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蘇える金狼   (1979・角川春樹事務所)
■ジャンル: アクション
■収録時間: 131分

■スタッフ
監督 : 村川透
製作 : 角川春樹
原作 : 大藪春彦
脚本 : 永原秀一
撮影 : 仙元誠三
音楽 : ケーシー・ランキン

■キャスト
松田優作(朝倉哲也)
風吹ジュン(永井京子)
千葉真一(桜井光彦)
成田三樹夫(小泉)
小池朝雄(金子)
佐藤慶(清水)
蘇える金狼
男ならば誰もが憧れるような「しなやかな獣」の姿がそこにはある。その一挙手一投足の無駄のないこだわり、ある意味マックィーンやブルース・リー的なオリジナルの動きの連鎖。これこそが映画俳優の域を越えたスター性なのである。レトルト食品とお手軽機械と分かりやすい雑誌・コミックに囲まれる現在において、俳優・監督のレベルは相対的に、上っ面の即席性、さばさばとした効率性、単純で分かりやすい感性という「薄っぺらさの三要素」に包まれている。こんな時代だからこそ、松田優作の熱気に触れるべきだ。男として生まれたからには、一度くらい金狼になれ!女として生まれたからには、一度くらい金狼に咬まれてみよ!

■あらすじ


一億円を現金輸送人を襲撃して奪った朝倉哲也(松田優作)は、昼は真面目なサラリーマンだが、夜はボクシングで鍛えた肉体で悪の限りを尽くして野望を貫徹しようとする男だった。やがて上司の愛人・京子(風吹ジュン)に取り入り、自分の勤める会社の裏情報を引き出し、一社員が会社乗っ取りを目論むのである。


■アクションじゃなくてメロドラマなんだ!


「決してアクションじゃない。メロドラマです。金も地位もすべての野望を果たした男が、それで満足するわけがない。愛人役の風吹ジュンとの恋愛を描くことで主人公の人間≠ェ浮かびあがると思う」
松田優作

この作品は、松田優作の存在ゆえに成立している作品であることは間違いない。つまり彼に魅力を感じていない人にとってこの作品は、それ程魅力的に見えないはずだ。逆に言うと少しでも松田優作という人のことが気になった人がこの作品を見てしまえば彼の魅力の虜になること請け合いである。それほどこの作品の優作は、躍動感と存在感に溢れている。

そして、本作は
「一社員が、会社を乗っ取る」という要素によってカタルシスを満たしてくれる作品である。まさにサラリーマンのおとぎ話。一介の平社員が上司を出し抜き、その愛人と内通し、さらには社長の美貌の令嬢まで手に入れてしまう愉快さ。

「おい!大株主にコーヒーぐらいもってこんか!」に感じる浪漫なのである。映画版『蘇える金狼』は原作とは違うそういった「サラリーマンのおとぎ話」的要素の強調において成立している物語である。だから知性溢れる理性的な女性には理解できない世界なのである。


■もてる男も、もてね〜男も「もてね〜映画」に浸りたい夜もある


この作品を私が女性の友人に見せたときに彼女はこう言った。
「お金を手に入れて、スーパーカー買って大笑いしたかっただけの、クスリ使って女を自分のものにするもてない男の共感を呼ぶ映画ね」そういう感想は、もっともであり、この作品の本質を見事に言い当ててはいるが、彼女のように容姿端麗、知性も伴なう女性から見ればそうだろうが、多くの男性にとっては、そんな視点だけでは割り切れないものなのである。

男には、優作の男臭さと合わせて、この物語の持つ「角川春樹的薄っぺらバブル世界観」を、素直に楽しみたい夜だって結構しょっちゅう来るものなのだ。確かに「もてね〜映画」だが、男って自信過敏な時よりも自信のない時のほうが遥かに多い生き物なんだ。


■七三分けでもかっこよすぎな優作


蘇える金狼
もうオープニングのテーマ曲の躍動感溢れる伴奏からして素晴らしく良い。私自身5年前に着メロにしていたほどのお気に入りスコアである。この音楽を担当するケーシー・ランキン(1946− )は、“SHOGUN”というバンドで後に優作主演のTVドラマ『探偵物語』で超イカスオープニング・ソングとエンディング・ソングを手がける人である。

