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宇宙大戦争   BATTLE IN OUTER SPACE(1959・東宝)
■ジャンル: 特撮
■収録時間: 93分

■スタッフ
監督 : 本多猪四郎
製作 : 田中友幸
原作 : 丘見丈二郎
脚色 : 関沢新一
撮影 : 小泉一
音楽 : 伊福部昭
特技監督 : 円谷英二

■キャスト
池部良(勝宮一郎)
安西郷子(白石江津子)
千田是也(安達博士)
土屋嘉男(岩村幸一)
高田稔(防衛司令官)
宇宙大戦争
1959年の日本は、60年代という時代に大いなる夢を抱いていた。物質的な豊かさが実感できるこの時代に、多くの人々は、人類は素晴らしい方向に進んでいくと心から信じていた。そんな中、月面着陸という人類の夢を映像化した貴重な作品が本作である。日本が世界の中心になって宇宙人に対峙するという自信=B今の時代に失われたもの・・・それは日本という国に対する自信。そして、1959年当時、この作品自体も自信を持つに値する斬新な作品だった。

■あらすじ


近未来の1965年、宇宙ステーションが謎の円盤の襲撃を受け破壊される。同じ頃地球の各都市で不思議な事故が勃発する。そんな中、国際会議が開催され、月面の裏側に地球侵略を目論む遊星人ナタール人の前線基地が存在する可能性があるので、月ロケットを発射する作戦の決定が成される。早速、勝宮一郎(池部良)を始めとする世界各国から選ばれた操縦者達による月面着陸作戦が決行されることになった。


■人類は様々な夢を失いつつある


宇宙大戦争 宇宙大戦争
1959年9月ソ連による月ロケット・ルナ2号が月面に衝突した。人類による月面初到達の瞬間である。そんな年に本作は制作された。
人類がまだ大いなる夢を持ちえた時代。子供が宇宙と世界にロマンと想像力を逞しくさせた時代だからこそ作れた作品だった。

1959年(正確には10月に月の裏側の写真は撮られているが)には、まだ月の実際の姿を誰一人見ていない中で、月面着陸の映画を撮ろうとしたことは快挙としか言いようがない。
想像力を逞しくして作り上げたものを後世の人間が、蔑みあざけ笑う事は簡単である。しかし、最も重要なことは、こういった想像力を純粋に映像化することがいかに先駆者的であり、素晴らしいことかを理解することだろう。

本作制作10年後の1969年7月20日、アポロ11号が人類初の月面着陸を行なった。そして、現在に至っては宇宙に対するロマンは失われようとしている。
我々は「他人の見てきたことを、自分で見たつもりになって満腹感を感じる」という実に貧相な時代に生きている。


■現実をより直視させられる現実から逃避するための清涼剤


宇宙大戦争 宇宙大戦争
「やっぱりお月様にはウサギがおもちをついてたり、今でもかぐや姫が静かに暮らしてると思ってる方が美しいわね」江津子
「しかしね。そういう美しさはどんどん我々人間の世界からなくなっていくんだよ」勝宮

実に印象的なセリフがコレである。まさに現在を象徴しているかのようなセリフである。
現実を直視せよと強迫され、想像力を逞しくすることを軽視しがちな現在。SFでさえも現実的に作り上げなくてはという強迫観念に駆られ、見るものをうんざりさせる想像力の欠落振り。

現実に沿った考え方、現実的な生き方、現実を直視した利害関係、現実に押しつぶされる強迫観念・・・。
現代人は、現実をより現実として直視する中で生きることに、疲れ果てている。そんな時代だからこそ、これからますます古い時代の、想像力の逞しかったSF映画を観たくなる人々が増えていくのだろう。

アニメでいうと「リボンの騎士」のようなあの幻想的な空間。そういった空間に人々は浸りたい。現実の中でより現実を突きつけられる現在において、ますます映像に対する逃避願望は人々の心を惹きつけて止まないだろう。


■やれるか?やってみろ!


宇宙大戦争 宇宙大戦争
颯爽とテンションの高い後光がさす東宝マークから、一転して不穏なスコアに合わせてオープニング早速登場する宇宙ステーションと宇宙船。その手作り感覚たっぷりの映像の中、宇宙ステーションが攻撃され爆破されてしまい炸裂と共にタイトルがバァーンと出る!

