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バージニア・ウルフなんかこわくない WHO'S AFRAID OF VIRGINIA WOOLF?(1966・アメリカ)
■ジャンル: ドラマ
■収録時間: 135分

■スタッフ
監督 : マイク・ニコルズ
原作 : エドワード・アルビー
脚本 : アーネスト・レーマン
撮影 : ハスケル・ウェクスラー
音楽 : アレックス・ノース

■キャスト
エリザベス・テイラー(マーサ)
リチャード・バートン(ジョージ)
ジョージ・シーガル(ニック)
サンディ・デニス(ハニー)
有名な舞台劇に、リズ・テイラーとバートンという実生活においても大酒&大喧嘩夫婦がそのままの役柄で臨んだ作品。そのあまりのリアルさに2人の共演者は驚き、やがて物語の若夫婦のように熱狂が感染していった。本作はある意味において本当の狂気と正常の狭間で撮られている映画である。

■あらすじ


口論とアルコールにまみれて約20年の時間を共有してきた中年夫婦ジョージ(リチャード・バートン)とマーサ(エリザベス・テイラー)。ジョージはうだつの上がらない歴史学の大学助教授であり、大学学長の娘であるマーサはそんな夫に不満をぶつけ毎日が罵り合いだった。そこに若い新任講師ニック(ジョージ・シーガル)と妻ハニー(サンディ・デニス)が訪れる。当初は中年夫婦の罵り合いに圧倒される若夫婦だったが、やがてお互いの不満をさらけ出し始める。そして、マーサはニックをベッドに誘い込む・・・


■リズ・テイラーなんてこわくない?


まず最初に断っておくが、1950年代前半のリズ・テイラーは美の化身であった。そんな絶世の美女が、1966年においては醜さの化身となった。
本作のリズ・テイラーはある種何かにとりつかれているかのような芝居を見せている。今のハリウッド女優で、こういった醜さ=ベティ・デイビスにも通じる、を感じさせてくれる女優はなかなかいない。映画に関してもだが、全てにおいてハリウッドも日本も世界も全てがこじんまり纏まっているような気がする。

ちなみにリズ・テイラーは役作りのためにレトルト食品漬けに自分の生活を追い込み、約10キロ体重を増やし、体重が70キロ台になったという。さらに外見を50代に見せる為にヘアデザイナーのシドニー・ギラロフによって髪をグレイに染めた。そして、メイクも最小限に押さえ、目の周りのマスカラを濃くしたという。

当初マーサ役はベティ・デイビス、イングリッド・バーグマン、パトリシア・ニールが候補に挙がっていた。一方ジョージ役はジェームズ・メイソン、ケイリー・グラント、ヘンリー・フォンダ、アーサー・ヒル、ジャック・レモン、ピーター・オトゥールが候補に挙がっていた。原作者のアルビーは50代のマーサ役をベティ・デイビス、ジョージ役をジェームズ・メイソンを念頭に描いていたので、このキャスティングはミスキャストじゃないかと驚いていたが、映画を見て絶賛したという。

リズ・テイラーは本作の芝居によりアカデミー主演女優賞、NY批評家協会女優賞、英国アカデミー主演女優賞を受賞している。

「ベティ・デイビスの映画にあったのよ」「彼女の映画を全部覚えてるわけがないだろ」の一連の会話で示されてる映画はデイビスがジョセフ・コットンと共演した1949年の映画『Beyond the Forest』である。


■バートン・ザ・グレート


しかし、何よりも本作で一番重要な役柄を演じているのはリチャード・バートンである。
リズ・テイラーは元々芝居を芝居としてする人ではなく、感情の発散の形で気まぐれに行う人であり、演出者やカメラマン、そして、共演者によって芝居の良し悪しが変わる人だった。そういったリズ・テイラーの性質を理解し、引き出しつつも自分自身も抜群の芝居が出来る男は当時最高峰のシェイクスピア俳優でもあり、当時の夫だったリチャード・バートンをおいて他にいなかった。

そして、リズ・テイラーもそういう自分の気まぐれな性格を熟知しているので、自分のよさを引き出してくれる男性であるバートンに固執した。しかし、バートンは当初ジョージ役に全く興味はなかったという。

本作の見所は明確にバートンが演じるジョージであり、このジョージが疲労し→うんざりし→怒り→悪態を晒し→歓喜し→絶望し→開き直り→疲労するプロセスが絶妙なのである。
リズ・テイラーの醜さが見事に見えるのは、100のうち70はバートンの反応の素晴らしさからなのである。

リチャード・バートンは本作においてアカデミー主演男優賞にノミネートされるが、受賞したのは同じくシェイクスピア俳優である『わが命つきるとも』のポール・スコフィールドだった。ちなみに英国アカデミー主演男優賞はバートンの方が受賞している。


■ジョージ・シーガルとサンディ・デニス


本作は4人の出演者のみで繰り広げられる極めて特殊な映画である。リズとバートン以外の残る2人である若夫婦を演じるのがジョージ・シーガルとサンディ・デニスである。

当初ニック役はロバート・レッドフォードにオファーがだされたが、結果的にジョージ・シーガル(1934− )が演じ、アカデミー助演男優賞にノミネートされた。本作においてのジョージ・シーガルの芝居はベストではないが悪くはなかったという程度であった。

一方ハニーを演じるサンディ・デニス(1937−1992)は本作でアカデミー助演女優賞を受賞した。彼女はアクターズ・スタジオ出身で、1963年,1964年と2年連続トニー賞を受賞している。本作において撮影時に妊娠していたのだが、セット上で演技の途中に流産しているのだが、この人は役に入り込むことで有名な女優さんである。親友がジーナ・ローランズでありお互いが認め合った仲であることもいかに彼女が優れた女優であったかを示す事実であろう。