さて物語の方は、いともあっさりと一億円を強奪する朝倉哲也(松田優作、1949−1989)が、その後唐突にばればれの七三分けのヅラにダサ眼鏡の出で立ちで登場するのである。

いいねぇ〜。優作お得意のおとぼけ芝居。
優作の魅力の一つはこの独特のおとぼけなセリフ回しにある。そして、社長令嬢・絵理子(真行寺君枝)を見つめるこの男の表情。眼鏡の奥で光る眼差しが「もてね〜映画」好きの心を捉えて離さない。

真行寺君枝(1959− )は東和油脂社長令嬢の役柄で、
ただCMのモデルのように純粋無垢な=狭い世界で生み出された陳腐な高貴さをかもし出し、微笑んでいるだけである。


■おまえ女房子供はいるのか?いるいる、いっぱいいるんだ!


蘇える金狼
ボクシング・ジムでサンドバッグに打ち込む優作に話しかけるグラサンの華のないオヤジ。その名は角川春樹。いつも映画の中の世界観をぶち壊してくれるこの男は、本作においても大根芝居を披露=垂れ流してくれている。
素直に思う疑問「自分自身で自分のシーンは見ないのか?」

帰宅後、一億円を前にしてカツラを脱ぎ捨てる優作がとことん格好いい。まさに怪人二十面相が仮面を脱ぎ捨てるようにおもむろに脱ぎ捨てるのである。そして、ふんわりとアフロ気味のカーリーヘアーが登場する。本来の姿になったこの男は夜の街に繰り出すのである。足のついている一億円を覚醒剤に変える為に。

「こっちこい、どこ行くんだ、こっちこい」
のとぼけ口調と共に今井健二(1932− )との掛け合いが始まるのである。いいよな〜健二は、笑いの間とツボを心得てるぜこのオヤジは。これから後のシークエンスは最高に笑えること請け合いだ。

「待ってくれぇ、あんた・・・ぜんぶしゃべり終わったら俺をばらす気だろ?」
「そのとおり。ようするにだ!オレはヤクなんてどうでもいいんだ!金が欲しいんだよ!だからオマエも最初から下手な真似しなけりゃ最初からこんな風にはならなかったんだ!」
「わかった、撃つな、撃つな、たのむ、お願いだ、殺さないで」
「だめ、ダァ〜メ」
「頼むよ」
「女房子供はいるのか?」
「いるいる、い〜っぱいいるんだ」
「死んだほうが幸せになれるよ」

響く銃声―。う〜ん。このシーンはある種のバイブルだよ。


■朝飯食いながらバックから責める本気モードの優作


風吹ジュン
白のマセラティ・ボラ(イタリア)で登場する優作。このシーンでコイツは一億円の強奪より以前から悪行に手を染めていることが分かるのである。そして、風吹ジュン(1952− )が登場する。ワキ毛全開にゴルフの打ちっぱなしをする彼女は、優作の会社の上司・小泉(成田三樹夫)の愛人・京子の役柄である。

蘇える金狼 蘇える金狼
ミスター・ビーンのようなおとぼけぶりで、女の母性愛をくすぐる作戦に出た優作。この時に流れる前野曜子の曲がすごく良い。そして、中華料理のお茶の中にヘロインをまぶし、ホテルOZへ連れ込む。ここからすごく情熱的で美しい肉欲的表現が繰り広げられるのである。

便器の上で駅弁ファックをする二人。ずり落ちないように必死に優作にしがみつつも、快楽の中で力が抜け、ずり落ちそうに堕ちていくジュン。そして、ジュンの大きな胸をこれでもかと揉みしだく、限りなく容赦のない優作。更にハイライトはサンドイッチとオレンジジュースという朝食を摂りながらバックでジュンを責め立てる優作。う〜んこれこそオトコだぜ!勿論私も試したよ両方とも!