この異様なテンションと手作り感覚の特撮技術。『カプリコン1』の世界観を、大真面目に約20年前に先駆けてやろうとする特撮職人達の強気な姿勢。この時代の特撮技術は今のレベルよりも遥かにちゃっちいが、その肝っ玉は現代人よりも遥かに大きいことを知らしめてくれる。

宇宙大戦争 宇宙大戦争
確かにこの作品は、贔屓目に観ても厳しすぎる鈍重な特撮描写が続く箇所が多いが、それは逆に言うと当時月に対して想像力の膨らんでいた人類にとっては、驚愕すべき映像の積み重ねだったはずである。更に言うと、
現代に生きる我々は現実を多く知ることにより(本当かどうかは分からないのだが)、想像力を逞しくさせる能力が退化していっている可能性があるのである。


■いいねえ黄色キャップのこの男


安西郷子 宇宙大戦争
本作の実質的な主役は、一昔前の小学生の男子が登下校の時によく被っていたような黄色キャップを被るこの男である。
相変わらず特撮においては最強のテンションを誇る土屋嘉男(1927− )が、この作品のオイシイ部分を実にわか〜〜りやすくさらっている。

三橋達也の夫人となった安西郷子(1934−2002)が紅一点として出演している。OSK(大阪松竹歌劇団)出身の女優だけあり、目鼻立ちのくっきりしたスタイル抜群の女優さんである。そして、彼女の恋人として池部良(1918− )が出演している。当時40歳を越えているとは思えない若々しさで、相変わらずやる気があるのかないのか分からない芝居を見せているが、本作が特撮映画初主演となる。

この一組のカップルは、全くしっくりこないのだが、実際の所本作は、人間描写よりも特撮の積み重ねに重点を置いた作品である。本作が今日的に観ていて厳しい点は、まさにココにある。月面着陸と宇宙空間での戦闘を魅せる事に重点を置いた分だけ、時が経てば観ていて厳しくなるのは必然である。


■さらば、岩村よ・・・ しかし、物語はまだまだ続く


宇宙大戦争 宇宙大戦争
月面に存在するナタール人の前線基地。その造型の迫力の無さに目をつぶるとしても、たかだか光線銃と宇宙艇一艇により破壊させられる弱さにはがっかりしてしまった。ただし、戦闘シーンの背景にかかる
「宇宙大戦争のテーマ」は素晴らしいスコアであり賞賛に値する。

そして、敵に大打撃を与え月面から脱出を図る勝宮達の前に立ちふさがる円盤群。そこに唐突に一人の男が!そう黄色キャップのあの男=岩村が登場し、自己犠牲のもとに他の人々を逃がすのだ。そんななかなかカタルシス溢れる展開の中、物語は終幕を迎えるのかと思いきや・・・実はそうではなかった・・・

さらば、岩村よ・・・必ず我々は戻ってくるゾ・・・ココで終わった方が良かったのじゃないか?

ちなみに月面シーンは伊豆大島・三原山でロケが行なわれている。そのため月の表面を歩くシーンはなかなか迫力に満ちたシーンになっている。


■遊星人ナタールVS池部良


宇宙大戦争 宇宙大戦争
「残酷なる宇宙人ナタールの野望は・・・」防衛庁長官

本作最大のハイライトは安西嬢を襲撃するナタール人の登場である。ヒャッヒャッヒャ〜〜という変態声と共に唐突に登場する河童のような気ぐるみ遊星人ナタール。そして、その実態は、
ただ安西嬢を取り囲んでオサワリを繰り返す変態集団に過ぎなかった。

しかし、恐るべきは地球人・池部良。オサワリに励むナタール人達の間にいとも簡単に割って入り、しかも一撃のもとに虐殺してしまうのだった。っていうか弱すぎ・・・。だが、そんなにあっさり虐殺してしまう地球人の方が「残酷なる・・・」ではないか?

この
えなりかずき≠ノも似た憎めないナタール人の登場により、本作の評価は急転落下していった。例えて言えばこうである。ウィル・スミスが自分の戦闘機と衝突して墜落させた宇宙人の姿を確認したら実はオサワリ以外何も出来ないナタールだった・・・


■最後の宇宙空間での攻防戦


宇宙大戦争 宇宙大戦争
最後の決戦は地球から発進した地球防衛軍とナタールの円盤群の宇宙空間上でのドッグファイトとなる。何気に防衛軍のロケット部隊が発射台から飛び立つ時の、反動などの描写の芸の細かさが素晴らしい。じっくり観てみると宇宙空間の戦いも実に良く出来ている。

確実に1959年当時、世界中でここまでのレベルで宇宙空間の戦いを演出できる人物は円谷英二以外には存在しなかっただろう。

更に防衛網を突破した円盤群が地球の各都市を攻撃していく。ニューヨークとサンフランシスコの金門橋と東京を攻撃するシーンも、手作り感覚満点で見ていて芸が細かくて実に楽しい。特に金門橋を破壊するシーンはなかなかのものである。


■この時代の邦画にはやはりパワーがあった


宇宙大戦争 宇宙大戦争
そして、最後は実に味気ない終わり方で地球軍の勝利となる。ただフェイドアウトして終わっていくような決め台詞もない。終幕・・・だからこそ岩村の特攻で物語は終わるべきだった。

ちなみに同時上映作品は高倉健と結婚したばかりの江利チエミ主演による『サザエさんの脱線奥様』だった。本作の成功により、東宝は大々的に本格的な特撮映画を多く輩出していくことになる。戦争という苦汁を舐めた世代が作り出した空前の特撮ロマンに満ちた作品の数々は1960年代を持って実質的に終焉を迎えることになる。


− 2007年12月12日 −


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