ちなみに彼女は1980年〜85年までエリック・ロバーツ(1956− 、ジュリア・ロバーツの兄)と同棲していたという。しかしそれよりも怖い事実は、当初ハニーの役をコニー・スティーブンス(1938− )がやる予定だったという事実である。この当時彼女の恋人はエディ・フィッシャーだった。そして、この男こそリズ・テイラーの前の夫であり、バートンがリズを奪った男でもあったのである。



■静かなオープニングから一転しての緊張感


静かなオープニングから家に着いた二人がドアを開けると同時に映し出されるその姿。この疲れ切った二人の姿を見た瞬間に、見ている側は魔法をかけられたかのように画面に釘付けになってしまうのである。一体この魅力的な2人がどうしてここまで老け込んで、やつれ切ってるのかと・・・

リズ・テイラーはくわえ煙草に二重顎で、アルコールがぶ飲み状態なのである。嫌でも二人の一挙手一投足が気になってしまうのである。このシーンからの10分間の緊張感は監督の演出の勝利と言うよりもこの2人の役者の勝利である。

「怒ったの?あなたは怒ったときが一番素敵。もっと怒って」

そして、罵り合う途中にゲストの若夫婦が訪れ、ドアをノックする音が鳴り響く。ドアをあんたが開けるのよとろいわね!と散々罵られるジョージは、ドアを開ける瞬間にマーサを散々罵る。そして、「ガッデム・ユー」とマーサが怒鳴ると同時にドアを開くこのジョージの意地悪さと、この言葉に驚く二人の若夫婦の戸惑った表情の対比の見事さ。

夫婦喧嘩に観客(この場合2人の若夫婦)を引き入れたこの瞬間に、2人の大事な世界は例え醜く歪んでいようとも破壊は免れないようになってしまったのである。本作において何回か登場するドアを開ける瞬間が、人生の転機を示す象徴として使われている。


■ジョージの目覚め


「君の思い通りになる将来の計画もやがて歴史だ」


本作においてジョージとマーサの関係と、ニックとハニーの関係が全く同じである事がポイントである。お互いに貧乏な秀才と金持ちの女性の間での結婚であり、妻の方には感情の起伏が激しく、アルコール中毒の気配が伺え、夫の方にはアルコールに弱く、妻にも頭が上がらないという共通点がある。

本作の魅力は当初は全く別世界にいると罵り合う中年夫婦を見つめている若夫婦を、見ている側が段々彼らは実は同じ穴のむじなではと感じ始める所にある。
ジョージとマーサーの現在はニックとハニーの将来である。そして、やがてニック自身もそう感じたからこそマーサと寝るのである。

男は未来との対面のために将来の妻を思わせる女性と寝たがるものである。

マーサと寝ることによって、ジョージを打ちのめし、ハニーへの従属関係に対する何らかの突破口になるのではないかと期待するのだが、マーサに「私の夫よりも使えない男」とあざけ笑われてしまうのである。ある意味この若夫婦の前途の方こそ多難だろうと予感させる。


■「現実が耐えられなくなると人は狂気に逃げ込む」


最後に実在しなかった16才の息子の存在を殺してしまうジョージであるが、この行為はジョージとマーサが寄ってすがるものを失くす事によって、お互いを結び付けていた最後の絆を断ち切る行為だった。
最後に手と手を触れ合わせるラストは明確に別れの暗示であり、ジョージはマーサを残して去っていくのである。

つまり、最後にマーサ自身が明かすように、マーサは人格的に問題があり、ジョージはそれに付き合ってくれていたが、ジョージ自身がニックとハニーの夫婦間の絆を破壊することにより、マーサの暴走=不倫を招き、マーサに対する一歩を踏み出させる根拠を作り上げたのである。

ジョージは大学の助教授であり、辞めたとしてもまだ新しい人生は開けていく可能性はあるが、マーサという夫を無能呼ばわりして自身では何も出来ない50過ぎの学長の娘にはもう明るい未来は待ち構えていないだろう。
本作はマーサが全ての心の拠り所を失う日を描いた作品なのである。

夫をバカにし続けていた女が見事に夫にしてやられる話が「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」なのである。



■FUCK≠ェ初めてハリウッド映画に登場した作品


本作の題名ともなっているヴァージニア・ウルフ(1882-1941)とは、『ダロウェイ夫人』などの小説で有名な女流作家である。彼女は幼少期に性的虐待を受けていたこともあり、精神的に不安定な人だったという。1941年入水自殺する。

一方、本作はエドワード・オルビーが1962年に書いた舞台劇が原作であり、1962年10月ブロードウェイで初公開された。ワーナーが50万ドルで映画化権を取得し、テイラーは110万ドルの出演料プラス総収益の10%を受け取る条件で出演を承諾する。そして、テイラーの推薦で75万ドルの出演料でバートンも承諾する。最終的に1,500万ドルを稼ぎだし1966年全米興行成績3位を記録する大ヒットとなった。ちなみに本作の製作費は500万ドルである。

本作が『卒業』(1967)『ワーキング・ガール』(1988)『バードゲージ』(1996)のマイク・ニコルズ(1931− )のデビュー作となった。当初監督にはジョン・フランケインハイマーが候補に挙がっていたという。撮影にあたり出演者4人は二週間リハーサルに参加し、そのまま舞台に出ても大丈夫なレベルに達した時点で撮影に臨んだ。

本作はテイラーの2度目のオスカー受賞以外にも白黒撮影賞、白黒美術監督・装置賞、白黒衣装デザイン賞の全5部門を獲得する。ちなみに衣装デザイナーはテイラーお気に入りのアイリーン・シャラフである。

− 2007年6月19日 −


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