本気でこういうファックは野獣化する。まさにこのシーンの優作が他のどのシーンよりも最も「蘇える金狼」だった。「あたし、こんな気持ちになったの初めてだわ、ず〜っと一緒にいたいわ」というジュン。あなたがいたからこそこれらのシーンは、素晴らしい官能美溢れるシーンになったのである。

それにしても風吹ジュン。本当に可愛くて、でもセリフ回しは桃井かおりチックな女優である。まさにある種のセックス・シンボルだよね彼女は。ロジェ・バディムあたりに作品撮らせたかったな。


■優作が名悪役たちを訪れるロードムービー


蘇える金狼
ジュンちゃんに精魂吸い取られた優作は、その足で市会議員の磯川(南原宏治、1927−2001)邸へ。ショパンのノクターンの生演奏が流れる中、磯川が一喝する。

「若造ぉ〜、新聞記者などと語りおって、わしに何の用だ?」

「ちんぴらめ、後ろをふり向いてみろ、ゆぅっくりとだぞ〜」

う〜ん。このセリフとあくどさ満点の「フッフッフ〜」という笑顔さすが宝塚好きが講じて奥さんも娘も宝塚なだけある。もうこの悪のスマイルは南原宏治しか出来ないよな。この作品、今井健二といい南原といい実に素晴らしい悪役芝居を見せてくれる役者が登場するのである。そして、この後にも実に多数の名悪役芝居が見れるのである。

この作品は「優作が名悪役たちを訪れるロードムービー」でもあるのである。

優作「あんたんとこの部下は、ナリばかりはでかくても銃に関しては全くのトオシロだねぇ、いいかね?この距離からあの種類の銃をぶっぱなせば、弾は完全にオレのからだを貫通して、あんたに当たるんだよ。それにだ、オレのからだを貫通するときは 弾は炸裂しない。だからまだ助かる見込みはある。ところがあんたのからだにくいこむときは、弾のつぶれがひどいから、間違いなく即死だな」

磯川「冗談も休み休み言え、そう調子よくわしに当たってたまるかぁ!」

優作
「無知だねえ、弾ってのはねえ、一番抵抗の少ないところを抜ける性質があるんだ、オレがからだの向きをちょっと変えるだけで、あんたの心臓めがけて飛ばせることもできるんだよ」

この本当かウソか分からない理論。明らかに机上の理論に過ぎないのだが、優作の「日本一のホラ吹き男」並みに堂々としたその口調に磯川もついスキを見せてしまうのである。そして、磯川を人質に取言い放つ優作。

「おい!ベートーベン!続けるんだよ!」
この優作の一喝に慌ててショパンの「ノクターン」をひく男。なんかいい間である。


■優作のクールさのスパイスとしてのおとぼけ


松田優作
城壁のような場所で、黒皮のジャンプスーツ姿で磯川が潜ませていた敵を片付けていくその見事な手際。手持ちカメラで、ワンカットで優作の走る姿を同じように追いかけて撮るアクション・シークエンスの格好良さ。これは優作でしか体現できない荒々しいカメラワークである。

「動くんじゃない!火貸してやろうか?合図だったらもっと気のきいた合図考えんだな。おたくんとこの部下は今ごろ昼寝の真っ最中だ、残念だったねぇ。おい、カトンボ、こっちこい!」

とにかくどこまでもクールな中におとぼけテイストを混ぜ込ませることのうまい優作である。純度100%のクールさよりも、ちょっとした他のテイストの入り混じったクールさを作り上げたところに彼のオリジナル性があるのである。

「テレビや映画での拳銃の使い方が、いかにウソっぱちか、よく分かった」優作は本作のためにハワイに約一週間滞在し、実弾5000発(一発約200円×5000)の射撃訓練を積んだという。さらに自動車の運転シーンのために免許を取りにいった。


■岸田森のローリング・エルボーを見よ!


