に、背後から優しく手を置くリー39歳。 今にもドラキュラ伯爵の本性を曝け出しそうなその佇まいで、何の変哲も無い善人を演じきったその姿に、私はしみじみとしたカタルシス≠覚えた。英国のサスペンスの魅力。それはこれ見よがしのどんでん返しにあるのではなく、どこか控えめな演出にあるのである。 − 2007年12月13日 − |
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