蘇える金狼
白の上下に黒のエナメル製のロングコートにサングラスといういかにも怪しい殺し屋・石井を演じるのは、こういう役柄をやらせたら右に出るものはない怪優・岸田森(1939−1982)である。とにかく中国人の設定なので使う日本語がいちいち小憎ったらしい
「ギャラァ〜高いよぉ〜」「動かないのね」「タカイ!」「ウラミ・・・ふかいよぉ〜」その意味不明なイントネーションがかなり印象的で魅力的。

最終的には会社から殺し屋として雇われることになった優作が、石井とその相棒(待田京介、1936− )を片付けるためにアジトの一軒家へ忍び込むのだが、実にあっさり捕まってしまい、石井にガスバーナーで脅され0.5秒であっさりと吐くのである。
「わかった。わかった!わかった喋る!しゃべります!」最後が敬語になるのが優作らしいポイント。

そして、伝説の
「岸田森障子破りローリング・エルボー」が披露されるのだ。この一軒家のシークエンスは村川らしくワン・カットで撮っているので、倒れ際に障子が自然に%|れるように岸田森は何回もエルボーのリハーサルを重ねていたと思われるのだが、恐らく後ろに寝ているトビー門口が倒れにくいように細工したのだろう。見事に失敗し、おもむろにエルボーを繰り返し強引に障子を破り倒れ死す芝居をすることになるのである。しかもこのシーン実に見事。

障子にローリング・エルボーかましてる暇あるなら、優作撃てよ!とうれしいつっこみを入れたくなる所が、当時の角川春樹事務所作品のお祭りっぽさでもあるのだ。金はかけどもアラは残す≠ニいう作り。「もてね〜映画」好きには堪らない由縁はここにあるのである。


■「目覚めなかった金狼」サニー千葉


石井の登場と同じ頃、この作品のもう一人の「金狼」桜井光彦が登場する。演じるのはサニー千葉(1939− )である。少し本来のサニーらしさが出ていない上品な役柄であるが、おそらくサニーが暴走すると優作を食ってしまう可能性のある存在感の大きさからだろう。

その石井を慕うインテリ風情の女朱実(吉岡ひとみ)を、優作が金網に押し付けて上着を捲り上げる。そこからはたわわなノーブラの胸が・・・
「インテリ風情・ノーブラ」のギャップに誰もが興奮を覚えながら、ちょっとやる気なく揉みしだき弄ぶ優作の鬼畜ぶり。そして、桜井の素性を突き止めるのである。

そして、丁度聞き出した桜井のマンションに忍び込もうとするとそこには桜井の愛人牧雪子(結城しのぶ、1953− )が石井らに捕まえられ人質になっているのである。そこに暢気に「あ〜あああ〜欲望の街ぃ〜」と角川映画『白昼の死角』のテーマ曲を歌いながら帰ってくる桜井。

桜井「やってみろよ、やってみろ、その女が死のうが生きようが、俺には痛くもかゆくもねえんだい」
雪子「あなた〜、助けてぇ」
桜井「助けてぇぇ〜?俺をだましてここにおびき寄せておきながら、そんなことが言えた義理かぁ?」


いいねぇ。このサニーの松方弘樹にも通じる手のひら返しの一連の芝居は。この二人に共通しているのは声の作り方と、普段の口調の甲高さである。そして、一瞬の隙をついて石井らを撃退するのだが、その後のやり取りが最高にベーシックで笑える。

雪子「ほんとじゃないわね、ほんとじゃないわね!」
桜井「ばかだなあ、あたりまえじゃないかよぉ」

絶対本気だったよな・・・サニーは。という突っ込みを満身に浴びること請け合いのサニー冥利につきる芝居だったんだろう。
その後結構あっさりと石井に殺される二人だった。この「目覚めぬ金狼」の姿は、優作に一つの教訓を与えてくれたはずだ。

「金狼」に女は不要だということを。しかし、優作も女につまずいてしまうのである。ここが原作との違いであり、サラリーマンのおとぎ話でもある由縁なのである。
サラリーマンを含めて男とは「いい女に人生を台無しにされたい願望がある」のだ、「いい女の人生を台無しにしたい」願望は明確なる精神異常であり、前者は男の本能なのである。


■朝雄の「煌き」と三樹夫の「輝き」


小池朝雄
いいねぇ〜小池朝雄(1931−1985)。牧雪子の裸体を貪るエロオヤジの恍惚の表情といい。次の日の朝、会社でエアロビックなムーブメントをしている朝雄の可愛さといい、まったくいちいちツボにはまるんだよな。朝雄の一挙手一投足は。

「あのぉ〜いかほどでお譲りいただけますのでしょうか?」このセリフのシーンにおいてのサニーとの掛け合いは最高である。そして、必見は石井を消した優作を消すためにベンツで海辺に連れて行き、優作を殺そうとしたが「銃ってのはな、セーフテーレバー外さなきゃ弾出ないんだよ!」「許してぇ〜〜」とむなしく撃沈するシークエンスである。

さらに朝雄+この男+佐藤慶という「悪役芝居においての共和制三頭政治」まで本作において体現してくれるのである。そうこの男とは、成田三樹夫(1935−1990)である。

蘇える金狼
優作「おい、俺がなめられておとなしくひっこんでるようなぼうやに見えたのか?俺を殺ろうとする前そのことを何度も考え直してみなかったのか?どうなんだー!」
成田「悪かった、あやまる、あやまるから、ぼくがわるかった。金子がねー! こいつが、どうしても君をやらせてくれっていうんでそれにのせられたぼくが悪かった」
小池「うそだ〜あたしゃただ命令でいっただけなのに〜」


この普段威張っていたヤツラが、一ヒラ社員の優作に徹底的に追いつめられる構図がかなり爽快だ。まさにサラリーマンの浪漫の体現である。土下座までして自分だけでも助かろうとするこすっからしい三樹夫の姿が最高で、さらに土下座だけでは許されそうもないと察知するやいなや「金子がねぇ〜」と自分の部下に全て押し付けようとまでする鬼畜ぶりなのである。

この二人の存在なくして『蘇える金狼』の魅力は、語るべからずである。実はこの作品、優作・三樹夫・朝雄の「鬼畜三兄弟」の物語でもあるのだ。


■この二人の優作に憧れないバカはいない


蘇える金狼
自社株200万株を要求し、まんまとせしめ一夜で筆頭株主になる優作。「よろしい、弾は抜いてありますから、お返しします。これからは火遊びはほどほどにするんですな」そう言って、かなり偉そうに社長・重役の前で一ヒラ社員の優作がテーブルの上に足を乗せて吼える!

「おい!大株主にコーヒーぐらいもってこんか! ねぇ」

痺れるくらい格好いいシーンである。こういう芝居が決まる役者。もう日本には存在しないのかねぇ?

蘇える金狼
そして、200万株の入ったアタッシュケースを手に帰る道すがら警備員に一言。

「おい、あしたからヒゲそってこい!」

日本映画史上最も格好いい男を見せつけられたシーンである。


■ランボルギーニは日本には合わない・・・


松田優作
そして、角川バブルを象徴する「日本じゃ走れない」赤のランボルギーニ・カウンタックLP500Sをディーラー(村川透)から購入する優作。

「あ、これはどうも、オートロマンからカウンタックをお届けにあがりました。せんげんでございます。」
「鍵!」
「はっ、こちらでございます」
「あの、ご説明を」
「あ、いい いい、帰っていいよ・・・帰っていいって・・・帰れ、おい!」

そして、朝の都心を思いっきりかっ飛ばすシーンの安っぽい50年代ハリウッド使用の合成映像。ここはちょっと幻滅した。折角スーパーカー出すんならもうちょっと優作の喜びのシーン工夫してくれよ。肝心な部分の手抜きも村川監督の一つの味ではあるのだが・・・しかし、ここに重なるテーマ曲と優作の喜びの表現能力の高さは素晴らしかった。


■やはりこの作品はメロドラマである


蘇える金狼
ご満悦で自宅で朝食を頬張る優作の前に、ヘロイン中毒に成り果てたジュンちゃんがやってくる。彼女は優作の本当の姿と自分に近づいた真意を今や知っているのである。

「あたしはあなたにとって、麻薬で操り情報を手に入れるだけの道具だったのね」
「それは違う」・・・「あなたが何をしても構わないわ。ただあなたを失うことだけが怖いの」
ここで何故か優作のジーンズのジッパーを下ろし、お口のご奉仕をしようとするのである。もう麻薬中毒の京子にとっては、それだけの存在提示しか残されていなかったのである。

最初のゴルフシーンとのこのシーンのコントラスト。彼女にとって優作とは出会わずにそういう暮らしを続けているほうが幸せだったのだろうか?それとも彼女は人生に倦怠しきっており、優作につかの間の刺激を求め、麻薬に溺れていき、死を選んだのだろうか?(優作を刺して自分も死のうとしていたはずだから・・・)

優作は、本作はメロドラマであると語っていた。
つまり最後に刺されて、そのナイフをより深く自分の内臓に刺し込み、京子の首を絞め殺し、教会の鐘が二人の「永遠の繋がり」を祝福するかのように鳴ることは、明確に優作=朝倉という「金狼」が人間性に目覚めてしまった悲しき祝福なのではないだろうか?

彼は、京子と樹海の道を無言で歩いている時に、
運命を全て自分の手で切り開いてきたこの男は、初めて他人の手に人生を委ねる事によって「自らの死」を決定させたのだろう。朝倉は、「金・女・スーパーカー」を手に入れ感じたのである。何かが足りないんだ何かが・・・。

それは「愛」だった。それを意図して演じていたからこそ優作は、この作品はアクションではなくメロドラマと言ったのである。北欧行きの2枚の航空券を実は購入していた優作は、そのうちの1枚の航空券を投げ捨てる。そこに前野曜子(1948−1988、宝塚歌劇団出身のペドロ&カプリシャスの元リード・ヴォーカル)の『蘇える金狼』のテーマ曲が流れるのである。このテーマ曲かなり素晴らしい。


■ぼくの友人のナポレオンが愛用してたやつ


蘇える金狼 蘇える金狼
人気のない空港に現れた優作の姿を背後の高い位置から捉えたロングショット。何事もなかったかのように颯爽と歩くのだが、突然グギッと足がよじれるのである。やがってバタンっと倒れるのだが、さすが優作、手足が長いのでこういった倒れるシークエンスは見事に映える。

そして、スカンジナビア航空で優作は旅立つのだった。スチュワーデスには愛しの中島ゆたか(1952− )が友情出演する。

中島「お客様、どこかお気分でも悪いんですか?何かお飲み物でもお持ちいたしましょうか?」
優作「ワイン」
中島「なにがよろしいですか?」
優作「ジュブレ・シャンベルタン。2001年ものだ。ぼくの友人のナポレオンが愛用してたやつ」
中島「はぁ?」
優作「ねぇ、ジュピターには何時につくの?木星には何時につくんだよ、木星には何時につくんだ・・・」

そして、優作は座席からずり落ちるようにして死んで行き、画面が白くなり、2つのジュピターを象徴するローマ神話の仮面が登場して物語は終わるのである。原作とは全く違ったラストシーンだが、優作にはやはりこういったラストが似合う。


■幻の大藪春彦フェア


本作は大藪春彦(1935〜1996)が1964年に発表した長編小説『蘇える金狼』である。当初は大藪春彦フェア≠ニ称して徳間出版の徳間康快と角川春樹と『宇宙戦艦ヤマト』の西崎義展によるスーパー・ジョイントの一環として製作され、後に『汚れた英雄』『傭兵たちの挽歌』が製作される予定だった。

ちなみに角川春樹(1942− )と西崎義展(1934− )両人とも麻薬関連の罪により受刑経験ありである。(西崎は現在も服役中)

本作は製作費5億8000万円(宣伝費3億円含む)を投じて製作され、10億4200万円の興行収入をあげる大ヒット作品となった。

− 2007年7月30日 −


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